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見たことのある令息

 ボサボサの髪にメガネを掛けているこの令息。


「学園のお庭で見かけたことがあります。バラの支柱が倒れそうになっていたのを直していらして……次の日に柱が増えていたのはあなたがされたのですか?」

「まぁ、ジルったら学園でもそんなことをしているの? オフィーリア様。この人はジルベルト・ロワール。ルシアンの親戚筋に当たるのよ」

「……初めまして」

「すみません。名前も名乗っていませんのにペラペラとお話をしてしまいました。オフィーリア・カルメルと申します」


 しまった! 自己紹介の前にペラペラとお話をしてしまったわ! 恥ずかしい……とんだ失態だ。


「ジルも早く席に着いて! オフィーリア様のお土産のお菓子を食べましょう」


 お皿にキレイに盛り付けされたカップケーキが出された……って! なにこれすごく豪華になってる! 私が持ってきたお菓子?


「まぁステキ! こんな盛り付け初めて。どうしたの?」


 メイドに聞くフローリア様。

 ん? お菓子と別添えで金箔が入っていて盛り付けする時に振りかけて欲しい。と手紙があった? 並べ方の指示書まで? ナニソレ……シェフと先生のこだわりなのね。食べても大丈夫かとか確認までしてくれたようで出すのに時間がかかったんですって。


「シェフが口にしてとても気に入ったようですが、お嬢様方の口に入れても良いかと悩んでいまして……するとステファン様が来られまして了承を得ましたのでお出しすることになりました」


 やはりサツマイモは賛否両論があるのね。お手を煩わしてしまった。


「お兄様がいいと言ったなら問題ないわ。いただきましょう」


 躊躇いもなくフローリア様もルシアン様も遅れてやってきた令息も口にした。


「おいしい」

「うまいな」


 フローリア様、ルシアン様がそれぞれ口にした。良かった……ホッとしたその時だった。

 

「驚いた……これサツマイモだよね。こんなに滑らかになるんだ」


 バレた! 種明かしをする前だったのに。


「サツマイモですの?」

「へぇ。信じられない」


「……あ、あの、サツマイモを口にしてもその、驚かないのですか、フローリア様のような方が口に入れても不快になったりは……」

「ふふっ。サツマイモは好きですのよ。もちろんはじめは驚きましたけれどおいしいものに罪はありませんわ、そうでしょう? ジル」

「あぁ。サツマイモは備蓄にもなる。家畜の餌にするにはもったいない。それをわかっている者が少なすぎる」

「以前サツマイモを揚げて砂糖をまぶした物を食べた事がある。うまかったがそれ以上に手が込んでいて上品で本当にうまい」


 ルシアン様も大絶賛でいいのかな? でも嬉しい。


「良かったぁ……喜んでもらえて。先生が喜びます!」


 ホッとして公爵家で用意してくれたお菓子に手を伸ばす。


「わぁ。これすっごいおいしいです! カカオをこんなにも贅沢に! ナッツもたっぷり入っていて」


 すると三人とも笑い出した。


「おいしそうに食べるな」

「お土産に持ってかえってね。たくさん用意したの」

「お茶のおかわりいる?」


 恥ずかしい……。


「その。緊張していたんです。サツマイモはおいしいけれど貴族が口にするものではなくて……。でもある領地のお祭りで食べたサツマイモがおいしくて、また食べたくて……。シェフと先生が考えて作ってくれたのです。サツマイモの魅力にハマった我が家では、メイドたちも案を出してスイーツ作りに精を出しているんです」

「そのお祭りって、花まつりではなくて?」

「はい、そうです! 初めて行ったのですが幻想的で美しくて夢のようでした。町も清掃が行き届いていて明るくて」

「まぁ。ですってジル!」

「ジルベルトが照れている。珍しい」

「その、ありがとう。嬉しい」

「え? もしかして」

「ロワール領でしょう? ジルはロワール伯爵家の令息なの」


 ジルベルト・ロワール様って紹介されたのに! 私のバカ!! でも!


「お会いできて光栄です。私はあの町が本当に好きです。うちの領地へ行く途中で休憩のために寄ったのです! ステンドグラスのキレイな教会を神父さんに案内してもらって。神父さんも町の方も親切でいい思い出です」


 ペラペラと興奮して話をしてしまった。


「そう言って貰えると嬉しい。父にも伝えておくよ。また機会があったら是非遊びに来て欲しい」

「はい!」

「私とルシアンも花まつりに行ったのよ。今年はみんなで行きませんこと? きっと楽しいわ。ね、ルシアン」

「そうだな。旅行がてらオフィーリアの家の領地へ行くのも悪くないかもな」

「は? ルシアンがフローリア嬢以外の令嬢に興味を持ったのか?」

「フローリアと友達なら僕も友達だしさっき友達になった。オフィーリアは話をしていて嫌な気がしないし、さすが癒し系令嬢だ」


「ですからなんですか、それ? 友人からは食いしん坊系令嬢と呼ばれていますよ?」

「それは間違いな……おいしそうに食べている」

「肯定されても微妙ですね……」

「ふふっ。オフィーリア様は楽しいわ」


 なんだかんだと楽しい時間を過ごすことができた! まさかサツマイモでフローリア様たちと仲良くなれるなんて!

ありがとうございました。

面白いと思ってくださったらブックマーク登録・☆☆☆☆☆・いいねで評価してくださると嬉しいです!

挿絵(By みてみん)

先月ブシロードノベル様から書籍が発売されました。

お手に取っていただけると嬉しいです。

小説家になろうでもご覧いただけます!


よろしくお願いいたします。



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