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公爵令嬢フローリア様

 名は体を表す。なんて聞くけれどフローリア様は本当に存在そのものがお花のように美しい。孤高の華と呼ばれている。美しく尊い存在ってことだよね! 


「オフィーリア様といるとなんだか、ほっとするわね。のんびりするというか毒がないというか……」


 美しい花には毒やら棘があったりするけれども、私なんかはそこらに咲いている野草のようなもの。


「そうだわっ。今度我が家でお茶会をするのだけど良かったら、オフィーリア様も来てくださらない? お花が好きと仰ったでしょう? 少人数のガーデンパーティなの」

「え、よろしいのですか? 私なんかがお邪魔して?」

「えぇ。是非! 実はね、わたくしお友達があまりいないの。皆わたくしの家目当てというか……お兄様目当てというか……」


 フローリア様のお兄様は王太子殿下の側近中の側近だったはず。私でさえ耳に入るくらい優秀な方だ。


 無理だ! お断りしよう! 粗相があってはいけない。死にに行くようなものだ。


「あ、あのですね」

「なぁに?」

「やはり私のような者がフローリア様のお屋敷に行くのは……その、粗相があっては困りますし……お兄様にも興味がない、じゃない。その、なんですか、えっとですね。恐れ多くて、」


 あぁ……言葉を選んでも失礼だった。社交をもっと学んでおくべきだった……


「まぁ。オフィーリア様は楽しい方ね! お兄様には顔を出さないようにお願いするわ。オフィーリア様を緊張させるつもりはないの。肩の力を抜いてお越しになって。二、三人の気軽なティーパーティーなのだから」

「……それなら」

「約束よ」


 なんていうことでしょう! まさかのフローリア様の家に……夢かも。って断るべきじゃないのかしら! 手をとられてしまった。断れない。


 ******


「という事で、何を持っていけばいい?  何も持たずにいけないわよね」


 公爵家に持って行くお土産を考えていた。そして食後の家族会議の議題となった。


「公爵令嬢……取り巻きにでも選ばれたのか?」


 リューめ! 


「そういうの好きではないみたい。フローリア様って孤高の華とも言われているのにお話をすると、違ったの。美しすぎて尊いのだけど同じ人間なの」

「なんでまた姉さまなんだろうね?」

「分かんない。毒がないって言われたけれど、どういう意味?」


 毒ってなんだろう。あの時は頭がふわふわとしていて考えもしなかったけれど……。


「無害なんだね……食い気しかない田舎娘ってことか」


 リューめ!


「フローリア様は洗練された美しい令嬢だから田舎娘が珍しいのかも」


 自分で言って情けなくなるけど仕方ない。


「それですよ、お嬢様!」


 急に先生が話に入ってきた。先生も家族会議に参加してたんだった。このところ研究が進んでいないらしくって影が薄くて。


「どれ?!」


 キョロキョロと辺りを見渡す。何にも無いけれど。


「サツマイモですよ」

「え?」

「自信作ができました」


 手を叩きシェフを呼ぶ先生。


「皆さんが集まるのでお茶請けにシェフと作りました」


 ジャーン。とスイーツを出すシェフと先生。


「見た目は綺麗だね。カップケーキかい?」


 お父様がまじまじと見ていた。お母様も興味深そう。


「サツマイモを練り合わせた焼き菓子を作り、さらに裏漉ししたサツマイモに生クリームを加えて滑らかにし、絞り袋に入れデコレーションをしたあと、金箔を乗せました」


 金箔乗せちゃったの! お芋に?


「イメージが変わったのは認めるけれどサツマイモは家畜の餌というイメージが払拭できない。いくらおいしくても貴族は食べないよ」


 首を振るお父様、お母様も手が伸びない。おいしいのに! もうっ!


「いただきます!」


 手を伸ばしパクりと口に入れる。ちゃんと一口サイズに切ってあるんだもの。食べやすい。


「んんんっ……おいひい。クリーミーで濃厚で甘くて舌触りも良いわ。もう一つ」


 もぐもぐと食べ進める。


「リューも食べて」


 リューはサツマイモの美味しさを知っているから躊躇なく口にいれた。


「おいしい」

「お父様もお母様も食べないなんて勿体ないですよ、リューもおかわりしてますよ」


 リューの二個目は私が口に入れたんだけど……。


「そこまで言うのなら……」

「そうね。シェフと先生が考えたものだものね」


 お父様とお母様も先ずは一口と言わんばかりにさらに小さめに切って口に入れた。


「……! これは驚いた」

「本当に! おいしいわ……」


 本当においしい。これがあのゴツゴツとした歪な形の土から出てきたお芋だとは到底思えない程のおいしさだった。


「喜んでいただけて嬉しいです」


 シェフが先生とハイタッチをしていた。シェフにとっても難題だったのかもしれないわ。このお菓子はシェフと先生の努力と汗の結晶! これをお土産に持って行くことにした。こんな芋なんて食べられない。失礼だ! と言われればそれまで……。家に迷惑だけはかけないようにしなきゃ。


「もう一個食べよう。ってあれ? ない!」

「姉さまが静かにしていたから、皆で分けたよ」


 執事やメイド長まで!


「ひどいわ」


 ぶつぶつ文句を言うと、また作ってくれるのだそう。それに他にもこうしたい、あぁしたいなど案があるんですって! 楽しみだわ!


ありがとうございました。

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