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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

母親が結婚することになったのですが、その結婚相手の娘が冒険の『相棒』兼『恋人』でした

作者: 笹 塔五郎

 私の名前はエリカ・シーヴェルズ。

 母は冒険者として高名なティリア・シーヴェルズ――弱冠十五歳にして、冒険者の中でも最高位であるSランクの冒険者となった正真正銘の天才。

 そんな母に拾われて育てられた私は……現在十三歳で冒険者となっている。

 けれど、ランクは母のように高くはない。

 もちろん、十五歳になったらSランクになるとか、そういうレベルの話ではない。

 そもそも、Sランクというのは規格外の存在であり……私は精々Cランクがいいところだろう。

 けれど、そんな私にも一緒に冒険に出る相棒がいる。

 名前はシィル・ウェンデル。彼女とは、冒険者になったばかりの頃に知り合った。

 出会った頃は寡黙でクールな印象を受ける彼女であったけれど、私と同じくらいの年齢の冒険者は結構珍しく……勇気を出して声をかけた。

 それから、一緒に冒険をする機会が増えたのだ。

 森の中で魔物と戦ったり、迷宮で素材を探したり――一緒に生活をするうちに、私は彼女のことを信頼していった。

 そんなある日のこと、私はシィルから告白を受けた。

「エリカのことが好き」、と。

 それは『ライク』ではなく『ラヴ』な感情だという。

 私にはその感情をきちんとは理解できなかったけれど、シィルのことを大切に想っているのは本当だ。

 ……だから、私はシィルと相棒兼恋人という関係になった。

『恋人』になってからは……その言葉をよく意識してしまうようになる。

 シィルのことが本当に好きかどうかなんて、確認する必要もなく――好きであると理解したのだ。

 私とシィルは恋人で、相棒で――そんな生活が、当たり前のようになった頃。


「お母さんね、この人と結婚することにしました」

「よろしく、エリカちゃん」

「……はあ!?」


 ここは私の自宅。私と母は二人とも冒険者をしているから――いや、母の方が特に戻ってくることは少ない。

 Sランクになると、やっぱり色々なところに行くみたいだ。

 そこで出会ったという女性と、結婚するという。


「え、だって……お母さん……?」

「エリカの気持ちも分かるわ。あたしとルネは同性だものね。でも、いい? あたしからエリカに教えられることはね……愛があれば性別なんて関係ないってことよっ!」


 自信満々な表情で、お母さんが言う。

 いや、それは分かっている――言われなくても、というか……私も『女の子の恋人』がいるし。何だったら、今隣にいるし。


「……」


 クールな表情を浮かべているのは、私の相棒で恋人のシィル。

 どうして彼女がここにいるのかって?

 お母さんが連れてきた恋人――名前は、ルネ・ウェンデル。

 隣にいる、シィルの母親だ。

 正直、私がこの場で一番混乱している気がするけれど、この状況は言葉にするとすごくシンプルだ。

 私の母のティリアが、結婚相手を連れてきた。その結婚相手が、私の恋人の母親。

 私と同じ境遇であるということは知っていたけれど……つまり私は今、シィルと『相棒』で『恋人』で『家族』になろうとしている。――こんなことが起こりえるのかと、困惑しているのだ。


「べ、別にお母さんがその人と一緒になることは否定、しないよ?」


 できるわけがない。私もお母さんと同じ考えだし、愛があればどうにだってなると思う。

 そんな気持ちにさせてくれたのは、隣にいるシィルだ。


「そう……理解が早くて助かるわ。実は、こんな気持ちを教えてくれたのも、ここにいるルネなの」

「ふふっ、エリカに想いを伝えても中々届かなくてね」

「でも、一緒に仕事をするうちに、ね? 吊り橋効果っていうのもあるのかしらねー?」


 めっちゃ分かる。分かるけれど、今は違う。

 この状況で、実は私とシィルは面識があると教えるべきだろうか。

 ……お母さんは放任主義で、私が十分に戦える力を持っていると判断したからこそ、冒険者として働くことを許してくれている。

 まだそんなに高い実力はないけれど、十分に仕事は受けられるようになっていた。

 ――私が、誰と一緒に仕事をしていたかまでは、分かっていない。

 いずれはお母さんにも紹介しないと……そう思っていた。

 けれど、紹介する前に、こんな形で顔を合わせることになるとは思わなかった。

 ちらりと、隣に座るシィルに合図を送る。

 今の私と彼女は、テーブルの下で独自の『会話』をできるようにトントンッと太腿あたりを叩く。


『ど、どうしよっか? 私のお母さんとシィルのお母さんが、け、結婚するんだってよ?』

『いいんじゃない?』

『いや、反対ではないんだけど、私とシィルの関係は……?』

『恋人兼家族』

『そ、それもそうだけど、な、何て言えばいいのかな……』


 正直に言えば、ここですぐに伝えるのが恥ずかしい。

 女の子同士で付き合うことに理解をしてもらおうとか、そういうことまで考えていたのに――それすら軽々と凌駕して、お母さんは結婚するなんて言ってきた。

 母親が、私の恋人の母親と結婚する。

 その上で、私とシィルも実は恋人でした――なんていうのは、何かすごく恥ずかしい。

「娘も同じ趣味ってことね!?」とか、ものすごくお母さんは喜びそうだ。

 別にそれが悪いことではないのだけれど……。


『もうちょっと、自然な形で付き合うような雰囲気、出したい』

『自然な雰囲気?』

『そう。今の話だと、これからは一つ屋根の下で、一緒に暮らすわけでしょ? それなら、私とシィルの関係も自然になるかなって……』


 そんな回りくどいことをする必要はない。これは、あくまで私の我儘だ。

 けれど、シィルはすぐに答えてくれる。


『いいよ。自然なやり方で、恋人になるように見せかけるってことだね』

『! そういうこと。理解が早くて助かる!』


 どうやら、シィルも理解してくれたようだ。


「じゃあ、エリカとシィルは今日から姉妹ね。どちらがお姉さんになるのかしら?」

「シィルは冷静に見えて結構幼いところもあるからね」

「そ、それなら、私が――っ!?」


 私が姉になる。そう答えようとしたとき、不意に私の頬に触れて、シィルは私と口付けを交わす。あまりに自然な流れに反応できず、けれど突然のことで――すぐに席を立ちあがる。


「な、ななな……!?」

「まあ……シィルちゃん、大胆ね」

「ほう……」

「わたしの方が姉でいい?」


 キスが上手いから――そんなことを、シィルが言っているような気がした。

 けれど、私はすぐに心の中で叫ぶ。

 この子、全然理解してないんだけどっ!?


 こうして、私は相棒と恋人兼家族になった。

 ついでに、母親も結婚して――もう一人、母親ができた。

 ……なんかよくわからないけれど、とりあえずお母さんが幸せそうなので、私もこれからシィルと幸せになれるように頑張りたいと思う。

女の子同士で百合カップルな二人が、義母同士が結婚することになり義姉妹になるというもう私自身も捻れてるな……と思う百合ファンタジーを書きました!!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] うん、尊い。
[一言] なんというか、すごかった。
[一言] あらあらまあまあ!
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