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義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した  作者: 有


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魔法陣

 布団の中でぬくぬく。ああ、明日の入学式が楽しみでなかなか寝付けない。

 もう12時過ぎたかな。

 あれ?

 突然、周りがぼんやりと明るくなった。

 まさか、もう朝?

 カーテンから漏れる光とも違うような気がするけど……。

「姉ちゃんっ!」

 ドアが激しく開き、和樹が部屋に飛び込んできた。

「どうしたの?」

 和樹も明日の入学式が楽しみで眠れないのだろうか?

 上半身を起こして和樹の顔を見る。

 下からほのかな光に照らされている。

 は?下から?

「魔素を感じる……」

 魔素?

 光の正体は蛍よりも小さな光の粒だった。無数の光の粒が床から次々と溢れてくる。

「まさか、この光が魔素?」

 もし、そうだとしたら、なんで?どうして突然魔素が?

 光の粒は次第にある形を作り出していく。

 ああ、魔法陣みたいだ。

「これは、召喚魔法の魔法陣か……」

 え?やっぱり、これ、魔法陣なの?

 召喚魔法って、異世界転生じゃなくて、異世界転移によくある、聖女やら勇者やらが異世界に召喚されるあれ?

 全く関係ない人が巻き込まれて召喚されたり、クラスが丸ごと召喚されたりする、あれ?

 いや、でも、ちょっと待って、その召喚魔法の魔法陣とやら……の、円の、中心に……私がいるんですけど!

「和樹……」

 困った顔で和樹を見る。

「姉ちゃんっ!」

 和樹の手が伸びる。

 私も手を伸ばして和樹の手をつかもうとするんだけど、和樹の手も私の手も、魔法陣の障壁に阻まれて手をつかむことはできなかった。

 見えない壁とか……これ、本当に魔法陣なの?

 和樹の言う通り、召喚魔法だとしたら……私、私……。

「和樹っ!助けて……!」

 やだ、異世界に行きたくなんかない!

 日本が好き。

 異世界転生だとか異世界転移だとか、異世界に行く小説が好きで、異世界同好会に入ったりもしてるけど、でも、いやだ!

 一人で異世界になんて行きたくなんかない!

「くそっ。ふざけやがって……。白の大賢者をなめるなよっ」

 和樹が光を放つ魔法陣に触れる。

 床には光の粒子が集まって、文字なのか記号なのかわからないものが魔法陣に次々と書き込まれていて……。

 そこから天井へと光の柱が伸びていく。それがどんどん濃くなってきて……。

 これ、光に包まれたら、もう次の瞬間には異世界っていうやつ?

 やだ!

「和樹ぃ……」

 怖い。

 怖い!

 和樹の姿が、薄い光の向こうに見える。

 やだよ。

 瞬きするのが怖い。

 もし、目をつむったら……次に目を開いたときには、もう和樹の姿が見えないかもしれない。

 太い石柱の並ぶ神殿にいるかもしれない。石造りの城の地下室、はたまたモンスターがあふれるダンジョンの中。

 神のいる何もない空間、魔女の森……。

 どこに連れていかれるのっ!

 魔法にあこがれたことはあるけれど……でも、いやだ!

 行きたくないよっ!

 光が強くなってきた。

 ああ、あとどれくらい私はここにいられるのだろう。

「和樹……」

 大好きだよ。私のかわいい弟。

 お姉ちゃん……異世界に行っても、和樹のこと忘れないっ!



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