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ありがとうカレー

 まぁ、そんなことでね。

 半年前、自分が父さんの子じゃないって知って、表面上はもとに戻ったように見えたけれど……。

 実は、家を出たいと思っているんじゃないかって……。

 自分は異世界の人間、つまり、日本の、うちの和樹じゃないっていう話はさ……。

 異世界に帰りたいとか、この家から出たいみたいな気持ちの表れなんじゃないかなって思って。

 ……尋ねてみたものの、もし、異世界に帰りたいって言われたらどうしよう。

 もし、この家が出たい原因が、私だというなら……。

 家から通える大学へ進学するのはやめよう。

 私が家を出れば和樹がこの家にいてくれるなら、遠くの大学へ進学しよう。

「まさか。姉ちゃん聞いてなかったの?」

 え?

「聞いてなかったって、何を?」

「日本のほうが何もかも進んでいて便利だって。もう、あんな不便な世界になんてとてもじゃないが住める気がしねぇよ」

 ほっと、つめていた息を吐きだす。

「そ、そっか。ここに……和樹はここがいいんだね!」

「あったりまえだろう。クッソ薄い味付けの飯とか無理だよ。カレーもないんだぜ?唐揚げは何とかなりそうだけど、カレーなんて絶対再現できねぇよ」

 カレー!

 ありがとうカレー!

 和樹を日本につなぎとめてくれて!

「風呂は?」

「あ?ああ、風呂な。しかし姉ちゃんの本ってさ、見てきたかのように書いてるのがあってびっくりした。まじ浄化魔法ってやつがあってさ。誰でも使えるわけじゃないけど、使える人が銭湯ならぬ、浄化魔法屋ってのやってるんだよ。だから風呂に入る代わりに浄化魔法ってのが常識。風呂なんて必要ないからなかったな」

 ふむふむ。

 銭湯みたいに、浄化魔法屋か。そうだよねー。そんな便利な魔法があれば当然そっちに発達するかぁ。

「まぁ、俺は風呂とかあってもなくてもどっちでもいいけど」

「和樹、烏の行水だもんねぇ。風呂あんまり好きじゃないもんね。私は、風呂がないのはきついなぁ……。あったかいお湯にとぷーんとつかるのすごく気持ちいいもん」

 和樹がぐっと口を引き締めた。

「姉ちゃんは長湯しすぎ」

「あ、ごめん。もしかして迷惑かけてた?今度からは和樹より後に入るようにするね。ごめん、ごめん」

 風呂嫌いな和樹は、母さんに何度も言われてもなかなか風呂に入らないから、私が先に入ること多かったんだよね。

「いや、別に、迷惑とかじゃねーしっ!」

 和樹がそっぽを向いた。

「でも、風呂嫌いには浄化魔法便利そうだね」

「風呂好きにだって、便利だよ。着てる服も浄化されるんだから、洗濯いらない」

「え?本当に?それは便利かも!クリーニング屋さんとかいらないんだよね。風呂屋で全部すんじゃう感じだ!」

 すごーい。

 和樹は何もかも異世界より日本のほうが進んでるとか言ってたけど、異世界も便利なところあるじゃん。

 っていうか、ファンタジーだなぁ。

 自分の前世が異世界の人間で、転生者だなんて言い出して……。

 本の読みすぎで、痛い人間になっちゃった、私のせいか?!と一瞬焦ったけれど。

 和樹は今中2だしねぇ。

 中二病だよね、これ。

 きっとすんごくかっこいい魔法の呪文とかも考えてノートに書いてるってパターンだ。

 それにしても……本当に、見てきたかのように次々と語れるなんて……。

「和樹さ、小説家になれるんじゃない?」

 ただの中2じゃないね。才能ある中2だ。

「は?何言ってんの?」

「ん、だって、異世界風呂屋の話とか面白そうじゃない?クリーニング屋兼お風呂屋。美容院のシャンプーも兼ねてるんだよね。あとは、えーっと、もしかして病院のクリーンルームみたいなのとかも可能?食料品工場の入り口の埃を飛ばす機械もいらなくなるね。そこで浄化魔法かけてから入ればいいんだから」

 ぷっと和樹が笑う。

「姉ちゃんこそ、小説書いたら?俺のは過去の記憶だけ。浄化魔法一つで、現代ではどう役立つかとか、その発想力はすげーよ」

 ぬ。

 あくまで転生者ぶるつもりですか。

「んー、だけど残念ながら浄化魔法使える人間ってそんなに多くないぞ?工場まで人手は回らないだろうな。むしろ、魔石を使った魔道具の役割になってくるかな」

 ぬっ。


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