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学園で

「今度グレイブス子爵夫妻と食事に行こうと思ってるんだけど、一緒にどう?」


 グレイブス子爵夫妻とはハリーの家。そういえば、ハリーが食事がなんとかと言っていたっけ?


「ううん、やめておく。もうすぐテストもあるし先生が張り切っているから成果を見せないとリューにバカにされるもん」


 チラッとリューの顔を見た。無表情で何を考えているのか分からない。


「昔は家族ぐるみで食事をしていたじゃない?」


 領地に行く前の話。今とは違うもの。


「ハリーは学園で人気があるから、仲良くしていると思われたくないの。誰かに見られたら面倒だし」

「そんなことを気にする年頃になったのね。昔は婚約の話も出ていたのに」

「……もしかしてくっつけようとか思ってない? 迷惑だからやめてね」

「そういうつもりじゃないわよ。リューも行かないの?」


 私の隣で本を読んでいたリューが顔を上げた。


「行かない。僕、ハリー殿に対して懐かしいとか久しぶりとかそういった感情全くないんだよね。僕、身体が弱かったからハリー殿に揶揄われたこともあるし、子供ながらに傷ついたんだよ。姉さまが仲良くしていたから話をしたことがある。くらいにしか思ってない。姉さまが行かないのに僕が行くわけないよ」


 え! 知らなかった! ハリーめ! いたいけな弟になんて事を……


「……知らなかったわ。ごめん」


 がばっとリューに抱きついた。


「ばか! 離れろ!」


 更にぎゅうっと抱きしめた。ぐいぐいと引き離そうとするけれど、リューはなんだかんだと加減している。


「仲の良い姉弟に育ってくれて嬉しいわ。それと無理強いするつもりはないから断っておくわね。ハリーも子供だったし(多分)悪気はなかったのよ、きっと」

「昔のことだし、今は元気になったからもう気にしてない。ただ好き好んで仲よくしようとは思わないだけ。それといい加減に離れてくれる? 暑苦しいからっ!」


 ぺちんとリューに頭を叩かれた。ひどい……。食事は両親だけが行くことになった。食事会は行かないけれどその日は出掛けることにした。リューが本屋へ行きたいと言ってたし先生も新刊が出るから本屋へ行く用事があるって言ったから。


「本屋さんの後はカフェに行こうよ!」

「お嬢様はほんっとに良く食べますよね……」

「食べないと大きくなれないもの。おすすめの店を聞いてきたんだ。楽しみ」


 おばぁ様は言った。食べないと大きくなれないってよくお菓子を食べさせてくれた。そのあとお父様に注意されていたけれど、おばぁ様の教え通りに過ごしていたからよく食べる子になってしまった。


「栄養は食事で摂りなよ……最近ちょっと食べすぎなんじゃない? シェフも姉さまが喜ぶからって何種類もお菓子を作ってさ」


 はぁっ。と呆れる口調のリュー。


「お嬢様は幸せそうに食べますから与えたくなるんですよ。サツマイモを使ったスイーツなんですがそろそろお出ししてもいいくらいですよ」


 先生は植物学者で、庭師のおじいさんに頼んで庭の一角でサツマイモを作り始めたの! まだお芋は小さいし、いい出来ではないようだけどそれなら手を加えて美味しいスイーツにしてみせよう! と学者魂に火がついてあの手、この手をつかって? お芋スイーツの研究をはじめた。ただサツマイモが足りなくなって例の町から買ってきたとか?


 そういえば、あの町は隣のクラスにいる伯爵令息の領地らしい。隣のクラスといっても向かい合う建物に教室があるから、隣のクラスの子息までは分からない。


「先生、研究の成果が出ないからってスイーツ作りの研究に置き換えなくても……」

「……違いますよ。サツマイモの研究です。どうすれば見た目がよく美味しくなるかという研究です」


 リューと先生の会話を聞いていたら、先生も疲れているんだわと思い、先生のためにもいい成績を取ってあげないと……。成績アップしたら先生にボーナスをあげるようにお父様に頼んでみよう。


 そしてコレ(サツマイモ)がきっかけで、私の友人関係が変わることになるとは思わなかったのだけど……。

 



 テストが無事に終わり私の成績は上の中の下かな? という成績だった。頑張った! 成績上位者はご褒美の交流会があって、私の隣には噂の公爵令嬢フローリア様が! ……緊張する! あ、目が合ってしまった! 美しすぎる!


「カルメル伯爵令嬢でしたわね? わたくしフローリア・フェロウズと申します」


 はわわわわ……ご挨拶をしていただけました!


「ご、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。オフィーリア・カルメルと申します」


 緊張して噛んでしまった! フェロウズ公爵令嬢……美しすぎて同じ生き物とは思えない。尊い。


「まぁ。そんなに緊張なさらないで。こちらが恐縮してしまいますわ」


 くすくすと笑うお顔も美しい……尊い。


「フェロウズ公爵令嬢が美しすぎて……」


 さすが都会の令嬢のレベルは違う。雲泥の差を感じる。バラと野草くらい。


「嬉しい事を仰るけれど、カルメル伯爵令嬢はとても柔らかい雰囲気で可愛らしいのね……オフィーリア様とお呼びしても?」

「はい、喜んで!」


 え! フローリア様とお呼びしても良いの! なんということでしょう! お近づきになれた? リューの言う通り成績はAクラスが正解なんだ! 頑張ってよかったよぉ。

 

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