しめじ三郎 幻想奇談(あと一歩)(444文字小説)
卓士は僚右の葬儀に出席した。
(あまりにも若過ぎる死だ)
まだ三十代で亡くなった親友に哀悼の意を捧げた。
「む?」
その時、背中に視線を感じて振り向くと喪服を着て黒い中折れ帽を目深に被った男がいた。
見覚えのない男だったので、誰なのか思い出そうとしたが、わからず、声をかけようと再び見ると、すでに姿がなかった。
しばらくして、今度はそれ程仲がよかった訳ではないが、中学三年の時に同じクラスだった園子の葬儀があった。
(またいる。という事は、同級生か?)
卓士は謎の喪服の男に気づいた。しかし、男はすぐにいなくなってしまった。
また季節が過ぎて冬になり、今度は高校の同級生だった松子の葬儀に出席した。
(何だか、立て続けに同級生が亡くなったな)
悲しみに浸っている卓士の目の前に喪服の男が不意に現れた。
「よく会いますね。同級生ですか?」
卓士が尋ねると、男は、
「いくら寂しいからといって、ここまで連れて行こうとするのはいけませんよ、卓士さん。そろそろ逝きましょう」
卓士は自分がずっと以前に死んでいたのを思い出した。