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ソシャゲダンジョン  作者: 止流うず
第三章 ―神を包む繭―
69/99

002 難度2


 ――『メンテナンスが終了しました』

 ――『難度が上昇しました 現在【難度2】』

 ――『難度の上昇に伴い【クエスト機能】が解放されました』

 ――『難度の上昇に伴い【ギルド機能】の一部が解放、また施設の上限レベルを上昇します』

 ――『難度の上昇に伴い【装飾品装備枠】が+1されました』


 怪獣王ベルフェゴールを倒したあとにメンテナンスが行われることはわかっていた。

 なのでメンテナンス日を休養日に設定した俺たちは、エリア『朱雀の養鶏場』に建設したギルドハウスの食堂で雑談をしていた。

 もちろんやるべきこと、しなければならないことはたくさんある。一日たりとも休むわけにはいかない理由もあったが、毎日が毎日それでは精神的に疲れてしまう。

 強敵を倒したあとなのだ。一日だけでもいい、休養をとるべきだった。

忠次様(かみさま)、追加された要素の検証をしますか?」

 ギルドハウスにある娯楽室に置いてあった六面体のパズルを持ってきて(写真を撮るように風景を写し、ボタンを押すと設定されたピース数に分解する魔法のパズルだ)、難易度が高すぎてクソすぎると愚痴っていた俺に話しかけてくるのは、俺の従者である神園(かみぞの)(はな)だ。

 長く艶のある黒髪を腰のあたりまで伸ばした、スタイル抜群で、人外の美を持つ傾国の少女。

 存在するだけで周囲の人間を魅了してやまない俺より一歳年上(せんぱい)の女は表示させたステータスからギルドの項目を呼び出して早速追加要素を確認している。

「いや、いい。明日にしろ。今日は休養日にするって言っただろ」

「わかりました。あ、そのピースは違いますよ。そこに嵌めるならこのピースですね」

 華に指摘され、俺は摘んでいたピースをテーブルに転がした。

 華はテーブルからピースを一つとって、俺の手に持たせると、手を添えてパズルにピタリと嵌めてくる。

「ほら、ぴったり」

 華は俺の手の甲を、くるくると円を描くように指でくすぐると「そろそろクッキーが焼けるので見てきますね」と調理場の方に向かっていく。

 女子特有の甘い匂いが鼻に残っている。つまらなそうに俺は鼻を鳴らすと、パズルを再開しようと次のピースを探そうとして。

「センパイセンパイ! 見てください! ほら!!」

 隣の椅子に座っていた後輩、赤鐘(あかがね)朝姫(あさひ)が抱きついてくる。

 彼女に残った人間性を示すかのようにメッシュのように黒髪を残した、赤い髪と赤い瞳をした背の低い少女。

 神園と血縁らしく、華に似た顔の作りの少女だ。また、身体性能においては俺の遥か上をいく怪物でもある。

 そんな朝姫が俺の顔の前に、自身のステータスウィンドウを持ち上げるようにしてスライドさせてきた。


 ――ステータスウィンドウ。それは所持者の情報を記した、空中に浮かぶ奇妙な透明な板だ。


「ほらほら! これ! 『願いの玉』で天使にお願いした奴! 叶ってますよ!! ほら!」

 歓喜した朝姫がぎゅうぎゅうと俺の身体に力を込めて抱きついてくる。以前と違い肉がついたとはいえ、薄い肉の感触は楽しいものではない。

 というか、こいつの『願い』の確認は個人的にすごく遠慮したいのだが、あからさまに嫌がって朝姫の機嫌を損ねるのも面白い話ではない。

(華も朝姫も、忠誠を向けてくるとは言っても、奴隷ってわけじゃないからな……)

 自身を俺の信者と自称する華や、道具を自称する朝姫の二人だが、俺の行動で好悪を覚えることは当然ある。

 もちろん機嫌を損ねようが見限られることはないだろうが、相応に行動力(パフォーマンス)は低下するだろう。

 内心のみでため息をつく。そう、結局避けられないなら受け入れるしかないのだ。

「ったく、どんなもんなんだ? その願いってのは」

 俺は、手に持っていたパズルをテーブルに置いた。そうして、ちょうどよい位置にある朝姫の頭を腕で抱きかかえれば、きゃー、なんて喜びながら朝姫がもぞもぞと腕の中で頭を動かして位置を変えてくる。くすぐったい。

「はー『魂魄武具化』ね。これか」

「ですです。そうです」

 確かに、見れば朝姫のステータスに『魂魄武具化』というコマンドが増えている。念のために自分のステータスを確認してみるが、俺のステータスには存在しないコマンドだ。朝姫専用のコマンドだった。

 願いの内容は聞いているのでコマンドの中身は想像ができる。

(ああ、クソ。冗談じゃねぇってことだよな。マジでやっちまうのかよ……)

 そのコマンドには生理的な嫌悪がある。だが、確認しないのも怖かった。

 嬉しがっている朝姫の小さな手をとって、コマンドを押してみる。

 天使(アルミシリア)の組んだシステムは俺がこんな気分でも故障一つなく稼働する。畜生。読み込みや回線落ちなどで待たされることなどなく、赤鐘朝姫の武具化先はすぐに表示された。

「……あー、そうくるのか」

 3つあった。うぇぇ、(おぞ)ましすぎる。3つ(・・)もあったのだ。


 名称【死病剣朝姫】 レアリティ【SSR】 レベル【-】

 HP【-1000】 ATK【+2600】 属性【無】

 スキル:『死病パンデミック』

 効果1:マナを2消費することで敵味方全員に『毒』を付与する。【耐性貫通】

 効果2:装備者以外に前衛がいる場合、装備者は敵のターゲットにならない。

 効果3:装備者の必殺技を『死病特攻・同病相討』にする。

 説明 :赤鐘朝姫の魂を変換した長剣。(やまい)もつ(つるぎ)


 名称【病棟槍孤独姫】 レアリティ【SR】 レベル【-】

 HP【+800】 ATK【+400】 属性【冬】

 スキル:『接触不可自我要塞(メンタルゼロ)

 効果1:自身の状態異常と弱体化を完全治療する。《クール:4ターン》

 効果2:装備者の必殺技を『感染経路不明の悪夢』にする。

 説明 :赤鐘朝姫の魂を変換した長槍。醒めない悪夢を(もたら)す刃。


 名称【剣聖刀赤鐘】 レアリティ【SSR】 レベル【-】

 HP【+800】 ATK【+800】 属性【地母】

 スキル:『赤き鉄の伝承』

 効果1:刃のある武器を持った味方全体のATKを上昇(大)する(常時)。

 効果2:マナを1消費して味方全体のATKを1ターン上昇(特大)する。《クール4ターン》

 効果3:装備者の必殺技を『刀剣活劇ブレイドダンス復活の剣聖少女(リバースエッジ)』にする。

 説明 :赤鐘朝姫の魂を変換した刀。赤鐘の剣聖たる所以(ゆえん)を知れ。


「バトル中はマナを1消費で『刀身変換』が使える。『刀身変換』は戦闘中に武具の種類を変えるコマンド。ただし『刀身変換』をした場合パッシブスキルの効果は引き継がれない」

 つまり『赤き鉄の伝承』が持つ常時効果は、『剣聖刀赤鐘』の状態でしか発揮されないというわけか。

(単純な強さなら魔王剣ルシファーの方が上だが、様々な効果を持つ武具が手に入ったと考えるなら有効だ)

 特に戦闘回数が限られる裏ステージのボスである大罪魔王たちに対してこの特性は強みとなる。

 それに、これら変換先の剣は朝姫のジョブを元にして作られているようだった。

(畜生、いやだな。これ、まだまだ増えるのか……?)

 とはいえ不気味だが、増えた刀身の中に敵の弱点属性をつける刀身があるならば、純粋な性能で魔王剣ルシファーを超えることも不可能ではないだろう。

「どうです? どうですか!?」

 期待して俺を見てくる朝姫に対して、内心の嫌悪を出さないように俺は褒めてやる。

「ああ、よくやったぞ」

「ですよね! ボクのナイスな選択ですよ! センパイ褒めて褒めて!!」

 武具となることを自ら望んだ(おぞ)ましい少女は、頭を撫でる俺の手に手を添えて、むふふーと笑った。

 自分が武器になることに、なんら不安を抱いていない精神の怪物がここにいた。俺は内心を表に出さないようにしながら笑みが崩れないように注意を払う。

 ここまでしてくれたのだ。嫌悪してばかりでも可哀そうだ。せめて美点を探してみるか。

 俺は珍しくアルミシリアが用意したルール欄の部分に目を向けた。

 もしかすると、隠しステータスが見えるようになった華がいるからわざわざ隠さなくてもいいと判断したのか?

 だったら今後は多少親切になるのかもしれないな。

(違う。そうじゃない。思考が横道にそれるのは傲慢のよくない特性だな)

 今は褒めるときだ。俺はルール欄を眺めながら朝姫に言ってやる。

「あぁ、この俺専用ってのが気に入ったよ」

 ですよね! と朝姫が『魂魄武具化』のルール欄を自慢げに掲げた。


 バトル時はマナを1消費で『刀身変換』を行える(1ターンに1回)。

 赤鐘朝姫の持つ特殊ステータスが使用可能になる。

 装備者は赤鐘朝姫から精神汚染を受ける。

 新井忠次専用である。

 がんばれー! byアルミシリア


 精神汚染という単語は見なかったことにした。


                ◇◆◇◆◇


 筋肉が衰えない程度に運動をし、頭が錆びない程度に勉強をしたあとは、華が作った夕食を食べ、食堂で再びパズルに手を付けた。

 知的パズルの一種であるらしいこれはどこかで手順を間違えると絶対に完成しないようで、そういう場合はいくつかピースをばらして、また組み直す必要が出てくる。

「難しいな」

「昼間からやってますけど。それ、楽しいですか?」

 風呂上がりの朝姫は狂王乳を飲んでいたのか、口の周りに白い髭をつけていた。俺が指摘すればごしごしと袖で拭って、俺の対面の椅子に座る。

「いや、全然。回線繋がってるスマホがあったらソシャゲやるぐらいにはつまらない」

 そうですか、という顔の朝姫。

 ここで諦めるのはなんとなく悔しいので完成までは頑張ってみようと思うのだが、俺の頭でこれ完成できんのかな……。

「忠次様、コーヒー飲みますか?」

「飲むけど砂糖いれてくれ」

 華が角砂糖の入った瓶を持ち上げてこちらに見せてくるので2つ入れてくれと頼んでから俺はピースの一つを手にとった。


 一日かけて完成度は一割。

 さて、明日はエリア2に戻って、エリア3に進むとしよう。

 休養は終わりだ。



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