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お茶会にて

「オフィーリア嬢良かったら庭を案内しよう」


 手を差し出された。


「えぇっと、母に聞いてからじゃないとお返事出来かねますわ」


 今日は学園が休みで(断れない)お茶会にお母様と来た。ザ・都会の貴族のお屋敷! って感じ……お金ありまーす! 入った瞬間にそう思った。高そうな壺、高そうな絵画、高そうな彫像に目が眩んだ。


 ……真ん中を歩こう。何かあっても絶対に弁償ができない。


「オフィーリア嬢、わたくしから伝えておくから息子と散策を楽しんで。若い者同士の方が話も弾むでしょう?」


 弾むようには到底思えません。とは言えないよね。にこりと笑顔を貼り付けた。


「母もそう言ってる事だし、行こうか」

「えぇ、っと、そうですね」


 この伯爵家の子息に連れ出された。庭もすごいゴージャスで薔薇の香りがむせかえるようだった。赤、白、黄色、ピンクに紫。どこを取っても目がチカチカする色合いだった。お、落ち着かない。


「オフィーリア嬢は今年で16歳になるんだよね?」

「えぇ。そうです」


 もうすぐ誕生日で社交界デビューとなる。


「そうか。オフィーリア嬢は可愛いからデビューをしたら引くて数多だろうね……本当に16歳?」


 どこ見てる?


「え? はいそうです、何か?」

「あどけない顔に、その身体……誘っているとしか思えない。君も伯爵夫人の座を狙っているよね?」



 ……きもっ!(言葉遣いが悪くなる程に)初対面なんですけどっ身体をジロジロ見てきて気持ち悪っ。誘ってないし。ってそもそも誘うって何処に? お母様が選んだドレスで露出も少ないしコルセット絞りすぎたのかしら。

 

「……あはははは……いいえ全く。わたくしまだ学生ですもの」


 乾いた笑いで誤魔化す。この子息は22歳? なんでこの歳まで独り身なんだろ。


「私もそろそろ身を固めようと思っていたところなんだ。卒業まであと三年待ってあげるから、嫁に来るかい? 一生キレイなドレスで着飾れる生活を約束しよう」


 待ってあげるって……何? この子息ちょっとヤダ。


「……ドレスには興味がありませんので、どうか他の方を」

「興味がない? あぁ、そうか! ドレスを着なくても自信があるってことかい?! それは良いね。他にも候補はいるんだが君はいいね」


 ドレスを着なくても……って何? 変態さん? 無理だ……


「生まれたままの姿で宝石だけを身に纏う。うん、実に芸術的だ!」


 ……変態だ! 絶対変態!!


 鳥肌が立ってきた。なんとかしてお母様と合流しなきゃ……よし。逃げよう! とキョロキョロと周りを確認していた。


「オフィーリア様~オフィーリア様~」


 お母様のメイドアリサの声。とにかく助けが来たという事で、返事する!  


「はーい! はい、はい! ここよ」


 手を振って存在をアピールをした。


「奥様がお呼びです。至急お屋敷に戻る事になりました」


 ……何かあったのかしら? でもナイスタイミング!


「オフィーリア嬢! 近いうちにまた会おう。その時は婚約についての契約を、」

「ごめんなさい。他の方にお譲りしますわ。今日はありがとうございました。さようなら」


 返事を待たずに去った。こんな失礼な小娘嫌でしょう?! 


「ちょ、ちょっと! 待ってくれ」

 

 はぁ、はぁ……よし、追っ手は? いない。息を整える。


「お母様、どうかしたの?」

「急に手紙を貰って……とにかく帰りましょう」


 何があったか分からないけれど家路へと急ぐ。


 ******


 急いで帰ってきた。


「あれ? ステファン様? ここ私の家ですよね? 今日はお休みでボートに乗るのでは?」


 ハテナがいっぱい浮かんだ。


「そうだね。だから迎えに来たんだ。断れない茶会があるのなら私に相談してくれればよかったんだよ。夫人もです」


 ステファンがなぜか家に居て、お茶を優雅に飲んでいる。不思議な光景……


「女性同士のお茶会でサツマイモについて聞きたいと言われて断れなくて……なぜ小公爵様が急ぎの手紙を」


 そう、そう、なんで?


「女性同士の茶会なら全く問題はありませんでした。しかし“あの”子息が絡むと厄介です。子息は女たらしで下半身が緩い男です。美術に造詣があるから美しいだの芸術だのと言い泣かせた女性は数知れず。妹がボート遊びをしたいとオフィーリア嬢を誘ったらお茶会に負けたと言っておりまして、どこの家で茶会をするのかと聞いたところ、評判の良くない子息の伯爵家だというではありませんか? 何もされなかったかい?」


 さすがステファン様。洞察力が素晴らしい。


「……されてはいませんが、子息が変態だということは分かりました」


 さぁっーと顔を青くするお母様。


「大丈夫だったの! もう二度と子息のいる家にお茶会に行こうだなんて言わないわ。オフィーリアに何かあったら……」


 ぎゅうっと抱きしめられた。


「お母様、ご心配をかけてしまいましたね。でも大丈夫ですよ。逃げる準備もしてましたもの。ほら、ローヒールなんですよ! 脚力には自信がありますし、帰り道にも目印を付けておきましたから」


 知らない邸は迷路だと思え! と先生に言われて目印をつけるように厳しく言われている。先生って何者なんだか……逃げ足が速いのが自慢って、自慢すること?


「先生にお礼を言っておくわ……」

「お金の方が喜びますよ」


 いつも研究費が……とぶつぶつ言ってるから。


「何事もなくて良かった。ところでその変態と次会うつもりはあるのかな?」


 ステファン様に問いかけられたけれど答えはNO!


「だろうね。私の方から()()()()()伝えておこう。妹の友達の頼みだからそれくらいは喜んで。さてまだ昼前だから、ボート遊びをしないか? 女子会とやらをしたいと妹が言っているからついでに泊まって行けばいい。夫人許可を頂けますか?」


「えぇ、それはもちろん」


 急遽お泊まり会が決まった。

ありがとうございました。

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