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ハリーに会った

「リアって本当に良く食べるよね」

「そう?」


 ランチのあとに友人のセザンナとお茶を飲んでいた。因みにセザンナは私の事を“リア”と呼ぶ。


「さっきチョコレートを食べてなかった?」

「食べたよ。どこのお店のチョコレートなの? 今度買ってこようかな♪ スザンナは美味しいお店たくさん知ってるよね」


 ビターなのにあとからキャラメルがトロリと口の中で溶け出してきた。二度美味しいチョコレート。


「このクッキーも美味しいね。どこの?」

「癒し系が聞いて呆れるわね。食いしん坊系の間違いだよね」


 なぜか私は癒し系とかなんとかと言われているらしい。都会に染まっていないとかなんとか……? 

 ま、良いか。言わせておこう。と思っていたら親切な令嬢(?)が教えてくれた。“田舎くさいってことだから!”って。


 領地に長くいたから王都の流行りについていけないからなのかもしれないから、ま、いっか。悪口じゃないみたいだし。


「せっかく王都にいるんだから美味しいものを食べたいもの。領地にいた時はミルクジェラートをよく食べていたの。濃厚ミルクを使ったあの味は王都とはいえ出会えないわ。リューが元気なったのも空気がいいのとミルクのおかげだと思っているのよね」


 もうすぐリューに身長を抜かさせる。最近目線が同じになってきた。そして節々が痛くて眠れないって言って先生に聞くと成長痛だとか?


「リアもしっかり成長したよね、この辺」


 スザンナに指を差された。


「きゃぁ。変態っ!」


 領地に住んでいる頃からシャツのボタンが苦しい……と言っていたけれど、ミルクのせいなのかもしれない。うちのミルクって本当に甘くて濃くて美味しくて……チーズも美味しいし。乳製品の摂りすぎだったのかも……締め付けてなんとか抑えているから苦しい。


「可愛い顔にアンバランスな身体でよく食べる所が癒し系といわれる理由なのね」

「よくわからないその変な呼び方やめてほしいんだけど。田舎くさいってことなんでしょう? ずっと王都で暮らすつもりないし、たまに遊びに来るくらいでちょうどいいかも」


 頭がいいとかキレイとかイケメンだとか目立つ特徴だったら良いのに、よく食べる子って……どこで見られているか分からない。怖いわね、学園。


 去年はハリーもイケメンだって騒がれていたみたいで、すでに私たちの学年にもファンがいるんですって。昔から知っているけれど俯瞰で見るとモテるんだ。そりゃ私と婚約したくないわけよね。


「いい加減に食べるのをやめて、午後の授業の準備しなきゃ。東棟に行かなきゃいけないんだからそろそろいくわよ」


 ……あっ! しまった。


「教室に忘れ物しちゃった。取ってから行くから先に行ってて」

「分かったわ。片付けておくから、急いで取ってきなさい。時間に厳しい先生だから遅刻したら減点されちゃうよ~」

「うん。ごめんね、ありがとう!」


 早足で教室に向かう。なんでノートを忘れちゃったのかしら……教室へ行くとがらんとしていた。皆もう移動しちゃったのね。急いで東棟まで歩を進める。急がないと減点!

 


『オフィーリア、久しぶりだな。帰ってきたんだったな』


 名前を呼ばれて振り向くとハリーが友人といて声を掛けられた。急いでいるのにっ……!


『え? ハリー様ではないですか。お久しぶりですわね』


 微笑みを浮かべるも内心は早く東棟へと行きたい。


『元気だったか? この前母に会ったんだって?』

『えぇ。夫人も元気そうでしたね』


 久しぶりに夫人に会った。相変わらず優しくてキレイだと思った。いくらお母様の友人だとしても、幼い頃のようにおばさまと呼ぶのは失礼にあたる。


『またうちの家族も交えて食事でもしないか? オフィーリアとアンドリューが帰ってきた祝いに』

『お気遣いありがとうございます。まだ慣れぬ校舎ですし少し急いでいますので失礼しますわね』


 ハリーはハンサムで人気がある故に、いろんなお茶会に招待され顔を出している。と友人から聞いている。婚約の話が出たときに自分磨きに精を出すとか、友人を作って遊びたい。とか言っていたものね。久しぶりに会ったから声でも掛けてやるか! みたいな感じがみえた。なんていうか上から目線は変わらない。

 

 そういえばリューは元々ハリーのことをよく思っていない感じだった。身体が弱くて私にべったりくっついている子だったから、私が取られると思って寂しかったのかと思いきや、ハリーという人間の本質? を見抜いていたのかもしれないわね。男の勘? それよりも今は遅刻の心配をしなきゃならない。急いで東棟の教室へ向かう。


「はぁ。間に合った……」

「ぎりぎりだったね。何かあった?」


 ランチを一緒に摂っていたスザンナがホッとした顔をしていた。


「ハリー様に声を掛けられたのよ」

「久しぶりに会ったんじゃない? 何を話したの?」


 スザンナは幼馴染だと知っている。


「大したこと話してないよ。急いでいたからそれどころじゃなくて。遅刻したら減点でしょう?」

「そうよ。ヒヤヒヤしたよ。良かった間に合って」


 遅刻や忘れ物に厳しい先生だから気をつけないと! 授業が始まり集中していたらハリーのこと、すっかり忘れた。


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