大学
『祝』
ドラゴンが吐く火が祝の文字をかたどったスタンプが送られてきた。
ゆきちゃんからだ。
『和樹くん卒業おめでとう!』
『ありがと!』
ゆきちゃんとは同じ大学を受験した。二人とも合格してたらいいなぁー。
……ゆきちゃんはたぶん大丈夫だろうけど、私は判定ギリギリだったところだからなぁ。
『和樹、ボタン全部なくなってた』
によによしたウサギのスタンプを送る。
『弟が人気者でうれしい』
と送れば、ゆきちゃんから砂を吐くカメレオンスタンプが送られてくる。
『はいはい、相変わらずのブラコンおめでとう』
『大学行ったら、ブラコン卒業……は無理にしても、彼氏つくる!』
『ん?どうしたの、急に?』
和樹からもらったボタンを写真に撮って、送る。
『姉ちゃんは中学高校で一度ももらえなかっただろうって、同情された』
『え?それ、和樹君の第二ボタン?』
驚いて飛び上がっているカエルの画像付き。
『誰の第何ボタンかはわからない』
分かっているのは、和樹の友達で私立高校への進学が決まりすでに受験が終わっている生徒の制服のボタンということだけだ。
『なんだ、それ』
ゆきちゃんに事の次第を説明する。
『あー、モテすぎも大変だぁ』
『まぁ、私は和樹のボタンだと信じて、中学卒業式の思い出として大切にするけど』
『ブラコン!っていうか、弟に同情されないように彼氏を作ろうって思うところも、安定のブラコン!』
扇子をもって踊っているカエル画像が送られてきた。
『ゆきちゃんも一緒に大学デビューしよう!』
『サークル活動に出会いを求める!爬虫類同好会に、ゆりっぺも一緒に入ろう!』
『安定の爬コン!だが、断る!我、異世界同好会に入る故。……まぁ、合格してればだけど』
『それな!』
受験は無事に終わった。
私はギリギリのところで、ゆきちゃんと同じ大学に受かったし、和樹も地元で一番賢い高校に受かった。
……和樹、頭よかったんだね。
「なんか、勉強のコツっていうか、記憶するコツみたいなのが前世の記憶にあってさ、やってみたら勉強が楽になった」
とか、受験終わった後で言うな!
「和樹ぃ~!なんで私にも教えてくれなかったのよ!ぬぅーっ!」
「いいじゃん。姉ちゃんの頭なら自宅から通えるところでいくつも進学希望の大学あっただろ」
「えー、でも、もしもっと成績上がったら、東大とか狙えたかもしれないのにっ!」
おっと、大風呂敷広げちゃったな。
いくら勉強のコツをつかんだからって、地頭のこと考えると、さすがに東大は無理だよな。
「だよな。俺も前世思い出したら東大くらい簡単だって思ったくらいだから」
は?
え?
「でも、自宅から通うのは簡単じゃないだろ?」
あ、うん。そうだね。通学に2時間以上かかるから、一人暮らしか寮暮らしとかになったかな?
じゃなくて、待って!
「和樹、東大くらい簡単って、進学校に合格したからって、さすがに調子乗りすぎてない?進学校は周りの子も賢い子ばかりだから、油断してるとすぐに成績下のほうになるって話だよ?」
和樹がふっと笑う。
「姉ちゃんこそ、大学入ったからって、遊びすぎてると単位落とすぞ」
はい、そうですね。人に忠告してる場合じゃないですよ。私のほうこそギリギリで合格なんだから……ん?
大学生活は順調だった。学部こそ違えどゆきちゃんと同じ大学なので、ランチとか一緒にしてる。
学部内に友達もできたし、念願の異世界同好会にも入会することができました!
漫画、小説、映画、ドラマにゲーム。それから、自ら考えだした異世界の世界についていろいろ話をする会。
 




