予言
「その友達、姉ちゃんと仲がいいの?」
「うん。趣味が合うし、いい子だし、親友だよ」
和樹がへーと言った後に小さくうなづく。
「じゃぁ、もう一つ教えてあげるよ。しつけはかなりむつかしいけど、隷属の首輪をはめることができれば、強制的に従わせることもできる。軍では隷属の首輪をはめたドラゴンに乗って戦う竜騎士という花形職業もあったぞ」
竜騎士、キター!
でも、隷属の首輪って!
ドラゴンかわいそう!
なんか、爬虫類好きのゆきちゃんには聞かせたくない話だな……。それとも、主従関係萌えって方向に進むだろうか?
隷属の首輪で強制的に捕まえたけれど、かわいがってくれるご主人様と竜とのいちゃら……いやいや、もふもふ……でもなく、にゅーん。
それにしても、和樹の想像力はすごい。
もしかして本当に前世は異世界の賢者だったりして?
白の大賢者だっけ?
なんで白なんだろう?
髪の毛の色が白かったのかなぁ?
「仲のいい友達のことは分かったけど、姉ちゃん彼氏は?いないの?」
へ?
「か、かれ、し?」
まさか、弟の和樹からそんな話題を振られるとは思ってもみなかった。
ここは、ちゃんと教えてあげねばならぬ。
「あのね、中学生のころって、高校生になったらみんな彼氏や彼女ができるとか思っているみたいだけど、それ、ただの妄想っていうか、伝説っていうか、嘘だから!」
本当。
「べ、別にお姉ちゃんがオタクだから彼氏ができないとか、そういうことじゃなくてね、彼氏や彼女がいるリア充なんてほんの一部だよ!学校にもよるけど、片思い中の人とか失恋中の人だけじゃなくて、そもそも恋愛に興味ないとか、今は勉強や部活にしか目が向かないとか。とにかく、彼氏彼女がいないのはいろいろなあるの!わかった!」
和樹がにんまりと笑う。
「ふーん。つまり、姉ちゃんには彼氏がいないってことだ」
うぐぐっ。
「だから、べ、別に、普通なの!いなくても普通の範疇なの!そ、それに、まだ高校生活は1年半以上残ってるんだからっ」
和樹が不機嫌な顔になった。
「やめとけって、誰かと付き合ったり、誰かを好きになったりとか」
「な、なんでよ!」
まぁ、たいして彼氏が欲しいとか付き合いたいとかそういう気持ちはないけど。
人にやめろと言われると逆らいたくもなるわけで……。
「どうせ、別れるし、振られるから」
は?
はぁー?
なぜ、弟にそんなことを言われねばならない!
オタクだからか?
私が、オタクだからか?
いや、それとも、えーっと、容姿の問題?
手足を見下ろす。
んと、特にスタイルがいいわけじゃないけど、悪いわけでもない。
容姿だって、中の中、うぬぼれて言えば中の上くらいはあるんじゃないかと思うんだけど……。
見た目でわかるオタク敵特徴はないはずだ。
「だって、最終的に選ぶ男は決まってる」
え?
「和樹?それ、どういうこと?なんか予知夢とか占いとかなんかそんなのも……」
患っているのだろうか……。
「さぁね」
和樹がふっと笑う。
いやいや、やめて!
予言めいた感じに見えるから、そんなに自信満々な表情で言われると。
ああ、これも賢者ごっこの延長なんだろうか。
白の大賢者か……。大賢者というくらいだから、未来も見通せそうだしな。
って、だめじゃん、私。
ついつい、和樹の中二病ワールドを現実とごっちゃにしてるというか、なんか、リアルに持ってき考えるとか、だめじゃーん。
でもだって、和樹の前世は賢者だった話って、妙に説得力があったりするんだもん。なんていうか迷いがなく話が出て来るからなのか……。