領地へ行くことになる
オフィーリアは領地へ行く事になる。
私には二歳下に弟がいて名前はアンドリューと言う。アンドリューは気管が弱くよく咳をする。酷い時は咳で眠れなくなる事もあるようだ。
「アンドリューの身体のためにも領地で休養しようと思っているの。オフィーリアあなたはどうする?」
お母様とお父様に聞かれて、即答した。
「行くっ!」
先日のハリーの一件でしばらく会いたくないと思っていたし、母親たちのお茶会には普段通りハリーが何食わぬ顔でやってくる。ハリーの顔を見るたびになんで好きだったんだろうか……と思う。身近に異性がいなかったとしてもだよ。憑き物が落ちるってこんな感じなんだ。
私たちはまだ子供だし、幼馴染だし親も同伴だから問題ないのかもしれないが、変な噂を立てられても困るもの。
ハリーがどうでもいい男だと知った今、私の大事な時間をハリーと過ごすために使いたく無い。というのが本音。ハリーが来たら会わなくちゃいけないでしょう? 会わないのも不自然だし。
だから領地へ行くか? と聞かれたらそれはもちろん行く! の一択だった。
「お姉様も一緒に領地へ来てくれるの?」
アンドリューはコホコホと咳をしている。
「えぇ、行くわよ。リューがいないと寂しいもの。一緒に領地へ行って健康を取り戻しましょうね。領地は空気もいいし、食べ物も美味しいもの。本邸の皆もきっと喜んで迎えてくれるわよ」
うちの領地は決して広くはないけれど、自然も豊かで隣の領地から魚介類が持ち込まれる市場なんかもあって、そこそこ賑わっている。
自然豊かで牛の飼育が盛んで新鮮なミルクも飲めるし、チーズだって美味しい。加工されたものは近隣の街でも人気になっている。地味だけど好評なんだから!
最近王都付近は建築ラッシュが続き、埃っぽいのが悩みの種。だからアンドリューは領地に行き空気のいいところで療養するのがいいと私も思う。アンドリューが行くのなら私も一緒に行って支えたい気持ちもある。
そんなこんなで、領地へ行くと決まってから引っ越し準備となる。領地までは馬車で急げば一日半ほどだけど、アンドリューの体調も考え三日かけて行くんですって。
いつもは馬車で駆け抜けていた場所にも泊まる事ができて、まず1泊目は王都近くの宿に泊まった。
いつもなら通り過ぎる町。夕方少しだけ宿の辺りの散策をお母様に許可されたので、侍女と護衛を連れて行く事になった。
領地へはお母様も行く事になった。社交シーズンになったら、お母様はまた王都へ戻る事になるけれど王都に残ったお父様は寂しい……と言っていたし、お父様もなるべく領地へ帰るようにするって事で今回の領地行きが決まった。
一緒に来てくれた私の侍女はメアリーといって私の二つ上の子爵家の三女で姉のような存在。そして流行に敏感なおしゃれさん。今回領地へ向かう為に三日間かけて行くので色々と調べてくれていた。
「お嬢様、このお店ですよ! キャンディ職人が作っていて店頭でのパフォーマンスが人気なんですって」
店頭横の一面に張られたガラスの内側で、職人が柔らかいものを伸ばして包丁で切っている。
「わぁ、色とりどりで可愛いわね! これがあの固いキャンディなの? こんなに柔らかいのに」
今の時点では熱々で熱いうちに伸ばして包丁で切って冷ますのね! すごい! 職人技だわ。
「坊ちゃまのお土産にしたらいかがですか?」
本当はアンドリューと一緒に町を楽しめたら一番良いんだけど……。
「そうする」
小袋に入ったキャンディをたくさん買った。領地の本邸に持って行くお土産にしよう。
町を色々と見て回る。楽しいわね~。夕方の市場は買い物客も多いわね。
「お嬢様、暗くなる前にそろそろ……」
護衛に言われて、もうそんな時間か……と思った。自分だけ楽しんでいるのも気が引ける。
「そうね、戻りましょう。今日は付き合ってくれてありがとう」
宿につき、キャンディを渡したらアンドリューは喜んでくれた。喉が痛い時に良いみたい。
「姉様、良いなぁ。僕も行きたかった……」
「そうよね。私もリューとお出かけしたいわ。元気になったら一緒に行きましょうね」
「うん。約束だよ」
キャンディ職人の話をしたらアンドリューは嬉しそうに聞いてくれた。その間も咳をしていたから早く元気になってほしい。と心から思った。
翌朝、また馬車に揺られて宿泊先の宿に到着。ここの町は領地へ行く際に休憩を取るために来たことがあるわ。
まだ明るい時間帯だから、散策の許可を得て昨日と同じメンバーで散策に出掛けた。明日の朝は少し早く出るから遅くならないように戻ってくること! とお母様に念押しされた。
「リュー……少しだけ散策してくるね」
「うん、僕は休憩しているから、楽しんできて」
ちょっと寂しそうな顔を見せる弟に、申し訳ないと思いながらも散策に出かけた。こんなチャンス中々ないもの。
宿から少し歩くと広場に出た。噴水があったり花壇にはお花が植えられていたりと、掃除が行き渡っている。芝生の上にマットを敷いて本を読んでいる人や犬の散歩をする人、よく見る光景だけど皆生き生きとしているのが分かる。ここの領主様は領民に愛されていそうな気がする。そうじゃないとここまで綺麗に町を維持できないわよね!
「あら、教会があるわ」
こじんまりとした教会。近くによると開放されているのが分かる。周りでは小さな子供たちが走り回っていたりしてアットホームな教会なのかもしれない。
キョロキョロと教会を見ていたら
「観光の方ですか?」
と声をかけられた。神父様だ。
「はい」
「どうですか、この町は?」
「とても綺麗な町ですね。広場に行きましたが皆さんとても生き生きされていて、この町が好きだというのが伝わりました」
「領主様自ら清掃活動もしているんですよ。それを領民が見習って美しい町を維持しています。町が綺麗だと犯罪も減るし心が豊かになる。と領主様の言葉です」
「素晴らしいですわね! とてもステキな領主様ですね!」
「えぇ、そう思います。良かったら教会も見て行きますか?」
「よろしいのですか? それではお言葉に甘えます」
神父様がとても親切!