隣にフローリア様!
「……そんなに変態だったの?」
「思い出しただけで鳥肌が立つくらいでした。ステファン様にはお世話になりました。とても助かりました」
「お兄様、役に立ったのね! 使えるものは使いましょうね」
「ステファン様を使うだなんて滅相もありませんよ! 何かお礼をしなきゃと思っているくらいです」
変態の話を聞いてゾッとした。泣かせた女性は数知れずだなんて……変態に泣かされるのはイヤだわ。
「礼なら結構だよ。先日は世話になったしこれからも意見を聞かせてほしい。オフィーリア嬢はフローリアの大事な友達なんだから、私に言いにくいのであればフローリア経由で構わないから相談してくれ」
公爵家の広ーい敷地内にある川でボートに乗せて貰ったら変態のことはすっかり忘れていた。フェロウズ公爵家のお二人には感謝してもしきれません。
その後女子会をすることになりました。色々準備をされていて……びっくりです。
「わぁ。可愛い可愛い! オフィーリアすごい似合うわ」
「恥ずかしいですよ。この夜着……」
ガウンを着て隠した。全体的にフリフリで胸元と肩が開いている。
「お泊まり会をしたくてお揃いで作って良かったわ。オフィーリア、この夜着を着て好きな人にアタックしたらイチコロよ!」
「……私は変態になりたくありません」
思い出してしまったではないですか!
「お兄様に見せに行く?」
「……通報されます」
「冗談よ。勿体無い」
「……お目汚しです」
「オフィーリアって面白いわね。また泊まりにきてね」
女子会は楽しいですね。
******
朝目覚めると隣にフローリア様の寝顔……。美しい方は寝顔も美しい……。長い睫毛、透き通った肌、艶のある唇、それに、
「……そんなに眺められると恥ずかしいわね」
「すみません。つい見惚れてしまいました」
見惚れるくらいの完璧な寝顔だった。
「ふふっ。オフィーリアの寝顔も可愛かったけどそろそろメイドが起こしにくる時間ね。お兄様を見送りがてら朝食にしましょう」
オフィーリア様のご両親は領地に滞在されているようで、ステファン様が当主代理をされているそうです。たまにしかないお休みにご迷惑をかけて本当に申し訳なく思いました。食堂へ行くとすでにステファン様は席について新聞を読んでいました。
「おはようございます」
「おはよう。よく眠れたかい?」
「はい。ありがとうございます」
公爵家の朝って朝から煌びやかだわ……フローリア様にステファン様が眩しい。
「オフィーリアどうしたの? 気に入ったものがないのなら作らせる?」
「いえいえ、とんでもないです。全て美味しそうです」
見たことのないフルーツがたくさんあった。私は朝に食べるフルーツがとにかく好きだ。許されるのならフルーツだけ食べたいくらい。
「遠慮せずに好きなだけ取るといい」
「はい」
と言いながらも少し遠慮して食べた。公爵家の使用人さん達の前で緊張するし……それからステファン様をお見送りした。
「それでは、行ってきます」
「「いってらっしゃいませ」」
働く男って感じ! 立ち姿からして出来る男感が漂っている。これは朝から良いものを見せてもらった。眼福、眼福。
「さて、うるさいお兄様は仕事へ行ったから、街に行きましょう! ルシアンとジルは現地集合よ! 休日に友人と街歩きをするのが夢だったの」
「あ、私も家族以外とお出かけをしたことありません(先生は家族にカウント)」
「本当! ふふっ。オフィーリアの初めてを今日もらうわ」
「……フローリア様の言い方には語弊があります。変態を思い出してしまいました……あっ! 話題にしていますか?」
「イヤなことは笑ってしまった方がいい時もあるかと思って。イヤならもう言わないわよ?」
「いえ、大丈夫です。フローリア様ってとても楽しい方ですのに、どうして友人がいないのか不思議です」
こんなに素敵で楽しいのに勿体無い。
「公爵家の令嬢って気位が高そうでしょう? みんな太鼓持ちばかりで面白くないもの。でもオフィーリアは違ったからこちらから話しかけたの。楽しく過ごせる友達って中々できない、だから今は楽しいわ」
確かに公爵家といえば、私も雲の上の方達だと思っていたもの。今もそれは変わらないけれど、可愛い人だと思う。
「私も……誤解していましたから」
「私はオフィーリアに興味があったわ。噂の癒し系令嬢に……でも、思っていた癒し系とは違ったわね」
「それなら私もですよ? フローリア様が孤高の華だなんて……ルシアン様やジルベルト様、私もいますから」
「それもそうね。誰が付けたかは分からないけど、二つ名を付けるのが好きよねぇ」
「本当ですね。私もビックリしましたよ。誰の事? って思いましたもの」
「私は結構早いうちに付いていたわね……」
そういえば太鼓持ちさんや取り巻きさんたちってどうなったんだろう? それに幼い頃から“孤高”だなんて辛いよね。
町に着くとルシアン様とジルベルト様が待っていて注目を浴びていた。貴族街でも目を引くって凄い。そこにフローリア様が加わると更に注目を浴びる事に。
「オフィーリア」
「ジルベルト様、こんにちは」
ジルベルト様はスーツを着ていてとても似合っていた。
「ルシアンとフローリア嬢の後ろにいよう。二人にとってはデートの延長みたいなものだから」
そうだよね! 婚約者の邪魔をしてはいけないもの。