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この世界で俺と妹と幼馴染は全世界最強無敵アイドルを目指す!

西暦2071年、技術革新により五感データがリアルタイム配信されるようになった時代……全人類は「アイドル」に熱狂していた!


ワールドワイドアイドルネットワーク――通称WWINに接続し、全世界の「アイドル」が日夜ランキングを競い合う!


そんな世界で、日本に住む高校生橘暁たちばなあきらは、妹の橘宵子たちばなよいこと幼馴染の藤原煌輝ふじわらきらきと共にアイドルランキングを駆け上がっていく!


宵子は最強の妹系アイドルとして、煌輝は無敵の幼馴染系アイドルとして!


そして、過熱するWWINのアイドルバトルは誰にも想像できなかった新たなる舞台へと到達することとなる!


五感を震わす超絶成り上がりアイドルステージ、ここに開幕!

 布団の中がもぞもぞとして、アラームが鳴る前に目が覚めた。

 誰かが、俺の布団の中に潜り込んでいる。

 すぅっ、と息を吸い込むと、甘ったるい匂い。

 ああ、同じものを食べてるはずなのに、どうしてここまで心地良い匂いになるのか。

 胸いっぱいに吸い込んでから、ゆっくりと瞼を開くと……お互いに目と目が合った。

「おっはよ、おにーちゃん♡」

 橘宵子(たちばなよいこ)、16歳、高校1年生。

 俺――橘暁(たちばなあきら)――の妹が、布団の中にいた。

「何をやってんだお前は」

「大好きなおにーちゃんに、おはよーの挨拶をしにきたんだよ?」

 妹は長い睫毛をピンと立たせ、大きな黒い瞳をキラキラと輝かせ、にこやかな笑みを浮かべている。

 小さくて可愛らしい鼻、ぷりんとした唇は瑞々しく、針で突けば破裂しそうなほどで――破裂しそうといえば、俺の身体に押しつけられているものがそうだった。

 妹のパジャマを盛り上げている、ぱっつんぱっつんの大きな乳房だ。

「あのね、この前の身体測定で95センチまで大きくなっちゃったんだよ」

 布団の中でそんなことを告白されても困る。おまけに、尋常ではない重さと柔らかさをしっかりと伝えられる。

 思わず身じろぎすると、「あんっ♡」と甘い声を漏らしてくる。

「でね、今使っているブラのカップサイズを答えられたら、おっぱい揉んでもいいよ♡」

「何を言ってるんだお前は、そんなもんは知らん」

 とはいえ実は、先日洗濯をしたときに、妹のブラのサイズは知っている。

 だから、そのまま答えれば良いのだが……妹は”今使っているブラ”と言った。

 身体を押しつけながら「はやく答えないと、おっぱいチャンスが無くなっちゃうよ~♡」とニヤニヤ顔で催促してくるが……ああ、この柔らかすぎる感覚……間違いなくブラなどしていない!

 だが、引っかけの可能性もある!

 ヘタをすれば妹に一日中からかわれるのだ!

 ええい、ままよ!

「ほら、いつまで寝てるんだ! 起きろ、暁くん!」

 ずばりノーブラだと答えようとした瞬間、布団が剥ぎ取られた。

 布団を剥ぎ取って仁王立ちになっているのは、俺達兄妹の幼馴染である藤原煌輝(ふじわらきらき)だった。

 ベッドの上で妹が俺に跨がっているところを見られてしまったが、煌輝はただ呆れた顔付きになるだけだった。

「君らは、また乳繰り合っていたのかね、さっさと準備しないと遅刻するぞ」

「やだやだー、おにーちゃんの身体があったかいからここで授業受けるー」

「それはダメだ、学校に行かないと絶対にダラけるだろう、宵子ちゃんは」

「じゃあキラちゃんも一緒にお兄ちゃんのベッドで授業受けようよ~」

「おい宵子、なにが”じゃあ”なんだ……むぐうっ!」

「ねえねえ、おにーちゃんも学校なんかにわざわざ行きたくないよねー?」

 妹のでかい胸が、俺の顔に押しつけられる。

 柔らかいそれが、顔面にぴったりと貼り付いて呼吸困難にさせられる。

 ああ、なんと幸せな窒息状態だろうか。

 ちなみに今の時代、授業を受けるというシステムは選択制になっていた。

 アバターを登校させて自宅で授業を受けるか、実際に学校へと足を運ぶかだ。

 大昔に、大規模な疫病の流行があったのが在宅授業の切っ掛けとなったらしい。

 遠隔地等に住んでたりするとアバターだが、古典的な学校教育を望む家庭や運動系の部活に入っている生徒は実際に登校をしている。

 うちの家庭は後者のタイプで、せめて年間の半分ぐらいは登校して欲しいらしい。

「それで、宵子ちゃんはパンツ丸出しで授業を受けるのかな?」

「きゃんっ! 叩いちゃダメだってばぁっ!」

「宵子ちゃんは、相変わらずズボンを履かないんだね」

「だってその方が涼しくて気持ちいいんだもんっ!」

「キミの露出狂っぷりは分かったから、せめて顔ぐらい洗ってきてくれ」

「ぷはぁっ! 宵子、身繕いの一つもできないようじゃ、お兄ちゃんは嫌いになっちゃうぞ」

 でかくてやわらかくて重くて幸せたっぷりの二つの物体からようやく抜けだした俺がそう言うと、宵子はムスッとした顔でベッドから降りて伸びをする。

「はぁ~い、わっかりましたぁ」

 宵子の身長は、155センチほどとちびっこいが、細く白い足は長く、今にも飛び跳ねそうな躍動感があった。そして、大きすぎる乳房でパジャマが引っ張られて丈が短くなり、ピンク色の下着が丸見えになっているが気にもしていない。

「それじゃ、先に降りてるから……おにーちゃん達もあんまりイチャイチャしないでよね、フンッ」

 宵子は、唇を尖らせながら部屋から出ていった。

「……煌輝が毎朝俺達を起こしに来てくれて、本当にありがたいよ」

「私は君達の両親に色々とお願いされたからね、これぐらいなんともないさ」

「お願いねえ……ハウスAI”朝の調べ”」

 家のAIに命令すると、カーテンがさっと開いて軽やかな音楽が流れ始める。

 LED照明が点灯してさらに部屋が明るくなり、彼女――藤原煌輝の姿が浮かび上がった。

 今日は学校指定の夏物のセーラー服姿。

 日本に導入されて百数十年。レトロ(時代遅れ)もいいところだというのに、いまだに学校制服として採用されているのは”古典的な学校教育者”がどれほど多いのかが窺えるものだ。

 煌輝の身長は俺よりも少し低い165センチほど、学校ではソフトボール部に入っているために茶色の髪の毛をショートカットにしている。

 紺色のプリーツスカートは短め、黒ストッキングで足を包み、長い足を細く見せつけている。相変わらず宵子も羨む綺麗な脚線美だ。

「ん~? どこを見ているのかなぁ、キミは?」

 煌輝は眼を細めながら、その端正な顔を近づけてきた。

 強気そうな吊り目に茶色の瞳、高い鼻は綺麗に整い、リップクリームを薄く塗った健康的な唇を尖らせて、怪訝そうな顔付きをする。

 こんなに接近されると、さすがの俺でもドキドキしてしまう。

 だからつい視線を少し下の方にやれば、我が妹に勝るとも劣らぬ乳房をぶら下げているのを改めて確認してしまう。

 さきほど俺を窒息させた妹のものよりも100グラムほど重い、片玉2.5キログラムHカップの爆乳。

 しかも首元の隙間から薄緑色のブラが見え、重力に負けて伸びた左右の長乳が密着し、深く長いIの字の谷間が出来上がっているではないか。

「あっ! キミったらもうっ! このスケベっ!」

 それに気付いた煌輝は、耳を真っ赤にしながら声をあげて後ろに下がる。

 そんな女の子みたいな様子がなお愛おしい。

「来月のお小遣いをカットしていいかい? その権限をキミの両親から貰っているんだけど」

「それは本当に困る! ごめん! 勘弁してくれ!」

 俺は平謝りに謝るとベッドから飛び出して、階下へと向かった。


 洗面所に行くと宵子がそこで待っていた。

「おにーちゃん、髪の毛結んでくれる?」

「またかよ、煌輝にしてもらえよ」

「え~、おにーちゃんが結ってくれると嬉しいんだけどな~」

 俺は一つため息を吐くと、宝物でも扱うみたいにその長い黒髪をそっとつまみ上げた。

 宵子の頭上から髪の毛を左右にジグザグに分けていき、こめかみのあたりで左右の髪の毛を色ゴムで結び上げる。

 妹のトレードマークである黒髪ツインテールだ。

「わぁ、やっぱりおにーちゃんって上手いよね! ありがとう!」

「そりゃどういたしまして」

 その髪型であどけなく幼い印象をさらに強くしながらも似合っているのは、さすが我が妹だった。

 自分も洗顔して、学生服に着替え終わる頃には、ダイニングで二人が待っていた。

 宵子もセーラー服を着ている。

 テーブルの上には焼きたてのパンにサラダとソイ・ミート。

 毎朝用意してくれる煌輝には、本当に本当に頭が上がらない。

「「「いただきまーす」」」

 食べ盛りの三人の手が伸びると、食事はあっという間に終わる。

 今日は遅刻せずにすみそうだ。

「「「ごちそうさまでした~」」」


「……はい、接続終了《カット》」

 俺がそう言うと、WWIN(ワールドワイドアイドルネットワーク)が配信終了のサインを受領し、五感のアップロードが停止する。

「……ふう、お疲れ様」

「おにーちゃんもキラちゃんもおつかれ~」

「気になったところをいくつかカットしてアーカイブスに公開しておく。五分後に登校途中から生放送開始な」

「うーん、前世紀末から今世紀初頭のアニメや漫画の”お約束”を幾らか入れてみたけど、もう少し詰める必要があるみたいね」

「でもでも! おにーちゃんにツインテールを結ばれたところ、すっごい好評だったみたい!」

「あ、ほんとだ、いいな~、私も髪の毛伸ばしちゃおうかな?」

 生放送中のチャットをAIが自動的に取捨選択し、精度の高い参考意見を纏めていた。夜になったら再確認しておこう。

「よし、リアルタイム視聴は5万人突破してたぞ、登校中配信であと10%は増やそう」

「了解」

「うん、頑張るよおにーちゃん!」

 俺達は登校中の脚本を再確認し、準備を整えていく。


 ――前世紀末から始まったネットワーク技術の革新は、五感のリアルタイム配信とそれを受け手が再現するまでに至った。

 つまり、先程まで俺が感じていた、宵子の身体の温かさ、乳房の感触、甘い匂い、煌輝の胸の谷間、朝食の美味しさ等を、万人が共感することができるのだ。

 なんでもない朝の日常が、少しの演出と宵子と煌輝という最高の素材を組み合わせるだけで輝いたものに変わる。

 それを、全世界の視聴者に届けるのが俺達《アイドル》の役目だ。

「じゃあ、登校配信開始するぞ、カウント開始!」

 五感が、アップロードされていく――

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[良い点] あはは! ほにほにの世界だー。いいですよね、ほにほに。って、妹かーい! とセルフツッコミしてしまいました。 わ! 最後がすごいですね、演技とはいかなくても受信者を想定した日常だったとは………
[良い点] タイトル。全世界最強無敵アイドルというのが、なんか無闇と暑苦しくて好きです。あえてスマートさを殺したタイトルですね。ところで俺と妹と幼馴染の三人でアイドルしちゃうんでしょうか。俺はふたりを…
[良い点] 『この世界で俺と妹と幼馴染は全世界最強無敵アイドルを目指す!』 読み終わって理解した瞬間、ああ〜なるほど、面白い! と息を吐きました。なるほどすごい、面白い! 外見描写とか世界観とか、説明…
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