第二部的な何かのその1
少しお付き合いください
「ねえ、和樹」
和樹の大学生活は忙しい。
まだ大学はオリエンテーションが終わって一通りの授業が始まったばかりだけど。
1年生はほぼ空き時間がなく毎日1限から4限までびっちりと授業がある。そのうえ、課題の量も医学部は大量にある。
毎日学校へ通い、家で課題をするだけでも大変なはずなのに、紙を広げては魔法陣を書き、異世界にいる弟子たちの指導をしている。
「何?結梨?」
手紙には私の分からない異世界の文字が次々につづられていく。
……本当に、和樹は異世界の記憶があるんだなぁ……。中二病だと思っててごめん。
っていうか、ゆきちゃんはまだ和樹は中二病だって思ってるんだよね。
仕方がないよね?本当に前世の記憶があって、魔法が使えるんだなんて言えないし。
「なんで、自分の部屋でやらないの?」
和樹は、なぜかわざわざ私の部屋に来て異世界への手紙をしたためている。
「俺が部屋に来ちゃ迷惑?」
和樹がしゅんっと落ち込んだような表情を見せる。
うう!かわいい和樹を落ち込ませてしまった!
「迷惑じゃないよ!でも……」
ベッドに持たれるようにして床に座ってスマホを触っている私の隣に、ぴたりとくっつくようにして座って魔法陣を書いている。
「机、使っていいよ?」
書きにくそう。
「ここがいい、っていうか、ここじゃないと無理」
こてんと、和樹が頭を私の肩に乗っけた。
……うん、和樹が小さいころにお姉ちゃんお姉ちゃんとずっと引っ付いてきたことを思い出す。いつまでもかわいいのは変わらないけど、大学生がこれで大丈夫なのかな?
……あ、でも。
魔法陣が現れて、異世界にさらわれそうになったんだよね。もしかしてそれがトラウマで、魔法陣とか書いてるときは、また私がさらわれるかもしれないって恐怖心からそばにいたいのかな?
和樹の頭をなでなで。
なでなでしながらも、考える。
いつまでもずっと一緒にいてあげられるわけじゃない。
今は、私も学生だけど、来年には就職して社会人になる。学生とは生活時間が変わるようになるんだし……。それに、私だって彼氏ができればデートして家を空けることもある!
いまだになぜかそういう方面に明るくないけどっ。なんで?
「和樹は、大学でモテるでしょ?」
「はぁ?何、突然?」
和樹が頭を上げて私を見る。
大学1年生。まだちょっと線の細さが残るけれど、大人の顔になる途中の和樹。
「彼女とかすぐにできそうだなぁって」
和樹がニヤッと嬉しそうに笑う。
「何?嫉妬?」
「んー、ほら、私、いまだに彼氏いないでしょ?和樹に先に彼女ができたら、何か言うよね?馬鹿にするようなことはないにしても……同情するようなこと」
誰にもボタンもらったことないだろうって制服のボタンをくれるくらいだ。
彼女に誕生日プレゼントあげるように、姉ちゃんは彼氏からプレゼントもらったことないだろう?って彼女とおそろいの何かをくれる可能性はある……。
ううう。それって、かなり悲しくない?彼女になった子にも悪すぎるし……。
「俺が、結梨の彼氏になってやろうか?」
和樹が至近距離でまっすぐ私の目を見ている。
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