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ソシャゲダンジョン  作者: 止流うず
第三章 ―神を包む繭―
97/99

030 アイドルマスター



 名称【白陶繭良】 レアリティ【SSR】

 ジョブ【僧侶】 レベル【34/80】

 HP【3520/3520】 ATK【2100】

 リーダースキル:『その籠目に隙間はなく(カゴメ・カゴメ)

 効果     :パーティー全体が受けるダメージを500軽減する。

 スキル1   :『英雄育成【繭】』《クール:4ターン》

 効果     :パーティーメンバー一人に『超人』を付与する。

 スキル2   :『包み込む繭玉』《クール:4ターン》

 効果     :パーティーメンバー一人に『ダメージ軽減【1000】(3ターン)』を付与する。

 スキル3   :『自己消費(ミート・チョッパー)【繭】』《クール:5ターン》

 効果     :HPを1000消費して、死亡したパーティーメンバー一人を蘇生する。

 必殺技    :『以て、聖餐は(ショットグラス・)血肉で賄い(エンバーミング)』《消費マナ4》《クール:6ターン》

 効果     :死亡した味方を全回復して蘇生し、『超人』を付与する。白陶繭良はHPを1000失う。


 特殊ステータス

 『現人神』:貴女の血肉はアイテム化する。


 エピソード

 『エピソード1【赤ノ繭糸】』

 効果:『新井忠次』と同一パーティーの際、『白陶繭良』のステータスを1.2倍する。

 心に、小指に。

 人に、縁に。


 『エピソード2【切望を積み重ねて】』

 効果:『超人』を付与時、新井忠次のみ『英雄』を付与する。

 甘えさせてください。頼らせてください。助けてください。

 心臓を取り出さないで。食べないで。(すす)らないで。助けて。


 『エピソード3【幸福の絹衣】』

 効果:『白陶繭良』はその戦闘中のマナ使用の際のマナを-1軽減する。

 幸福であるということはそういうことだ。


 『エピソード4【恋慕】』

 効果:『白陶繭良』は『新井忠次』に付与する強化の効果を一段階上昇させる。

 この溢れる感情を、きっと皆は恋と呼ぶ。


                ◇◆◇◆◇


「……隠さないんだな……」

 帰還した翌日のことだ。ギルドハウスの私室に俺は繭良を呼び出していた。

 ステータスを見るためだ。できれば特殊ステータスやエピソードもと思ったが、言う前から繭良は全部を俺に見せてきた。

「恋人に隠し事なんてしないですよもう!」

 頬を赤く染めた繭良は「きゃー、もう何言わせるんですか」と俺の肩を叩いてくる。

「恋人ではないぜ。白陶先輩(・・・・)

繭良(・・)、です。忠次くん。私のことは呼び捨ててください」

「……なぁ繭良、俺はあんたの恋人じゃない。救ってやれるかもしれない。助けてやれるかもしれない。だけど、恋人じゃない」

知ってますよ(・・・・・・)。でもいいじゃないですかそれぐらい。私には何もないんですから」

「――何もないってことはないだろうに」

 繭良は何も言わない。ただ静かに微笑むだけだ。

 ……まぁ自称するだけならいいけどな、別に。

 妙な奴らが山程いるんだ。それぐらい許してやるよ。いまさらだ。

 華はいない。新しく入った人員のためにギルド施設の案内をさせている。

 昨日の会長との話し合いを思い出し、俺は少しだけ憂鬱になった。

(大それたことを言っちまったな……)

 それに、昨晩は疲れてしまってすぐに寝てしまったから、華とはまだしっかりと話せていない。

 昨日、俺は神園と敵対することになった。なってしまった。

 それでも華は神園から自由になった。

 神園は華への執着を失い、ただ敵だと認識するに至った。

 俺が華にした、なんとかしろ、という命令は達成された。

 いや、敵対したら結局意味がないんじゃないかとも思わないが、それでも解決は解決なのだ。

 そう、そもそもだ。もし俺がなんらかの手段で800億を用意できたとしてもそれで実際に華を買えるわけではない。

 金を出すだけで華が買えるなら、アメリカ軍だの魔法少女が学園に入ってくる理由がない。

 会長は華の金額を俺に言ったが、そもそも買えるわけがないのだ。

 だからそう、結局、華を手元に置くのならば神園とは敵対するしかなかったのだ。

(……あのとき華は、会長がそう決断したことをまるで俺が指示したかのように褒め称えたが――)


 ――そんなわけがないだろう。俺は、本当に何も(・・)していない(・・・・・)


 ただ、帰還したあと、軽く事情を聞いたときに華は言った。神園次郎が凡庸すぎたと。

 以前までの神園であれば。華を手放すことを選択しない。破棄しようともしない。

 神園の枷を外れ、ウィリン・ハルイドの理想たる超人へ近づいた華を、次の人形の母体にしようと画策しただろうと……。

 だが俺は思う。そうだろうか? と。

 会長が華へ使った自壊の勅令、あれほど賢明な選択はないとも思ったよ。俺も同じ立場ならそうして――

『……あ……んん……んん……』

「ちッ」

 思考の途中で色っぽい思念が流れてきて、俺は手に持っていた刀を机の上に放り投げた。

『ちょ、ちょっとセンパイ! まだ途中ですよ!!』

「うるっせぇ! 手入れしろっつーからしてやってんのになんで喘ぐんだ朝姫(おまえ)は!!」

 そもそもこれは手入れか? なんだかよくわかんねぇ手入れ道具の白い毛玉みたいなので朝姫の刀身をぽんぽん叩いてるだけだっつーのに!!

 そもそも朝姫は肉体の方の調子が万全なら手入れなんぞ必要ないんだよ!!

『だって気持ち良いから……』

 はぁぁぁぁぁ、と息を吐いた。

「とにかく、これからだ。これから。いろいろあったが、メンバーの数が揃った。合計で16名だ。その中には大罪耐性を持つ俺以外のメンバーもいる。レイドに向けての準備は順調!!」

 新メンバーの中にはSSRの白陶繭良もいる。すごいぞ! SSRだぞ!!

 だから、いろいろと問題は起きたが、何も問題はない。

 無理やりそう考えた。

 昨日、会長の前で切った啖呵は忘れていない。だが、考えない。他にすべきことは山程ある。

 だから、そうだ。全ては順調だ。問題なんかねぇんだよ。

 矛盾していることを自覚しながら、俺はとにかく前へ進むことを考える。

「追加施設は全部稼働させる。ゴーレムも揃える。バックアップを整えて、次の大罪魔王と戦うための準備をきっちりする」

「追加? 魔王? ええっと、忠次くん。よくわからないけど、私がんばるね」

 にこにこと笑う繭良が俺の服の袖を摘んで、えへへ、と微笑んだ。

 心配事はもちろんある。

 この恋人面をする厄介な女、白陶繭良。

(会長は……華でも朝姫でもなく、繭良が一番危険だと言っていた。どういうことだ? 何が危険なんだ?)

 特殊ステータスの『現人神』が気になった。

 神。(やとい)にも御神体とも呼ばれていた。

 人間ではない(・・・・・・)と明確に区別されていた。

「忠次くん、朝姫さんは私が手入れしましょうか?」

『ぜったいにやだ! センパイ以外がボクに触ったらぶっ殺すから!!』

「きゃッ!? しゃ、喋れるんだ」

 思念の直撃を喰らって繭良が目をぱちくりとさせた。

 繭良や会長についてはいろいろと確認が必要だ。すぐにでも華を交えて話す必要がある。

 だが、それはできない。

 とにかく人が揃ったのなら、ギルドの方を進めなければならない。それも今すぐに。


 ――ジューゴは、まだエリア6にいるのだろうか?


 先に進んでいるかもしれない。あいつはいつまでも同じ場所にいる男じゃない。

 だからあいつが最終エリアに行く前に、俺は追いつく。そしてあいつに、俺が勝ったところを――


                ◇◆◇◆◇


 ――早速問題が起きていた。

忠次様(かみさま)、どうしますか?」

「……そうだな。そうだろうな。ああ、俺が甘かった」

 ギルドハウスの食堂で全員に仕事を振り分け、全員で朝礼をするということで人を集めていたんだが……。

 いるのはアンドリュー、風斬、千潮くん、逢糸、繭良、朝姫、華。

 10人の新メンバーに加えて出部までいねぇ。いや、出部はいい。どうせ部屋で惰眠を貪ってるんだろうが、あいつはよくやっている。

(出部は後で俺直々に叩き起こす。つかあいつ、繭良たちが加入してから部屋に籠もる回数増えすぎだろ)

 そのたびに俺が呼びに行くのもめんどくさい。まぁ、大罪が暴発してる可能性を考えれば俺しか確認に行けないんだが。

 出部を考えて俺が吐いたため息を勘違いしたのか、罪悪感を覚えたらしい繭良があわあわと慌てた様子を見せる。

「え、えっと忠次くん。わ、私が」

「ああ、いや、すまん。このため息は違う。とにかく、だ。これはもう繭良の問題じゃねぇから。俺のギルドの問題だ」

 つかよ、気合入れて繭良を助けるって言うから連れてきたんだぜ。

 その決意が三日。三日で崩れた。繭良を連れて行くときにあいつらにエピソードが発生してねぇから嫌な予感はしたがよぉ。

 つか連中、怠惰の大罪でもあるのかよ?

「いえ、特殊ステータスやエピソードが現れるほどの人はいませんでしたよ忠次様」

「心を読むな」

「すみません」

 舌を出しててへへ、みたいな顔をする華。

 まー大罪があるなら、大罪耐性取らせてでぶちんの保険にするけどな。

「センパイ、誅罰代わりにボクがさっくり殺してきましょうか?」

「殺すな」

 朝姫の進言を退け、俺は仕方なしと覚悟を決めた。

「いいよ。わかった。わかったよ俺が悪かった。あいつらを人間扱いしすぎてた」

「おいおい新井、物騒だな。どーすんだよ。叱りつけるのか?」

 動揺した様子の千潮くんに、俺は考えていたことを実行する良い機会だと口角を釣り上げた。

「いや、別の手段を使う。これはこれで手間だが、特殊ステータス実験のついでだ。繭良(・・)

「忠次くん? えっと、私ですか?」

「歌って踊れるか?」

「うた? おど、ええと? その、どういう?」

「いや、いい。歌って踊れるように俺がしてやる。ごちゃごちゃしちまったが、俺は最初はそのために繭良を勧誘するつもりだったんだよ」

 そう、考えがあった。会長のところで遠井ココアのステータスを見たときに思ったことだ。

 俺たちのパーティーには足りない人材がいる。それは今後の戦いに必須の人材で、それをどうにかしたくて俺は白陶繭良を勧誘しようと最初考えたのだ。

 グズどもはそのついでだ。施設は大事だが絶対ではない。

 だから、繭良を歌って踊れるようにするのはもともとやろうとしていたことで、これは繭良を積極的にそういうようにするのにちょうどいい機会だった。

 ああ、そのついでにグズどもを巻き込んでやる。あの怠惰なグズどもに自分から働かせてほしいと言わせてやるよ。

 そして俺は、俺の言葉を待つ、俺のギルドのメンバーたちに向けて宣誓した。

「ガチャと握手券。この2つを俺のギルドに実装する」

 強欲の大罪発症は華の目で防げる。

 閾値を監視して俺がグズどもを思い通りに操ってやる。


 ――悲鳴をあげるまで搾り取ってやる。


 悪魔の計画であった。


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