台湾の「能登半島地震支援金」「総統選民進党勝利」を素直にプラスに思えない理由
筆者:
最初に断っておきたいこととしては、
僕は台湾について好印象を持っていますしむしろ縁があります。
親戚で日本統治下での台湾出身の方もいますしね。
ただ、世界の状況は0か100かの単純な状況ではなく複雑に状況が絡み合っています。
質問者:
(こういう前置きの時は大体ややこしい話だ……)
それにしても、なんだか随分と“ひねくれたタイトル”のような気がするのですが、
どうして純粋にプラスに思えないんでしょうか?
筆者:
台湾の親日感情はもちろん純粋にプラスに思って良いと思います。
台湾当局は24年1月4日午後、日本政府に対して6000万円の寄付を表明しています。
また、台湾保健当局は1月11日、能登半島地震への支援と復興にあてるため、市民から集まった寄付金が日本円で11億8200万円以上になったと発表しています。(募金開始から1週間時点の数字、19日まで受け付け)
台湾以外の日本の周りの国々は反日教育をしている中国と韓国、敵対国と言っていい北朝鮮、ウクライナ紛争でほとんど断絶しつつあるロシアとかなり悲惨なラインナップです。
今後も台湾との友好関係を継続する必要があります。
質問者:
それなら、どういう理屈なんでしょうか?
筆者:
純粋にプラスになる状況というのはこの世に中国と台湾と日本とアメリカの4か国しかない場合です。
しかし、実情はアメリカはウクライナ支援やイスラエル支援で“疲れ”が見えています。
ウクライナ支援を共和党が予算カットしようとする姿勢からすると“国家承認していない”台湾を支援する可能性というのは低いのでは? と思ってしまいます。
日本とアメリカは日米同盟という軍事協定がありますがアメリカと台湾には特にありません。
アメリカ軍が1000人単位とはいえ駐留している分、抑止力という意味ではウクライナよりかは状況はマシだと思いますけど本気で戦ってくれるかはまた別です。
質問者:
なるほど、中国と台湾が戦争を始めた場合アメリカがまともに戦ってくれない可能性があるということですか……。
筆者:
これは僕の考えすぎかもしれませんが、台湾のこの援助について、
『日本さん! いざというとき救援頼みます!』
と暗に言っているような気がしてならないんですよね。
世の中「只より高い物はない」とも言いますしね。
もちろん純粋な気持ちだとは思いたいんですけど……。
質問者:
特に日本人の多くの方は「恩を仇で返す」ようなことはしたくないと思いますから、
まず国民感情として“台湾有事”の際には台湾を助けることに全面協力するでしょうからね。
筆者:
そういうことです。
そして終いにはアメリカがあまり戦ってくれずに日本はかなり苦しい思いをしかねない可能性があるということです。
次に今年最初の大きな選挙と見ていた台湾総統選挙ですが、
民進党の頼清徳新総統が勝利しました。
しかし、個人的には“勝ち方”が良くなかったように思います。
質問者:
どういうことでしょうか?
筆者:
というのも、24年1月14日に台湾総統選挙と同時に行われた台湾立法委員(国会議員)選挙においては、
定数113議席に対して主要三党の獲得議席数は、
改選前 民進党62議席 国民党37議席 台湾民衆党5議席
改選後 民進党51議席 国民党52議席 台湾民衆党8議席
と民進党が単独過半数割れしたどころか第一党からも陥落したのです。
今後は過半数をめぐってこの第三党の台湾民衆党がキャスティングボードを握ると言われていますが、国民党が急接近しています。
つまり野党が国会を取ってしまった状態に近いと言えます。
質問者:
え……どうして同時に選挙があったのにいわゆる「ねじれ」みたいなことが起きてしまったのでしょうか?
しかも、台湾総統選挙はそんなに僅差じゃなかったみたいじゃないですか?(90万票差)
筆者:
これは総統選挙において野党2党が統一候補を立てられなかったことにあります。
地方の民進党議員に汚職などがあり、民進党そのものに信任があったわけでは必ずしも無いといえるので、
実を言いますと台湾政治情勢は見た目より不安定化したといえるのです。
ちなみに国会予算案や法案の審議で野党に抵抗されることになり、
軍事的な予算や経済政策において不自由な状況になってしまいます。
質問者:
思ったよりも大変じゃないですか……。
中国外務省が台湾総統選挙を受けて、
「結果がどうであれ、台湾が中国の一部だという基本的事実は変わらない」と言ったのは驚きでしたね。
しかし、そもそも思ったんですけど、中国が台湾にこだわっている理由って何ですか?
筆者:
まずは台湾の経済力です。
高度な半導体に関しては世界一であるTSMCを擁しています。
次に、海洋進出の妨げです。
日本列島を含む、いわゆる「第一列島線」により中国は太平洋に出ることができないんですね。
このことにより、原子力潜水艦を隠すだけの広くて深い海を持っていないことから、
「大陸国家」に留まってしまっているのです。
「覇権国家」を目指す中国としては必ず太平洋に出たいのです。
質問者:
中国としては領海や排他的経済水域などで大きく損をしているということですか……。
筆者:
そういうことです。あれだけ領土が広いですが海に面している土地は少ないですからね。
ちなみに、表向きの名目としては「清王朝が台湾を支配していた」ということですが、
対外的には国が替わっているとして認められていないのです。
質問者:
しかし、中国が台湾を攻めることってあるんですか?
民進党政権だと独立されちゃうということでしょうか?
筆者:
民進党は実を言うと「台湾独立」ではなく「現状維持」を目指している政党です。
つまり、急激に局面が変わることはありません。
2023年12月29日、中国第十四次全人代常務委員会の「第2号公告」の中で9名の高級軍人の全人代代表の資格を罷免するなど中国軍内部でも“荒れている”可能性がありますね。
また台湾総統選挙後のアメリカバイデン大統領の発言を見ても台湾独立を支持しているわけではないのですぐさま急展開が起きることはないと思います。
質問者:
それなら当面安全なんでしょうか?
筆者:
僕がいわゆる“台湾有事”の重要なポイントとして挙げたいのは
「中国本土の経済状況」
だと思っています。
中国は数字を偽装している疑惑がありますが、不動産会社のリスクや若者の失業率の高さなど偽装でも覆い隠せないほどの経済政策の失敗に至る可能性があります。
これまで色々と敵対していた中国の経済衰退は「小気味良い話」に聞こえるような気がしますが、
その際に、政府批判を“台湾有事”に逸らす作戦が考えられるため、戦争リスクは上昇します。
質問者:
なるほど、中国の経済状況が意外とカギになるんですね……。
筆者:
経済だけでなく震災対応など内政状態にも大きなマイナスポイントが出ると“台湾有事”になる可能性があるので色々な点で中国の内政状態にも注目したいですね。
それまでは“圧力”をかけることによって頼新政権を自ら降ろさせるための工作をしたり、
国民側からの“アクション”に期待する形でしょうね。
現に24年1月15日にはナウル共和国が台湾との国交断絶を発表しました。
品川区ほどの面積で人口1万3千人、主要産業は観光とリン輸出なのでそこまで台湾にとって影響は薄いとは思うのですが、
“孤立している”感じを台湾国民に与え、民進党政権に不信感を持たせる効果はあると思います。
質問者:
なるほど、当面の間は「自ら軍門に下るように仕向ける」という形ですか……。
筆者:
経済面では、事実上の禁輸措置などを使って世論の分断を狙うとみられています。
台湾の貿易最大国は輸出も輸入もトップは中国でどちらも25%前後、香港も含めれば4割近いです。(日本はどちらも3位ぐらい)
貿易を断たれると台湾としてもキツイわけです。
中国が貿易を断つことをチラつかせるだけでも影響は大きいと思います。
質問者:
台湾の方々は具体的な戦争にならなくても脅威に晒される可能性があるということですか……。
理想的な台湾との関係はどうしたらいいんでしょうか?
筆者:
最終目標としては日米台の三国軍事連携だと思います。
そして台湾が中国に貿易を断たれても肩代わりできるといいですね。
ただ、大きな問題は日米が台湾を国家承認していないことです。
結局のところ日米としても中国と貿易を断たれると厳しいのは変わりないので国家承認できないんです
ですから日米は“曖昧戦略”を取らざるを得ないということです。
そういった難しい舵取りをしなければいけないわけです。
条約を結べない状況が、アメリカが参戦してくれない可能性に繋がり、
僕が「支援金を素直にプラスに思えない」理由の一つだと思っています。
質問者:
確かに国家承認していないと条約も正式に結べませんからね……。
筆者:
何とか日米が台湾を国家承認して中国が貿易を遮断しない程度になだめる形がまず第一歩でしょうね。
ということでここまでご覧いただきありがとうございました。
今後も政治・経済、マスコミの問題点などを独自の視点で解説していきますので、
また機会があればよろしくお願いします。