異世界に転生してから幾年だろうか
幼児虐待。
真冬の夜。
殴られ、泣き続けたのが原因で、俺は安アパートの寒いベランダへ放り出された。
飢えと寒さと殴られた痛みで泣く事すらままならず、俺はそのまま、己の無力さを呪う事も知らない歳で死んだ。
2歳だった。
神様?光の球「88歳に成長した例である、今のお前はな」
主人公男「・・」
球体「日本に産まれさせた理由があった、・・なのだが・・お前の親は使命を忘れ、欲望に溺れ、悪魔にとり憑かれおった、到底許されぬ、厳罰に処す故、忘れよ」
主人公「・・別に・・」
球体「・・あの親を許すか?」
主人公「・・悪魔にとり憑かれたんだろ?なら・・まあ・・もういいよ、確かに最後のアレは・・人間の目じゃなかった」
球体「忘れるか?」
主人公「忘れるよ (だから早く天国に行かせて)」
球体「面白い、ふふ、ふはははは、珍しい魂だ、希少種だな」
主人公「む、なんだよ」
球体「まあ、そう怒るな、確かにそうだ、お前は間違っていない、 正 し い 判 断 だ 、怒りは未練と同じ、憎しみは未練と同じ、忘れよ、罪を犯された方が自由なのだ、犯した方は死後縛られ、幽閉される」
主人公「・・」
球体「異世界から大きな因果率の一滴が欲しいと要請が来ていたのだ、丁度良かった、異世界では、魔法やら、モンスターが当たり前の世界だ、だが、定期的に人間同士の争いが原因により、文明が滅んでしまう、大規模魔法合戦と、錬金術によって作った爆弾によってな」
主人公「・・」
球体「お前には、世界を導いて貰う」
主人公「・・普通に・・暮らしたい」
球体「仕事を終え、いくらでも永遠にそうするが良い、優秀な仕事をしてくれる因果率を手放す理由はない」
主人公「・・普通に・・天国で・・のんびり暮らしたい」
球体「それは叶わない」
主人公「何で!?」
球体「・・すまん・・」
主人公「謝るくらいなら理由を言ってよ!!」
球体「・・引き渡しの時間だ」
主人公「嫌だ!助けて!仕事なんて嫌だ!楽に暮らしたいんだ!頼むよ!お願いだよお!!もう寒いのは嫌だ!飢えも嫌だ!暴力も嫌だ!無力も嫌だ!暴力を使っていたぶるのも!無関心も!人間が嫌いだあああああああ!!!!・・あ、ああああああ、うわあああああ」
球体「だからこそだ、守り、育て、愛を知れ」
主人公「愛を知る者に世界は愛を示さない!!」
球体「世界が示すのではない、お前が示せ!」
主人公「嫌だ!勝手に死ねば良い!勝手に滅べ!ざまあみろお!」
球体「さらばだ」
主人公「嫌だあああああ!!!!」〈ブツン〉
秋。
極貧の村、ポフリ村。
コンクリートの建物はなく、今年で井戸は荒れ果て、冬を迎えようとしている村である。
《オンギャア、オンギャア、オンギャア》
村人夫「産まれた!?やったああ!!」
村長「・・」 気まずい雰囲気。
数日後。
《オンギャアアア、オンギャアアア》
夫「・・止めろお!!」
母親「お願いしますう!ああああ、止めてえ、助けてあげてええ、あ、あああああ」
井戸の上、片手で足を持たれぶら下がり。
竜神様への供物だ。
口減らしの意味の方が大きいが。
村長「・・やれ!」
村人1「・・」離した。
両親『!!!!』
母親「アルニオン!!」
両親は絶望し、暫く落ち込んでいたが、この村でしか生きていく事は出来ないと、3日目には立ち直り、また畑仕事に精を出していた。
落とされた日。
〈パ、ヒュウーーー・・ボニュン、コポポポポ〉
水の女神の化身、水竜神が水でくるみ、受け止めた。
水竜神「あなたが羨ましいわあ・・私も異世界へ行きたいわ」
アルニオン「オンギャアアア、オンギャア、オン・・すー、すー」
魔術で眠る。
水竜神「アルニオンかあ、子羊・・良い名前ね・・アルニオン」
アルニオン「すー、すー」
水竜神「私にはあなたを育てられない、気づいたら ま た ここに居た・・この村が汚いモノを投げ入れるから、私はここを去ったのに・・いつの間にか綺麗になってるし・・仕方ない、またここに居着くしかないようだわ、さあ、行きなさい、神の子羊よ、私達精霊が再び人間を愛せる世界にして頂戴、さあ・・」
アルニオン「すー、すー」〈コポコポ〉水嵩が増して行く。
井戸は2つ。
一つは村の中に。
もう一つは村外れの 上 流 に。
風下だった為、死体置き場には丁度良かったのだ。
母親「アルニオン・・」
父親「もう、過ぎた事だ・・忘れなさい、体に良くない」
母親「う、ううう、神様・・あ、ああああ、どうして・・」
父親「忘れるんだ、俺だって辛い」
村人5「大変だあ!!川が!川があ!!水が!水があ!!」
両親『!?』
水の出所を探す村人達。
そこで目にした。
村長「こ、こりゃあ一体・・」
井戸から大量に涌き出る水の上に水汲み桶が回りながら浮いている。
桶の中にはアルニオンがすやすや眠る。
村長「か、神の子じゃ!!神の子じゃあああ!!」
村人1「そ、そんな・・俺は・・村長の命令で・・そんな・・」
村人2「これで食料と水を交換出来る!街に行って水を食べ物と交換出来る!!今はどこも水不足だ!助かったんだああ、俺達は助かったんだああ!!」
村人達『うおおおおおおおお!!!!』
疲れた母親が夫に支えられながら歩いて来た。
母親「アルニオン・・アルニオン!!」 桶の中へ手を伸ばす。
村長「カミエラ!この子は神の使いじゃ!ようやった!村自慢の女じゃ!ようやった!ようやった!がはははははは!」
カミエラ「・・キ!神の使い?知りません!この子はアルニオン!私が命を掛けて産み落とした子です!神なんて知りません!!」
村長「な、なんじゃい!?神を冒涜する気か!?この罰あたりが!!呪われるぞ!!」
父親「神の子供を産んだ女ですよ?村長、私達を無下に扱えば、あなたこそ神の天罰が下るでしょう」
村長「!?な、なんじゃと!?」
村人達『ザワザワ・・確かに・・そうだよな・・』
村長「 (ま、まずい・・この状況は・・) 」
父親「神の子の父親として命じます、あなたの家を調べさせて下さい、噂だと、食料を蓄えているそうじゃありませんか?」
村長「な、何を馬鹿な!?」
父親「馬鹿な戯れ言ならば別に構わないですよね?」
村長「ならん!許さん!なんだ貴様は!わしを誰だと思っておる!」
父親「皆さん、どうします?神の子の父親、私がこの人の悪事を暴くのを手伝ってくれませんか?」
村人達『ザワザワ・・どうする?、どうするったっておめえ・・、でも確かにそんな噂あるよな、探すか?、やるか?、神の使いの父親が言うんだ、正義に違いねえ、ザワザワ』
村長「 (ぐおお、まずい、まずい、まずい、まずいい) 」
父親「村長、あなたはお終いですよ、観念してください」冷酷な目。
村長「・・く、くう・・た、頼む・・わしの家族だけは・・家族は、分けてやろうと言っていたんじゃ」 膝で座り、膝ですり寄る。
父親「知りませんね、それでも結局は一家で独り占めしてたんですから同罪ですよ」 冷酷な目。
カミエラ「あ、あなた?」
父親「大丈夫だよ」笑顔。
カミエラ「〈ゾク〉」
村長「た、頼む!!わしだけ!わしだけ罰してくれ!!わしが家族に命令してたんじゃ!!わしだけ悪いんじゃ!!わしだけ!わしだけ!わしだけえぇあああぁ、あ、あ、ああうあああ」
村人6「な、なあ・・も、もう良いんじゃないか?水は戻ったんだし、皆腹が減ってるんだ、そのせいで苛立ってるんだよ、まずは水をたらふく飲もう?な?」
父親「駄目だ、神は天罰をお望みだ」 木の太い枝を拾う。
村人達『ザワザワ』
カミエラ「・・あなた?ま、まさか・・」
父親「君を、いや、君だけじゃないこの村人全員の苦しみを平然と見ていただけじゃ飽き足らず、赤ん坊まで・・沢山苦しめたこいつは沢山苦しむべきなんだ、天罰を下すべきなんだよ」 振り上げる。
村長「・・わしだけ・・わしだけだと約束してくれ、頼む」
父親「駄目だね、お前の家族は皆殺しだ、神がお怒りなんだよ、解るだろ?」〈ガン!ゴン!ドボ!〉何度も振り降ろす。
カミエラ「止めてえ!」村長を庇う。
父親「どけえ!」
村長「あ・・あ・・」 頭から酷い出血。
カミエラ「あなたまで地獄に堕ちちゃううう、う、うう」 庇ったままうつ伏せ。
父親「こいつを殺す事は神のお導きだ!私達が味わった苦みを!こいつにも味合わせてやるんだあ!どいてくれ!私達が泣いて懇願した時、こいつは助けたか!?いいや!自分だけ食料を確保しておき、赤ん坊を落とさせた!屑だ!人間じゃないんだよ!そこをどけえ!」
村人達『ザワザワ、そうだ!殺せ!やっちまえ!自業自得だ!殺せ、殺せ、殺せ、殺せ!』
カミエラ「せっかく・・皆が助かるのに・・助かったのに・・殺す必要なんてないでしょう?お願いだから、復讐なんて止めて、生きようよぅ、水を飲んで、食べ物を食べて、笑って、生きようよぅ、笑って・・生きようよぅ、う、うううう、血は見たくないよぅ・・これ以上・・もういっぱいだよぅ・・助けてあげて・・可哀想だよぅ・・助けてあげてよぅ、あ、ああああああ」
父親「・・駄目
アルニオン「・・ああ、うう・・あきゃう?あぶぶ〈ヒュイイイン〉」 緑色の澄んだ光が沢山舞う。
カミエラ「あ、アルニオン?」
皆『!?』
アルニオン「あぶぶ〈ヒュイイイン、ヒュイイイン〉」
村長の怪我。
村長「お、おおおお」 〈シュオオオ〉完治。
村人達『ザワザワ、おい、これって、ヒール?馬鹿高いあの治癒士の?許されたって事か?、知らねえよ、でもよお・・ザワザワ』
村長「ありがとうございますう、う、う、うううう、すびばぜんべじだ、ああうう、うううう、怖かったんです、怖かったんですう、せめて、せめて家だけでも助けてやりたかった、助けてやりたかったんですうう・・う、うああああああ」
カミエラ「もう良いのです、私達は助かったんですから、もう良いのですよ〈ニッコリ〉」
村長「 (て、天使だ、天使様だ)」
父親「俺は許さないぞ!お前は今日から普通の農民だ、村長の座を渡せ、いいな!?」
母親「キ!あなた!?」〈ツカツカ〉
父親「な、なんだよ、こいつが村長のままならまた何をしでかすか〈パアアアン!〉ぶへら!?」 ビンタ。
カミエラ「黙りなさい!目を覚ましなさい!神の子の父親だからこそ、欲を捨てて、皆さんに使えなさい!偉い人は偉そうにしてはいけません!あなたが以前私に言った言葉ではありませんか!自分で言った言葉さえ、忘れたんですか!忘れたならもう、良いです、あなたとは別れます!」
父親「そ、そんな馬鹿な・・、君だって憎んでたじゃないか!?」
カミエラ「もう許しました、だからもう良いの」
父親「馬鹿な!?あんな残酷な事をされて許せる筈が・・やっと復讐出来るのに?ははは、その権利を捨てるって?」
カミエラ「私には地獄は似合わない」 凛と立つ。
父親「・・」
カミエラ「・・」
父親「・・はあ・・分かった、分かったよ・・君と別れるなんて考えられない・・復讐はしたいけど〈ギロ〉我慢するよ」
村長「ひい」
カミエラ「ほ、解ってくれて嬉しいわ、さあ、皆さん、水を沢山飲んで、いっぱい汲んで、街に行きましょう!!」
皆『うおおおおおおおお!!』
その後、村長一家は村人達から許され、また引き続き村長をやる事になった。
村長の家訓として、この話を伝承する事が条件になったが。
領主「街に売りに来た?水が涌き出ただと!?村?何処だ!何処の村だ!?」
その後。
アルニオンは奇跡の子供として両親と共に領主の家に住んだ。
アルニオンが移り住んで翌朝。
領主の裏庭にある井戸に水が復活。
産まれた村では今でもこんこんと水が涌き出ている。
一週間後には街の井戸という井戸に水が涌き出た。
井戸からいきなり溢れ出てきたこんこんとした水は、大規模工事を余儀無くさせ、街中に水路が建設された。
1年後。
乾いた街、ウプラゼンタールは、水の都となった。
幾年が過ぎた。
アルニオン18歳。
黒髪ボサボサの天パ。
色白、中肉、瞳の色は黒と茶色、格好はスーツに白衣姿。
お洒落にこだわる紳士。
黒のスーツは赤い裏地、金色のドラゴンの装飾の数々、様々な魔法附与が重ねられ、ハイテク仕様となっている。
あらゆる魔法無効化、つまり、自分以外の支援魔法、回復魔法までも無効化、自分の魔力での支援、回復魔法を附与出来る仕様。
そして附与している魔法。
魔法無効化。
外傷ダメージ無効化。
温度、湿度変化キープ。
外気温による環境ダメージ無効化。
水、汚れ等、外環境付着無効化。
垢、涎、体毛、細菌による内環境による付着無効化。
靴下にも同じ仕様。
靴仕様説明。
黒のお洒落なブーツ。
スライム能力。
靴自体が考え、主人に対し最も良いとする形、内外環境を作る。
例えば濡れた石の上を歩く時は吸盤みたいになる。
ネクタイ。
スライム能力、様々な柄、質感に変化させる事が出来る。
意思は持たないが、魔力で剣になる。ただし、勇者の剣より強度は劣る。
眼鏡を掛けている、この眼鏡にはデータ蓄積、分析魔法が附与されており、様々な魔法解析、トラップ、呪い、道具、魔道具、アイテム、素材、遺跡の古代語翻訳機能を持つ、しかも本人にしか情報は見えない。
モンスターの名前はこの眼鏡で見えるが、相手の名前は見えない。
ステータスは見えるが、使える魔法、呪い、攻撃手段までは見えない。
使われて初めて分析、解読、出来き、威力、能力が解る。
懐中時計。
時間を30秒戻す事が出来る。
銀の投げナイフ8本。
とにかく良く切れる。
普段はチョッキに忍ばせている。
コート。
頭、顔フード付き、足首まである長さ。
スライム能力。
スーツと同じ仕様。
自身の為というよりは訳あり連れが出来た時や、誰かを庇う想定の為、もしくは自身が世間から身を隠す為に開発。
念の為、もう2着持つ。
皮袋。
水筒である。
見た目はしぼんでいて、重さもなく、水は入っていないように見えるが、実際には無限に水が湧き出る。蓋はダイヤル式になっており、ひねる幅により出てくる水量を調整出来る。
白手袋。
スーツと同じ仕様。
スライム能力。
腰ベルト。
幅が広く色んなモノをブラブラさせず、引っ掛ける事が出来る。
手持ち道具はこれだけ。
能力の説明。
異空間能力と異空間位置附与能力。
異空間能力は大規模収納。
そこでは何故か整理整頓され続け、適当に放り込もうが、大量に水を吸い込もうが、要らないモノと要るモノに分けられ、それぞれ自動で整頓される。
アルニオンが取り出すイメージをすれば、勝手にポンと出てくる。在庫は眼鏡では見れないが、在庫を知りたい時は自身で見に行くしかない。
生き物も収納出来るが、暴れたり、毒液を撒き散らす生き物は勝手にケースに入れられ、飼育される。
異空間の内装は巨大な美術館、水族館、動物園、図書館のエリアに別れる。
異空間の中でも能力は使える。
これは附与の外ではなく、内にも附与出来る能力のおかげと思われる。
アルニオンはこれを重複附与寄生能力と呼んでいる。
異空間位置附与能力とは。
例えば空気中の埃に異空間を附与し、異空間に居る間も移動する事が出来る。
動物催眠能力を使い、鳥に異空間位置を附与した後に異空間を開き、入り、閉じる。
閉じた後、移動は鳥に任せる事が出来る。
動物催眠能力とは別の能力、感覚同調。
動物の視界だけは勿論、感覚全てまでも同調する事が出来る。
これにより、鳥が感じている視界、音、匂いまで解る。
痛み、苦しみだけを同調カットも可能。
異空間で寛ぎながら、移動し、様々な旅トラブルにも対応出来るという訳だ。
アルニオンはこの旅魔術仕様セットを5歳でノートに書き、13歳で手作りで完成させた。
そして。
18歳になり、誕生パーティーが行われた深夜。
幼馴染みである美人の女性とも何事もなくおやすみなさいと手を振り、新月の中山奥へ。
洞窟の隠し部屋に入り、異空間へ。
魔術セットに着替え、洞窟から出て、滝の上へ来た。
天然パーマの眼鏡色白イケメン紳士の黒衣姿。
アルニオン「・・何で・・何でか思い出した・・全部思い出した・・何で魔術セットなんか作りたかったのか・・何で小さな頃から魔術が使えたのか・・俺は・・転生者・・もうすぐ魔法大戦と、錬金術爆弾で終わるこの世界を救う為に連れて来られた者・・ああ、何で思い出した?ふかかかか、無駄か、どうせ思い出す事さえも、全部仕組まれてたんだ」
《ザパアアアアアアア!!》滝から巨大な竜が現れた。
竜神「確かに、記憶は仕組まれたモノだったのでしょう、しかし、準備や、あなたの努力は!断じて!仕組まれたモノなんかではない!」
アルニオン「・・だ、誰?」
竜神「井戸の話は?」
アルニオン「あ、ああ、それなら聞いてる、俺が捨てられた井戸から水が・・」
竜神「私が演出したのです、あなたと、領主が、国王から目をつけられぬよう、色々手を尽くしたのですよ?領主にあなたの事を国王に内密にするように夢で忠告もしました」
アルニオン「そうだったのか、でも何で?」
竜神「私は・・何度も、この星の地下に潜った時期があります、かれこれ・・3万回は越えるでしょうか・・この数はね、地上が焼き付くされた数なのですよ、人間達による戦争とやらでね、まあ、姿形はその度に違いますが、だいたい同じような形ですがね」
アルニオン「・・だから?」
竜神「あなたが作る世界で、人間のこの先を見てみたいのです、いつもいつも先に行く前に自滅してしまうのでね」
アルニオン「思い出す前は、人間も結構好きだった、でも今は・・嫌いだ、吐き気がする」
竜神「好きになさい、あなたが任された世界なのですから」
《ザボオオオオオオオオオ》 滝に消えた。
アルニオン「・・勝手だな、まあ、異空間で一人不老不死ってのもなあ・・うーん・・仕方ない、取り敢えず、俺が思い出す前までは、普通の家族だったんだ・・あの家族が・・焼ける姿なんて・・見たくないなあ・・」 〈ヒイン〉眼鏡に新月の月が映る。
新月に手を伸ばす。
アルニオン「大量の綺麗な真水と、グランドクロスの新月が揃う3分前、よし」あらゆる薬品、素材を混ぜた液体が入ったバケツを滝に落とす。
滝壺が黒く染まる。
魚達が大量に死んでいく。
アルニオン「・・ごめんな〈バババババ》」腕、指で印を結ぶ。
アルニオン「星の運航に合わせ、魔術展開!ソウリア!ハマバリア!ナリイヤシサリアハビイリタリア!」《ブン!》
小さな魔方陣が頭上北方向に現れた。
アルニオン「我に永遠の時を与えた前!ここに宇宙との契約を結ぶ!我の名は、アルニオン・シルトクル!」《ブン》二個目が北方向へ現れた、今度は少し大きい。
アルニオン「・・予約しといただろ?ま、予約したのは、俺じゃないがな!」《カ!》強烈な赤い光。
《ボ》 3個目。
《ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ》 少しずつ大きくなりながら魔方陣が次々展開。
惑星の外まで暫く続く。
アルニオン「時間だ、母さん、父さん、皆・・バイバイ」完全に新月となった。
巨大なグランドクロスが揃った。
《ー・・》 グランドクロスの一番北側で星が一つ死んだ。
《ーー・・・・ゥゥゥウオン!!!!》
魔力波動が星々を伝い、一気に展開している魔方陣へ、漏斗のように入って行く。
青白い光が宇宙から一気に来た。
アルニオン「来いやボケえ!!魔術式525展開!」《カチカチカチカチカチカチカチカチ》
全身に細かく歯車のような魔方陣が現れた。
それを補うようにまた大きな魔方陣が。
またそれを補うように、またそれを補うように現れた。
半径20mに歯車だらけの大量の魔方陣展開。
アルニオン「《カチカチカチカチカチカチカチカチ》オペ開始!細胞一つ一つの原子核解放! 記 録 せ よ !《ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ》ぐ、ぐくくくおおおおお、オオオオオオオオオオオオ!!!!」目から出血。
耳から、鼻から、口から、尻から、ペニスから、毛穴から。
滝から大量の水が逆流し、血液として輸血され続ける。
アルニオン「おおらあああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
《バキャン、パキパキ》アルニオンの周りの歯車達がどんどん壊れていく。
アルニオン「うぐぎぐ (強制術式終了・・!)」《フッ》宇宙にあった全ての魔方陣が消え、これ以上アルニオンに流れないようになった。
アルニオン「ぐ、《パキン、バキバキ、カチカチカチカチカチカチカチカチ》まだ・・だ・・まだ輸血が終わって・・な・・《ドサア》《カチカチカチカチカガシャアアアアパラパラ・・》(しっぱ・・いか・・く・そ・・)」
気絶。
滝は逆流から元へ戻った為、一気に水嵩が増し、鉄砲水へ。
流されー。
水竜神「やれやれ、随分汚してくれたわね」口に咥え、何処かへ行った。
各国の、それぞれの勇者一向は魔王の魔術本と、研究資料、魔道具を求め、それを持ち帰り、国王へ献上する事で得られる『安泰』を欲し、旅をしているのが現実であった。
当然である。
いくら世界最強だろうが、人々が作る調味料、服、宿屋、毛布、米、野菜、果物、薬、デザインされた家具、これらが無くては最強である意味がないのだから。
無力な人々に慕われ、憧れられてこその、肉欲、食欲、睡眠欲なのだから。
その『安泰』という名の究極の贅沢をする為に、勇者らは血眼になりながらレベルアップを目指して今日も魔物を狩り、魔族を犯し、宝を強奪していた。
一方、その頃、手紙を残し行方不明となったアルニオンを探し、無理をした為、母親は病に倒れ、そのまま亡くなった。
山狩りも行われたが、アルニオンは見つからなかった。
3か月後。
アルニオンは魔族の森に居た。
大きな葉の上に浮いていた所をサキュバスの娘達が拾ったのだ。
魔族の目は魔力パラメーターを見れる。
獲物や、外的の強さを見定める事は必須だからだ。
アルニオンの用量は図れない。
ご馳走だとサキュバス達は騒いだ。
しかし、血が足りず精気が全くない為、勿体無いという話し合いの結果となり、飼う事になった。
ストレスも味に影響する為、大きい部屋に魔術結界を張り、男の回復を待った。
サキュバス1「人間って人間食べないよね?」
サキュバス2「じゃ、人間が食ってる魔物と、果物、野菜と、あと牛のおっぱい!さあさあ!皆!魔力溢れる精子は美味しいぞう!頑張ろう!」
サキュバス達『おー!キャッキャ』
最初は口移しで食事を与えた。
5日後には自力で起き上がり、口移しを断固拒否された為、仕方なく無理やり口移しで食べさせた。
魔族は腕力が強い。
抵抗は無駄だった。
ある日、我慢出来ず、夜這いに来たサキュバスと、それを止めに来たサキュバスで殺し合いが発生した。
結果は夜這いサキュバスの勝利だったが、精気を吸う前に死んだ。
相討ちだった。
この事があってから、サキュバス達からアルニオンに提案があった。
絶対に死なせないから、私達の餌を定期的にくれないか?というものだ。
1日は絶対休ませるからという申し出だった。
アルニオンは困った。
そして考えた挙げ句に出した結論は。
餌としてなら良い、ただし、男として見たら出ていく、君達には命の恩があるし、何より毎晩男の脱け殻を解体してるのを見るのは嫌だと言った。
サキュバス達は大層喜んだ。
アルニオンの精子数滴で大抵のサキュバスはお腹が膨れるのだ。
サキュバス達を餓えから救った英雄だった。
出す時はサキュバスの幻覚は効かない為、サキュバス達のオナニーを見ながら自分の手で、試験管へ、ドラゴンのミルクと一緒に木の小枝を入れ、魔石冷凍庫に精子アイスを保管。
そして体の回復に重きをおき、現在に至る。
サキュバス1「ねえ、一週間後から10日間どうする?」
サキュバス2「受胎期間始まっちゃうねー」
サキュバス3「あたし耐えられる自信ないよー」
サキュバス4「あたしもー、こればかりは本能だしねー」
サキュバス5「人間は万年発情期だけど、私達は10日間しか本当は発情しないんだよね」
サキュバス6「食欲と性欲は別だよね」
サキュバス7「そだよ、別だよー」
サキュバス8「でも男として見たら出ていくって・・」
サキュバス9「押さえつけて吸い付くしちゃう?」
サキュバス10「お腹破裂したいの?あんた馬鹿?」
サキュバス11「子宮から取り込むって意味よ、ね?」
サキュバス9「そうだよん!」
サキュバス12「あたし絶対無理、前期の10日間は売春宿で孕むまで腰振りまくったもん」
サキュバス13「あたしもー」
アルニオン「嫌な会話だなおい」 虫に同調中。
アルニオン「潮時・・か・・、まあ、命の恩はあのでかい冷凍庫の中身で返したという事で」
魔法が効かない特異体質という以外には技術は知られなかった。
アルニオン「感知、あった、逆テレポート」《ポン》スーツを呼び出し、クリーンしてから着替える。
アルニオン「ふう、よし、準備完了、どれも捨てないでくれて良かった、銀ナイフは人間の解体に使われたけど・・あれもこれもベタベタする、血や油だろこれ、クリーン、《シュオオ》」
全身一気に綺麗になった。
《バサア》コートを羽織る。
アルニオン「探知、お、いたいた、逆テレポート〈ヒュン〉」
梟みたいな夜行性の鳥。
アルニオン「催眠、同調、異空間附与、解、〈ブワン〉〈ブワン〉」消えた。
梟「へー、へー、へーー〈ハサハサハサハサ〉」 ほぼ無音で飛び立った。
手紙を読んだサキュバス達は激怒し、鬼の形相で探しまくったが、見つからなかった。
しかし、まだまた大量にある不思議な精子アイスを一口舐めたらお腹いっぱいになれたので、直ぐに機嫌が治った。
手紙〈命の恩は冷凍庫で返した、また無くなった頃に来てやるから、それまでは人間食うの禁止な、孕む欲求は人間よりよっぽど健全だと思うぜ?人間の雄も喜ぶだろうし、でも食べるのは禁止な、またな、お世話になりました〉
サキュバスリーダー「うふふ、楽しみだわ、次こそは逃がさない・・・・絶対にあんたの子供を孕んでやるんだからねふふ、フフフフフフフ」
異空間の中。
ふかふかの豪華な椅子、机、青い空、図書館のテラス。
アルニオン「ヘッキシ!あれ?風邪ひかない筈だが・・?〈ズズズ〉」 ココアと同じ味のココクという飲み物を飲む。
3日後。
梟から少し大きい、いや、だいぶ大きい鳥に附与を移した。
クルルと鳴くから、クルルという通称のダチョウみたいな鳥に異空間附与し、行商人の荷物持ちをしながら旅をしていた。
異空間の中ではモノは腐らない。
大量の食料と見えない家政婦?のおかげで、少し太ってきた。
だが。
アルニオン「脂肪エネルギーを魔力に還元、魔術オペ開始 《カチカチカチカチカチカチカチカチ》《カチリ》・・オペ終了」
アルニオン「体重確認・・」 眼鏡に映る情報。
アルニオン「ふむ、減らし過ぎたか・・まあ、良いか」再び読書開始。
ダイエット完了。
ダイエット期間9秒。
行商人について回る事で様々な噂や、事実までが耳に入る。
やはりダチョ、チョコ、・・クルルに附与して正解だったと思うアルニオンであった。
勇者達の活躍により魔物達の住む所が減り、人間が大っぴらに歩けるようになった事、魔族の奴隷が増えて人間の利益が増えた事、人間の性処理道具が増えた事、奴隷契約魔術の施行の法律整備、その内容は、魔族に必ず奴隷契約を施さなくてはならない、だ。
怒りでどうにかなりそうだ。
好きで魔族に産まれた訳じゃないのに。
アルニオン「なるほど、つまりこういう事か、人間が増え過ぎたから、住む場所が足りなくなり、土地を強奪し続けるしかなく、魔族達は何もしていないのに、土地を追われ、殺され、奴隷にされ、宝を奪われ、家族を奪われる・・・・ふう・・・・魔族も全く何もしていない団体が居ない訳じゃないが、極極一部だ、それなのに・・」
クルル女商人「全く酷い話よね、ね?リンミ?お前は可愛いなあ!ん~このこの~うりうり~」
クルルの顔を巨乳でうりうりする。
アルニオン「いや、ほら、だって、ほら、噂話聞かないと、ああ!見えて!うぐほ!頬っぺたがクニクニする!や、止めてえ!止めてえ!もっと止めてえ!」
女商人が盗賊に襲われそうな時も、オークの群れに遭遇しそうな時も、 事 前 に 処 理 し た。
おかげで女商人は一人で気ままに旅をし続ける事が出来た。
噂を聞くのが上手いというのも、寄生している理由だったが、それ以上に。
女商人「あんたら!弱い者いじめは止めな!があっはっは!」
アルニオンにとって、清々しい女性だった。
風邪の向くまま、気の向くままに。
旅商人。
アルニオン「いつか俺も旅商人してみたいなあ、出来れば、この人と一緒に・・まあ、ある意味でやばいストーカーだよな、これ
、・・いやいや違うから、絶対違うから、今目の前で水浴びしてるけど全然違うから、まじで違うから、見てないから、全然見てないから、日焼けしてきたな・・見てないから!」
あっという間に一年が過ぎた。
そろそろ食糧庫と、土トイレットペーパーが無くなってきた。
トイレットペーパーは無駄遣いはしなかった。
決してしなかった。
無駄にはしなかった。
決して (意味深)。
だから無くなってきた。
焦ってきた。
お金を作るには、モンスターやら、素材を集めなくてはならない、そうなれば、このクルルからは出なくてはならない。
つまりそれは女商人との別れを意味する。
仕方なく附与を外し、女商人にマーカーをつけた。
女商人の精神にほんの少しだけマーキング。
位置、考えている事が解るようになった。
危なくなれば、丁度通り掛かった通行人を装い、助けてやろう、そんなつもりー。
だったのだが。
一年と三ヶ月後。
山の谷の道を根城にする盗賊団に遭遇。
麻酔吹き矢を撃たれ、捕まりそうな所を、〈シュパ〉現れ〈シュパ〉連れて消えた。
近くの森の大きな木の枝の上に現れた。
女商人「あ、あれ?あんた誰だい?テレポートって魔石?高いのに?何者?」
アルニオン「悪い場所探すのめんどくさ、全ての異常を探知、解析」 女商人の周りに小さな歯車が現れた。
女商人「ひゃ!?な、何コレ?」
アルニオン「乳癌に、麻痺毒・・肝臓、すい臓に癌、全て除去完了、矢の外傷、ヒール《シュパン》完治、術式完了」《カシャアアアア》歯車が崩れ無くなった。
アルニオン「大丈夫、ここに居て、直ぐ戻るから〈シュパ〉」
女商人「はあ?ちょ!?・・ったく、あんなのよ!?」
〈シュパ〉
盗賊長「うお!?また現れやがった!」
盗賊1「頭あ!こいつテレポートの石を大量に持ってますぜ!売れば暫く遊んで暮らせまさあ!」
盗賊2「でもよ?あんで戻って来たんだ?」
アルニオン「探知〈ヒーン〉」 半径10キロ。
アルニオン「近くに根城があるのか、根城の数は三」
盗賊達の顔色が一気に変わる。
盗賊長「あ!? (馬鹿な!?探知魔法対策避けに狩場は3キロ離してあんだぞ?)あんだてめえ!?何者んだ!」
アルニオン「数は87人、か」
盗賊長「 (こいつ!!) てめえら!様子伺うな!先手必勝だ!やっちま〈ボフ!〉 矢の形をした風が頭を抉った。
《ボボボボボボボボボボ》盗賊長が殺られたと同時に次々と矢が木々を抜け、空から降ってくる。
盗賊団の根城にも矢はトマホークのように飛んで行く。
洞窟内に逃げる若い女盗賊。
しかし、《ヒュンヒュン》 石の隙間を抜け、抜け、追い付く無数の矢。
女盗賊「何で!?何でえ!助けて!助け《ボボ》胴体が千切れた。
半径10キロ以内のマーキングした盗賊団、全員死亡を確認。
アルニオン「先手必勝?ああ、勿論良い判断だ」
〈シュパ〉
女商人「うああ!?びっくりするなあもう!」
アルニオン「あ、ごめん、ニータ、さん」
ニータ「は?何でうちの名前知ってんの?は?誰?いや、つかさっきのテレポート使う時さ、石を使う素振りしてないっつか、さっきの歯車なに?完治って何?あたし病気だった?つか何者?誰?」
アルニオン「ぷ!ふかかかか!質問が一周したし、ふかかかか!かかかかかか!」
女商人「・・あ?」
1時間後。
アルニオン「・・・・」 土下座。
女商人「なるほど?つまり、あんたはド変態のストーカーで?究極の変態で、あたしにべた惚れの陰湿極まった究極の糞変態ストーカーで、ストーカーな訳ね?」
アルニオン「・・ぐうも出ません、すみませんっした」ノーダメージ。
ニータ「手、足、痛いなあ、剣も凄い痛んだなあ、あーあ!ああ~あ~?」
アルニオン「すいません」
ニータ「ち!鉄壁防御とか、まじずるいなあ?あーあー?」
アルニオン「すいません」
ニータ「ち!謝るならまずは鉄壁解けよ?ああ?こら?おお?」
アルニオン「いや・・それは無理っす、宇宙との契約なんで、同じ規模の契約者でないと、それは・・すいません」
ニータ「んな事どうでもいいんだよコラあ?要わあ、私のオナニーとか、裸とか全部、全部見たって事だコラあ!!」
アルニオン「はい、すいませんでした」〈ズザア〉バック土下座。
ニータ「お前も見せろ!」
アルニオン「へ?」
ニータ「お前も見せろってんだよ!!ボケえ!!糞があ!」
アルニオン「は、はい!!」起立。
ニータ「!?・・よ、ようし・・じゃ、ごほん、全部脱げえコラあ!」
アルニオン「はいい」脱いだ。
ニータ「へ、へー、こうなってんだ、うへへ〈ニギニギ〉ど、どう?」
アルニオン「・・う、うう・・〈ムクムク〉」
ニータ「お!へへへ、おいおい、興奮してんのか?ば、馬鹿じゃねえの?はあ?馬鹿じゃねえの?こんな男女に触られたくらいで、やっぱりとんだド変態ストーカーだな!?」
アルニオン「・・か、可愛いです!」
ニータ「あ?」
アルニオン「ニータさんは可愛いし、綺麗だし、性格も気持ちいいくらい清々しいし、正直タイプ過ぎました!だからストーカーしてました!すいませんでした!」
ニータ「 」
二人はそれから色んな場所を共に巡った。
そして、アルニオンが守り、素材を集め、医者まがいな事をやり、ニータが接客をした。
こんな日々がずっと続けば良いなと思っていた。
幾年が流れた。
ニータは死んだ。
即死レベルの毒を飲まされたのだ。
犯人は治癒教会が雇った暗殺者だった。
即死レベルの毒だった。
生き物としてマーキングしていた為、マーキングがいきなり消えた。
テレポートは一回行った場所、把握した場所しか飛べなかった。逆テレポートは近くしか出来ない、その時はお互い買い物で、ニータは女の友人と買い物に行っていた。
時戻しは30秒前までしか出来ない。
マーキングが消え、マーキングが消えた辺りを探知、自身をテレポート、出来ない、自身は初めての街だった。
仕方なく、空へテレポート、視界に納めながらテレポート連続、視界に人混みを確認、テレポート。
逆テレポート。腕に抱き締め、ニータを時戻し。
生き返らない。
もう一度時戻し。
生き返らない。
何十回と繰返した。
生き返らない。
叫びながら、薬師の草原と呼ばれている場所へテレポート。
死んだ場所から500キロ離れた、風が気持ちいい高原の家。
アルニオンは不老、18歳のまま。
ニータは45歳になったばかりだった。
それでも、愛していた。
アルニオン「寿命で死ぬべきだった、あなたは・・寿命で・・う、ううう・・うあああああ、うあああああああ」
3日3晩泣き続けた。
治癒教会を壊滅させれば、余計な死者が増える。
それくらい、解っていた。
アルニオン「誰も悪くない、全部俺のせいだ・・俺が・・世界を放っておいたから・・俺が怠けたから・・せめて・・君が寿命で・・し・・死んでからだって・・それからでも遅くないって・・う、うう・・ごめん、ごめんよおお、お、おお、おおおお」
ニータは腐れが進み、酷い悪臭が漂っていた。
もう、クリーンする物理的意味もなさない。
アルニオン「・・ごめん、けど、君のおかげだ、寄り道、楽しかった、ありがとう」
アルニオン「・・」 下がり、魔力を込める。
アルニオン「燃えよ、骨も遺すな、塵となるまで!!《ブボオオオオオオ》」
骨を遺すとスケルトンになる確率が残る。
戦争の為の『資材の宝庫となり得る』家と共に憂いを払うアルニオン。
燃え、高原の風に塵になって消えて行った。
ニータ、享年45歳、死因服毒による殺人。
犯人、『世界』
アルニオン「ごめん、そして・・さよなら」〈シュパ〉 テレポート。
世界中を巻き込む大規模宇宙魔法をして、世界を滅ぼそうとしている悪の魔王よりも悪い悪い極悪人が大砂漠、ペロテルサにお城を建てて住んでいるらしい。
そんな噂があらゆる国に伝えられた。
魔王「我はそんな事望んでおらん!誰だそんな噂を流しておるのは!このままでは本当に戦争になり得るではないか!」
この世界は大小の896ヵ国からなる。
地球の3倍の大きさ。
その国々を隅々まで巡り、王家の事情を全て把握していった。
王家のそれぞれの思惑と、悪い動物と良い動物の膨大な『資料』を振り分ける作業。
この資料は魔術強制契約書。
この資料を燃やすと相手も死ぬ。
死因は書いておくとその通りになる。
契約の方法は相手の顔と名前を知る事。
それだけである。
パズルのピースを繋ぎ会わせる作業。
勝たせたい国を順調に勝たせていく。
地球な砂漠の260倍の広さの砂漠のど真ん中には流石に軍隊は来れなかった。
この砂漠には超巨大な地竜が住んでいるし、様々な魚みたいな生き物達の宝庫だ。
砂の海に『浮かぶ』お城には誰も近づけない。
勝たせてあげたい人物を勝たせて行くと、大抵は欲望に溺れた。
しかし、そんな国王の下には優秀な人物がついており、国王候補が常にいる為、国王を遠慮なく殺した。
そうこうする内に国々は和平交渉を進めて行く。
大きく分けて4つの勢力まで絞られてきた。
主に資本主義、社会主義、資本社会主義、そして、魔法自立思考装置を首相に据えた、評議会を国民からの投票で決め、お金が無い国。
アルニオンは個人的にお金が無い国に興味津々だ。
よくよく『観察』すると、お金はなく、食べ物、飲み物は全て無料。
病院、無料。
学校無料。
何もかもが無料。
例外はない。
では人々は何を目標に頑張るのか?
答えは人から感謝されたい、ただそれだけだった。
それだけの為に、汗を流して働いていた。
自分達の仕事を待つ人が居る、その使命感だけが、彼らを動かしていた。
この国には優秀な勇者と魔術師との間に生まれた女性が評議会の会長となっていた。
この会長の仕事はとても忙しく、ヒールで回復しながら1日16時間働いていた。
アルニオンはこの会長に恋をした。
アルニオン「素晴らしい女性だなあ・・よし、この国を勝たそう」
この国は他国と比べ小国。
軍隊も持たない中立国。
しかし、国家機密で持つ技術がある。
自立型魔法技術。
自分で考え、行動できる魔法生物の製造、改良、附与が出来る技術だ。
その技術がある事は他国には知られてはいるが、附与技術は知られていない。
附与技術が知られては、いつでも軍隊を大量生産できる事を知られたと同義。
そうなれば、中立国、平和国としての立場が危うくなる。
そして、アルニオンが観察をし始めた3年後。
その機密がスパイにより知られた。
その技術がありながら、他国には一切干渉しなかった歴史を誇張したが、国連から追放された。
要は附与技術を教えなければ殺すという話だ。
他国にとって自立魔法附与という技術は夢の兵器大量生産技術、喉から手が出るほどに欲しい技術だった。
評議会の意見は別れた。
渡したら大規模大戦の引き金になる。
渡さなければ殺される。
附与技術を封印し、二度と誰にも扱えないようにするべきだ。
渡さなければ殺される。
平行線だった。
一羽の鳩が窓から現れた。
〈シュパ〉
アルニオンが現れた。
アルニオン「やあ、お疲れ様」
会長「待ちなさい!」 攻撃をしようとする部下を抑える。
会長「56波長結界に同調し、すり抜ける相手に叶いません、よしなさい、・・・・私達を殺さず、入って来て、姿をさらした、話を聞きましょう、附与技術も持っている」
アルニオン「流石にキレる、話が早い」 ゆっくり歩み寄る。
会長「・・」
その他『・・』
アルニオン「まず・・一番に言わなくてはなりません」
皆『・・《ゴクリ》』
アルニオン「結婚してください」
会長「・・は?」
その他『・・は?』
アルニオン「結婚!してください!」
会長「帰れ」
アルニオン「えー、駄目?アスタリカさん」
会長「!?何故私の本名を知って!?何者だ!?」
アルニオン「別にいいでしょ、此処にいる奴らは皆知ってる」 腕を広げる。
会長「・・なるほど・・変態ストーカーという訳だな」呆れる。
アルニオン「本当にキレるね」
会長「・・他国にもストーカーしてる?」
アルニオン「ああ、してる」
会長「目的は?」
アルニオン「世界平和」
会長「その目的は?」
アルニオン「・・人間の、進化を見る事」
会長「・・見てどうする?」
アルニオン「祝杯をあげて、昼寝する」
会長「・・あなたなら、今すぐにでも出来る」
アルニオン「ただの酒じゃない、進化した人間が始めて作った酒で、だ」
会長「・・旨いとは限らない」
アルニオン「しかし、目指さなければならない」
会長「・・支配する気か?」
アルニオン「それでは進化は望めない」
会長「具体的に何をする?あなたの話だ」
アルニオン「あなたを勝たせる、そして、まあまあ平和になったら、結婚しよう!」
会長「・・結婚はともかく、勝たせる?不可能だ、あなたなら解る筈だ一度に周辺26ヵ国と渡り合えない」
アルニオン「方法は言えないが、出来る」
会長「・・信じろとでも?」
アルニオン「未来の旦那だぞ?信じてよ」
会長「・・いいだろう、我が身で平和が買えるなら安い、やってみろ、今すぐに」
アルニオン「やったあ!聞いた?ね?聞いた?ねえ、ねえ!」
部下1「姫様・・」
その他『・・く、・・くそ、・・ちくしょう、とうとう始まった、乗っ取りだ・・くそ』
アルニオン「・・百分は一見にってね、では〈パチン〉」 指を鳴らした。
異空間の中、見えない何かが、テレポートで資料を仕分けていく。シュリンヘーゼル周辺の国々26ヵ国の悪者大量資料が。
《ゴオオオオオオオオオ》 燃えた。
アルニオン「これで、他国は戦争どころではなくなった、・・内乱が起きるだろう、まあ、明らかに魔術による呪いのせいだと解る事象だ、なんせ26ヵ国の悪者らが一気に死んだんだから」
皆『なあ!?』
会長「その呪いに私もかかっているのか?」
アルニオン「いや?とっくに外した」
会長「・・呆れる、何故今なのだ?」
アルニオン「姫のピンチに駆けつけた王子様!みたいな?」
会長「結婚は暫し待て、あなたの言う通りになれば受けよう、その、一応準備もあるのでな」
アルニオン「やったあ!」
1週間後、各国の使者から魔法郵便によって伝えられてきた。
26ヵ国の国王と、評判が悪かった地方の領主や家族、全てが一気に心臓麻痺により死んだ事。
総勢214万3652人。
昼下がり、書斎。
会長「・・ふふ・・」
女秘書1「か、会長?」
会長「ふふふ、世界は人間が増えすぎた、しかし、悪人の方が圧倒的に多い、・・彼に任せた方が良いかな」
結婚式1週間前。
テラスでステーキデート。
アルニオン「き、綺麗です」 目を反らす。
会長「・・ふふ、なかなかだろう?」
アルニオン「なかなか?てんでもない!極上です!」
会長「・・素直に嬉しいよ」
アルニオン「結婚、嫌じゃない?嫌なら別にしなくて良いよ?」
会長「そ?ならしない」
アルニオン「えー、嫌なの?他に好きな男居たの?」
会長「・・気になってる奴なら居た・・」
アルニオン「・・ふうん・・解った、じゃ、結婚なしにするよ」
会長「・・冗談だろ?本気か?」
アルニオン「本気本気、嫌がる女を無理やりなんて嫌だし」
会長「・・趣味は?」
アルニオン「・・へ?」
会長「趣味は?」
アルニオン「えーっと・・魔法作成研究」
会長「・・他には?」
アルニオン「薬草の品種改良」
会長「・・他には?」
アルニオン「各国のパズル」
会長「仕事じゃなくて、趣味だ、趣味」
アルニオン「・・うーん・・」
会長「絵だとか、歌とか、ダンスとか」
アルニオン「ダンスはしてる」
会長「へー、意外だな、やって見せてくれ」
アルニオン「といっても、俺じゃない、小さな人形を作って、適当に踊らせて、客引きによく利用してたんだ」
会長「商人の頃に?」
アルニオン「そうそう、〈ニョキニョキ〉こんな風に」
木のテラスから木が分裂し、小さい手のひらサイズの人形が現れ、テーブルの隅で踊る。
会長「おー〈パチパチ〉か、可愛いい〈キラキラ〉」
アルニオン「一匹だけじゃ可哀想だから、女の子を呼んであげよう〈ニョキニョキ〉」 スカート型の人形が現れ、テーブルに登り、一緒に踊り始めた。
会長「おー〈パチパチ〉可愛いい可愛いい〈キラキラ〉」
アルニオン「ど?惚れてくれた?」
会長「そんな事言うから駄目なんだ君は!いいかい?男は基本的に沈黙!それだけで女の子は弱いモノなんだ」
アルニオン「えー、つまんないよ、君とはどんどん会話したいな、頭良いし」
会長「名前で呼びたまえ、それくらい許そう」
アルニオン「やった、んじゃあ、・・アスタリカ〈キリリン〉」
アスタリカ「〈ドキドキ〉な、なんだ?」
アルニオン「結婚しよう!」
アスタリカ「・・はい」うつむきながら。
アルニオン「え?嘘?まじ?やったあ!まじ?やったあ!」
アスタリカ「もう!雰囲気台無し!馬鹿!」席を立った。
アルニオン「え?ちょ!?待って!?待ってよう!?」
翌朝。
アスタリカ「保留で」
アルニオン「えー、昨日は、はいって言ったのに?」
アスタリカ「うるさい!うるさいうるさあああい!馬鹿!」走る。
アルニオン「待ってよー」 追いかける。
周囲は暖かく見守る。
一週間後の結婚式終了。
結局二人が結婚した情報は各国に知れ渡った。
小国シュリンヘーゼル周囲を山脈に囲まれた谷の国。
山脈からは多くの魔石が採掘され、雪山から流れる水は終わる事はなく、麓は程好い盆地となっており、稲作、野菜が多く取れる。山の中をくりぬいた城は鉄壁の要塞。
良い国だ。
そんな国の結界の遥か上空に。
魔法生物の一匹の巨大な鳥が飛んで来た。
魔法生物は結界の頂点に浮かぶと、解析を開始。
《バチバチバチヌチャアアア》解析と同調を同時に。
そして少しの隙間が開くと、《ボキボキボキグニャアアア》体を変形させ、侵入。
大規模魔法、エクストラバーボン。
半径600キロを消し飛ばす爆弾だった。
〈シュパ〉アルニオンが現れた。
アルニオン「よ!同調せよ〈ドクン〉支配完了、魔力追跡、・・ああん、へー、お前らか、ほー、バレたからってそんな慌てんなよ、ちゃんと『改良』して、送り届けるからさ、サイズと、威力を小さくして、結界同調スペックを最大に上げてっと・・よし、よーし、じゃあ返す、受けとれ〈シュパ〉、んじゃ姫様との夜の営みの続きと行きますか!」〈シュパ〉
翌朝、巨大な帝国として知られるローアン帝国の有名な魔術師らの会合がぶっ飛んだとの報告がシュリンヘーゼルへ入った。
アルニオン「この国が繁栄すれば、世界の手本となる、後は火の粉を払う強さだけだが、その役目は俺が引き受ける、だから、アスタリカ、遠慮は要らない、この国をもっと繁栄させ、商いで得たお金は衣料品だけ輸入しているが、それすらも蚕を飼い、解決しよう、余り過ぎた物資は同盟国の非常時に使うために、俺の異空間で保管しよう、ただし、大量に積み上げられた金銀、お金、美術品は保管せず、美術館に飾ろう、どれだけシュリンヘーゼルが豊かな国かを皆に知って貰うんだ、皆の手本になろうアスタリカ、戦争に回す富がどれだけ無駄か、知って貰おう」
アスタリカ「ええ、あなたの言う通りにするわ、だから、ね?もう一回」
アルニオン「ええー?もう出ないよ」
アスタリカ「んー?どうれ?本当かなあ?〈ゴソゴソ〉」
アルニオン「ちょっ・・もう勘弁してえ!?」
アスタリカ「ひゃーへー〈ジュボ、ジュボ、ジュルル〉」
アルニオン「く!ん!あ!あああ!?」
シュリンヘーゼルには魔族の森が結構ある。
しかし、人間は決して魔族の森深くには入らず、お互いの領土を守り暮らしていた。
たまに、小さな魔族が人里に迷いこんだら、優しく懐抱し、もてなし、お土産を持たせて森の深い場所付近までワイバーンで運び、また引き返した。
そのような国はシュリンヘーゼルだけだった。
魔王も時々少年に化け、シュリンヘーゼルで遊んでいる。
アルニオンと魔王は時々街の喫茶店でお茶をする仲だ。
魔王はチーズ料理が大好きで、いつもそれを注文する。
シュリンヘーゼルは魔王の庇護下にあり、よく解らないが最強の魔法魔術の黒衣の男が理事会の会長と結婚したとなれば、シュリンヘーゼルは魔族の手に堕ちたと考えられるのも仕方のない事だった。
魔王の庇護下にある事は発表はしてなかったが、魔族の森が近くに沢山あるにも関わらず、魔族の奴隷が一人として居ない事は異常であり、今までは弱いから、魔族にも相手にされないのだろうという周囲の認識が消えたからに他ならない。
シュリンヘーゼルは危険だ。
世界支配を魔王と共にやるつもりだ。
シュリンヘーゼルは危険だ。
シュリンヘーゼルは危険!危険!危険!危険!危険!危険!
国連書状〈シュリンヘーゼル国議会会長、アスタリカ、リタハンプトン、国連議会において、身の潔白を証明する為、馳せ参じたし〉
馳せ参じたら。
催眠、拷問、されるのは当然だ。
ただ、無実ですと言って、誰が信用すると言うのか。
小国と国連896ヵ国の四大勢力ての全面戦争が始まった。
そして、遠慮なくアルニオンは燃やした。
一瞬でこの星に住む3割の人間が死んだ。
国連に書状を送った。
書状〈大いなる災いが起きるのはシュリンヘーゼルが神の庇護下にあるからです。シュリンヘーゼルに手を出すなかれ、ただし、同盟を結ぶならば、喜んでお受け致します。
同盟への条件一覧。
お金を国内では廃止する事。
軍事費を7割削る事。
国内で流通する食料や、衣料品、病院は全て無料にする事。
軍事力においては、心配なく、神の庇護下にあります。
奴隷を廃止する事。
魔族と基本的に関わらない事。
魔族の領土を奪わない事。
人間の人口を調整する政策を考える事。
避妊薬を沢山普及させる事。
魔族の森に行き、謝り続ける事。
魔族の言葉を研究する事。
当然このような要求は呑まれる筈がないと思いきや、頭が固い国王が死んだ事で、すんなり通った。
同盟国が次々に生まれ、シュリンヘーゼルの政策を真似する国が増えた。
この流れは不味いと、魔法魔術培養技術で人造人間が造られた。
人造人間の3体が、親の国を文字通り食い尽くして滅ぼした。
ローアン帝国と並ぶ魔術帝国、ハリマ帝国だった。
続いてローアン帝国が『それ』に対抗する為に作り出した人造人間も裏切り、ローアン帝国を食い尽くし、滅ぼした。
魔法で異空間を作り、直接腹にブラックホールみたいに吸収するらしい。
どれも人間とスライムの融合個体に、魔術、魔法を大量附与させた結果、産まれた化け物達。
アルニオンの附与技術は魔法自体に意思を附与させる事が出来るが、不完全な附与技術は意思、思考を附与出来ない為、人間を使うしかなかったのだろう。
しかし、その人間も、スライムと、幾重にも重なる附与の負荷で精神を動物的本能のみで動く個体となってしまった。
アルニオンがそう聞いたのは最初の人造人間が産まれてから5日目の事だった。
6人の人造人間VS黒衣の契約者。
アルニオン「この戦いの末に見る未来こそ、俺が求める人間の進化がある気がするんだ、だから」
アスタリカ「行かないで!嫌な予感がするの!行っちゃ駄目!」
背中に抱きつく。
アルニオン「誰かが止めないと、な?」
アスタリカ「別に貴方じゃなくたって!!」
アルニオン「アスタリカ、解ってるだろ?俺がやらなきゃ駄目なんだ」
アスタリカ「私も行く!私も戦う!」
アルニオン「・・おやすみ、お姫様〈チュ〉」 キス。
アスタリカ「んむ!?ん、んは、あ?あれ?あ、あなた・・〈トサア〉」 眠った。
アルニオン「帰るか、死んだら、目覚めるから、じゃあね、アスタリカ、アスタリカのベッド周囲に結界!〈ブオン〉・・じゃあ、行ってくるよ、・・・・さよなら」〈シュパ〉
シュリンヘーゼル北側二国先、シビリア共和国の魔族の森。
魔族達が必死に戦うも、次々に食われていく。
驚いた事に、この人造人間達は連携して戦っていた。
言葉を話さず、テレパシーで会話しているようだ。
スライムの特性、大食欲を引き継いでいる人造人間達は、喰らっても喰らっても腹が膨れることはない。
次々に魔法、ブラックホールにより、腹に納め、触手地獄の異空間に分けている別個体に食べさせる。別個体は食べた後、肉壁に吸収され、また入れ替わりに別個体が出てくる。
その繰り返し。
小さいネズミみたいな大量個体は遠慮なく、目玉、腹、肛門から侵入し、食らい尽くす。
異空間内はさながら地獄絵図だった。
〈シュパ〉森を抜けた草原に差し掛かった所でアルニオンが現れた。
構える6人。
人造人間の眼はパラメーターを見る事が出来る。
人造人間達は『逃げられない』と直ぐに判断、一人が向かって来て、後の5人は大『質量』の魔法槍を生成中。
アルニオン「同調!〈グラア〉は無理か、魔力波長が多すぎる、23万種類以上かよ!食ったらコピーかよ、は!チートだなおい!」
人造1「ぐえええ!!」〈ボ!〉まずはー。
超『質量』の小型爆弾魔法を大量にぶっ放してきた。
アルニオン「(解析時間はない、同調も無理、つまり支配は無理、力押しの純粋な戦闘しかない!!)はあ、疲れるなあ!結界!〈ブワン〉」《カカ!!!!》 強烈な光の中、探知中。
5人は魔法槍を使った超高等爆裂魔法『イカリ』の発動条件を手印で省略。
食べた『モノ』の知識をも吸収出来るらしい。
『 』イカリ、発動。
アルニオン「異空間へ逃げ!!《ハジジジ》られない!?周囲自体に強制アウト機能!?」
『イカリ』 15本の魔法槍を大質量で作り、発動可能。
発動したら最後、終わるまで周囲8000キロのマナの流れ、形をぐちゃぐちゃにし、魔法、魔術使用不可、槍の近く以外の槍が並ぶ13角形30キロは塵も残らない、そこからは徐々に威力が落ちるが、30キロ内には勿論、アルニオンが居た。
アルニオン「(初っぱなから最終奥義かよ!?)〈ピシッ〉(嘘!?全力の結界が!?)」
戦闘はいつもー。
徐々に激しくなるとは限らない。
アルニオン「《ピシピシ、ビシッ》契約者の名において命ずる!
我はアルニオン・シルトクル!レベルアウト発動!すー、ヒビカセ!!!!《ビシッパリャアアア》」 結界が破れ、白い光が辺りを覆った。
《フッ!》光が消えた。
6人『!?』 発動したはかりの破壊魔法がこんな短時間で終わる筈がなかった。困惑する。
アルニオン「マナを消滅させるマナの開発だよ、俺が造った禁忌教典第9法、ヒビカセ、俺のマナに触れるなよ?《ボ!!》」 風の魔法により、無数の矢が飛ぶ。
6人の内、1人は結界、5人はテレポートで避けるが、結界ごと貫かれた。
だが再生出来るとー・・、出来ない。
矢が貫いた部分からどんどん『焼け』が侵食して行きー。
人造人間女5「あ!あぎゃあああああああアアアア・・!!」塵になった。
5人『!!!!』
アルニオン「吸血鬼が銀で死ぬじゃん?あれさ、マナに毒だからなんだよね、参考にして『造った』んだ。このマナに切り替える時地獄の痛みなんだぞ?どうしてくれんの?あ?」
5人が目配せ。
手印を結び、水蒸気の霧結界、『マヤリテ』発動。
アルニオン「無駄だ、風よ!」《ゴゴウ!!》ただの風魔法で、《ズギャギャギャリイイイイン!!》 霧結界が消し飛んだ。
4人は逃げずに向かって来ていた。
一人は何か呪文を唱えている。
アルニオンに氷、かまいたち、炎、空間魔法をぶつけるが、アルニオンの体に触れたら欠き消える。
殴ったら、拳から壊れ、侵食され、灰になる。
それでも諦めず、離れて結界魔法を連発する3人。
まるで一瞬でも時間を稼ぐように。
そして3人が死んだ。
人造人間3「ニヤリ」 歯を食い縛りながら、笑って灰になった。
まるで、お前は終わりだと確信してから逝くように。
最後に残った人造人間は見た目は11歳の少女。
肩には4の文字。
銀髪の長い髪が風に揺れる。
アルニオン「お前を殺したくはない、俺の妹にならない?可愛いし、他の人間も納得させる、どう?その空腹も魔術解析とオペでスライムの特性を剥がすからさ!そうすりゃ
《《ボン!!!!!!》》ファイアボールの最上位魔法、インフェルノ・クライシス。
超巨大な火の玉が来る。
アルニオン「は?無駄ー《ゾゾゾ》!?く!?」〈シュパ〉テレポート。
アルニオンが逃げた先の逆に魔法槍15本。
アルニオン「 (しま!?同調されて考えが!?返すか?いや、解析時間はない!!) 」
少女「はじ!!!」《《カ!!!!》》 『イカリ』発動。
アルニオン「 (不老不死としての寿命を半分削るしかない!!)《バババ》 細胞核から魔力解放!もってけ泥棒!!!!」手印により、省略、全力魔力結界。
アルニオン「《ビリビリビリビリビリビリ》うああああああああああ!!!!」
20秒の発動時間を耐え抜いた。
疲弊しない少女。
疲弊しているアルニオン。
山と森が消え、地形がかなり変わってしまった大地に二人。
アルニオン「・・天才か・・見ただけで、コピー出来るのか?ははは参ったな、それとも食べた奴の中に天才が居たのか?」
少女「しゃはじこ、ぐべらひ」《グニャアア》 少女の空間が歪む。
アルニオン「・・いい忘れたが、もう勝負は着いた」
少女「!?」
アルニオン「お前の今のマナ波長は一つ選択だけだ、マナ消しのマナだからな、30秒時戻しを一秒間『ずつ』使い、30秒稼いだ、それだけあれば、解析できるんだよ」
少女「ちうぶぶうう!!」 大規模地脈魔法『フンカ』を発動しようとー。
アルニオン「・・」
少女「!?」《カチカチカチカチカチカチカチカチ》 少女の身体の周りに歯車が現れた。
少女「ぐひいひい、ひい、ひい、くぐ」身体が動かない。
アルニオン「無駄だよ、解析は終わってる、お前のマナの種類は862万4638種類、俺のを入れてその数だ、マナの入れ替わりをしても、性質を変えても無駄だ、随時追跡してる」
少女「しゃは、しゃは、しゃは、う、うう、うああああああああああん、うああああああああああん」
アルニオン「泣くなよ、馬鹿」 頭を掻く。
少女「うああああああああああん、うああああああああああん、うああああああああああん」
アルニオン「オペ、開始」
少女「うああああああああああ〈グニャアア〉あ!?あ、あうう・・う、う、う・・・・」少女の視界が、意識がボヤけー。
少女「〈ガク〉」
アルニオン「・・」冷酷な目。
《カチカチカチカチカチカチブシッカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチグチュグチュカチカチカチカチカチカチカチカチ》
アスタリカ「う・・・・ん・・」目が覚めた。
目の前には人造人間4番、少女の顔「あ、起きたーママおはよー」
銀髪のサラサラの長い髪、銀色の瞳、青のドレスに金色の刺繍の花柄。
アスタリカ「・・〈ぼー〉はい、おはよー、トイレ・・」
トイレを済ませ、部屋に戻る。
お茶を入れる使用人のお婆さん。
その横でお茶とケーキを食べる成人男性姿の魔王と人造人間の少女。
少女「あ!ママ来たー、ママ、ケーキだよ、美味しいよー」手を引く。
アスタリカを椅子に座らせ、自分の椅子をアスタリカの椅子の横に持って来て座る。
ケーキセットも移動してあげる使用人。
少女「ありがとう!スーザンお婆さん」
使用人スーザン「はいよ」
アスタリカ「・・ごめんなさい、私、夢見てるのよね?」
アルニオン「いいや?現実だよ、顔洗って来たんだろ?〈モグモグ〉」
魔王「きついやつ掛けるからだボケ!」
アルニオン「んな事言ったって、目覚めたらめんどくさいじゃん」
魔王「まあ、確かにな、とりあえず、腹に何か入れたらどうだ?ん?ケーキ美味しいぞ?チーズケーキ〈モグモグ〉」
アスタリカ「・・夢じゃないの?」震え出す。
アルニオン「〈モグモグ〉んひゅ、ゆぶぇばなっよ?」頷き、ケーキを食いながら話す。
アスタリカ「・・」アルニオンを恐る恐る触る。
アルニオン「・・」成すがままに。
アスタリカ「・・」 頬っぺたをつねる。
アルニオン「うぐへういういういうい」 上下に何度も引っ張る。
アスタリカ「・・〈ガバッ!〉」飛び抱きついた。
アルニオン「あらああ!?」〈バタアアン〉椅子ごと倒れた。
アスタリカ「馬鹿!馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!!!・・死んでも格好良いって思ったでしょ!?馬鹿!大馬鹿!!帰って来なきゃ全然格好良くなんかないんだから!!馬鹿!馬鹿あ!!うわああああああ、うわああああああん、うああああああああああん」
アルニオン「・・悪かった、ごめん、ごめんなさい」
アスタリカ「あ、あ、うあ、あ、あ、あああああ、ずぴー」
魔王「あちゃー、おい、ルーシア、行くぞ」 少女の腕を引っ張る。
ルーシア「ママ泣いてるー」
魔王「気を使え、離れるのが正解だ」
ルーシア「やあ!離れないい!」
魔王「庭だ、庭!ドラゴヌスに乗せてやるから!」
ドラゴヌス。
大きなトカゲ、足がめちゃくちゃ早い。
ルーシア「私が乗ると怖がって進んでくれないんだよー?」
魔王「大丈夫だ、俺のペットのドラゴヌスなら」
ルーシア「本当ー?んじゃあ行くう!」
部屋を離れた。
アスタリカは落ち着き、話をした。
魔王とは常日頃からお茶をする間柄だという事。
あの少女は暴れていた人造人間らの一人である事。
スライムの特性である、大食欲を魔法手術で取り除いた事。
あらゆる魔法知識や、マナの種類はそのまま残している事。
ただし、異空間の制御、異空間内の情報整理技術を『附与』し、すっきりした思考を可能にした事。
今のあの少女はハイスペックなだけの普通の少女である事。
名前はルーシアだという事。
アスタリカ「・・ママって何?私まだ身籠ってませんけど?」ぶすっとした顔。
アルニオン「いや、それはルーシアが勝手に呼び初めて、・・多分、捨てられないように可愛く振る舞ってるんじゃないかな?分かんないけど」
〈わー、きゃあああ、きゃっきゃっ〉 窓からルーシアのはしゃぐ声。
アルニオン「引き取りたいんだ、あの子は好きで暴れたんじゃないんだし・・苦しんで、お腹が空いて、それだけだったんだ、だからー・・」
アスタリカ「・・あなたを傷つけた」
アルニオン「もう許した」
アスタリカ「国を4か5つ滅ぼした!」
アルニオン「悪意があった訳じゃない」
アスタリカ「忘れたの!?あの人造人間は元々この国を滅ぼす為に!」
アルニオン「造った奴等はもう居ない」
アスタリカ「だけど、だけどー」
アルニオン「可哀想だよ、笑って過ごそう、憎しみはもういいよ、美味しいモノを食べて、汗をかいて、お風呂に入って、ぐっすり眠ろう?殺すなんて可哀想だよ、あんなに可愛いじゃないか」
窓から二人で二人を覗く。
ドラゴヌスに乗り、広い庭をぐるぐる回り、はしゃぐ二人。
アスタリカ「・・はあ、解った、戦った貴方が言うのなら、もう良いわ」
アルニオン「本当に?嘘?まじで?やったあ!」
アスタリカ「あっはっはっはっは!貴方は本当に変わらない!あっはっはっはっは!!」
アルニオン「ふかかかかかか!」
人間の進化。
それは、魔族との交配によりもたらされた。
新しい人種、『アレキサス』
高確率で見た目は魔族で、肌は黒か、青。
高い魔力を秘め、生活魔法は向上された。
知能が高く、不死とはいかないが、不老なら可能らしく、不老研究は後一歩まで迫っている。
時が過ぎ800年。
アスタリカとの間に産まれた子供達の子孫ははそれぞれ各地に散らばり、普通に暮らしている。
ルーシアも200年が限界だった。
魔王も666年が限界で、また赤ん坊に戻っていた。
アルニオンはかつて栄華を誇った懐かしい帝国や、シュリンヘーゼルが沈んだ辺りを眺めながら、海岸で釣りをしていた。
波がざわつく。
一軒家が後ろに見える。
アルニオン「今日は釣れないかあ、もうそろそろ時間なんだがなあ・・」
魔術。
魔法。
錬金術。
この三大勢力がそれぞれ覇権を巡り争う時代になっていた。
アルニオン「あ!まあた食われた!ったくー、・・・・さあて、各地からのマーキングによると、そろそろ準備が整ってきたな、戦争かあ・・200年ぶりかあ!ん、んん~〈ググー〉」 背伸び。
アルニオン「じゃ行ってくるね、ドラ吉!お互い生きてたらまた会おうな!」
ドラ吉「ブオオオオオ!!」砲口が何処からか聞こえる。
魔王のペットのドラゴヌス。
全長850m。
海の上に浮かんでいて、ドラ吉の背中に家を立てていたのだ。
アルニオン「・・」 カメラ目線。
アルニオン「バイバイ」〈シュパ〉
伝承。
世界が破滅の危機にあるであろう時代。
一人の黒衣の魔法魔術師が現れる。
魔法と魔術を携えて現れる。
しかしてその者、世界の治癒者なり。
破滅から救う者が現れる。
必ず現れる。
その者の名はー。
『アルニオン・シルトクル』
《END》




