026 正月ジョブ
名称:【新春忠次】 レアリティ【R】
ジョブ【着物男子】 レベル【1/40】
HP【520/520】 ATK【320】
リーダースキル:『男の友情』
効果 :性別【男】のHPを小上昇する。
スキル1 :『言祝ぎ』《クール:5ターン》
効果 :味方単体のHPを小回復する。
スキル2 :『お年玉袋』《常時》
効果 :エリア『饕餮牧場』のモンスタードロップを+1する。
スキル3 :『なし』
効果 :『なし』
必殺技 :『新春大斬撃』《消費マナ4》《クール:3ターン》
効果 :通常攻撃の2.5倍の威力で敵1体に攻撃する。
名称:【祝福の紅白・華】 レアリティ【LR】
ジョブ【新春巫女】 レベル【1/100】
HP【1160/1160】 ATK【580】
リーダースキル:『満願成就・病魔退散』
効果 :パーティー全体への状態異常を無効化する。
スキル1 :『晴れ渡る健康第一』《常時》
効果 :回復魔法の効果を単体からパーティー全体に変更する。
スキル2 :『降り注ぐ大吉』《常時》
効果 :味方回復時、ステータス上昇効果をランダムに与える。
スキル3 :『特別増量お年玉♪』《常時》
効果 :あらゆるエリアでのモンスタードロップを+3する。
必殺技 :『私が祝福する全て』《消費マナ:8》《クール:8ターン》
効果 :味方全体のHPを全回復し、3ターンのATK上昇(特大)を与える。
名称【賀正の奇跡・朝姫】 レアリティ【SSR】
ジョブ【振り袖女子】 レベル【1/80】
HP【920/920】 ATK【520】
リーダースキル:『正月の聖戦』
効果 :パーティーの前衛のHPとATKを1.5倍する。
スキル1 :『剣の聖たる者』《常時》
効果 :刃のある武器を持った味方全体のATK上昇(大)する。
スキル2 :『絶死・剣戟舞踏』《クール4ターン》
効果 :マナを1消費して味方全体のATKを1ターン上昇(特大)する。
スキル3 :『特別なお年玉袋』《常時》
効果 :あらゆるエリアのモンスタードロップを+2する。
必殺技 :『刀剣活劇・復活の剣聖少女』《消費マナ5》《クール:5ターン》
効果 :敵1体にATK3倍で3回の攻撃
◇◆◇◆◇
(華に回復ジョブが発生したってことは、つまりフレンドの栞は……)
「センパイ? どうしたんです?」
「あ、ああ、いや、なんでもない」
ジョブチェンジを果たした朝姫はそんな俺の様子をふーんといった感じで見ていたが突如なにか思いついたのか、振り袖の袖を口元にあてて、生意気そうににやりと笑ってみせる。
「どーですかセンパイ! かわいいでしょボク!」
身体に未だ肉は付ききっていないが、ある程度肉の戻ってきた朝姫の顔は普通に、というか素直に美少女に思える。
……華に少しだけ顔つきが似ていると思ったのは無視しておこう。
「おー、かわいいかわいい」
「もっと心を込めて!!」
両手をこちらに向けて突っ込んできたので、よしよしと頭を撫でてやるとえへへと頬を緩めて喜んでいる。これが犬ならしっぽでもパタパタ振るようなイメージだ。
ふと、撫でている髪に少し赤みが混じっていることに気づく。染めた、か? 気のせいにするには少し赤の量が多い。
「忠次様」
朝姫を撫でつつ不思議な色合いの髪をぼうっと眺めていれば、耳元で声がする。
「華か」
傍らを見れば、華がすねたように俺を見上げていた。
俺の方が高いが、華との間に身長差はそれほどない。だからこうして見下ろせるということは、恐らく下から見上げるというポーズをするためにわざわざ膝を少し曲げているのだ。
(あざといなコイツ)
新しい衣装は小袖に緋袴、神社で見るような巫女装束を着ている。
ほう、あざとさに覚えた呆れも、華の衣装の新鮮さに上書きされる。
「どう、ですか?」
華が顔を近づけて問うてくる。
「ああ、似合ってるよ」
綺麗だ、とついでに言ってやった。悔しいが本心だ。そして褒めるのに躊躇はない。言わない方が怖い。朝姫にこれだけ構っている以上、機会を見て華を褒めるのは重要だ。喜ばせすぎて悪いということはない。
主従の問題もあるが、朝姫に対する嫉妬が怖かった。
人が加わって俺たちの関係も変化している。だから、大罪が生まれるほどではないが嫉妬されている。それもかなり強く。
(しかし、華に大罪は生まれないのか?)
俺が思うほどに強い嫉妬ではない? それとも――そこまで考えて華が俺の手に手を添えてくる。
「わたしも撫でてください。忠次様」
朝姫が加わってから華の積極性が増している。
養鶏場に閉じ込められていた頃は、華がすり寄ってくることがあっても、ここまで求められることはなかった。
――面倒なことに、俺たちは以前のままではいられないのだ。
(いつまで……)
この華の欲望は、押し留められるのか。華の頭に手を添える。絹のような手触りの黒髪。いつまでも撫でていたくなるような温かさ。
目を細めて華は喜んでいる。まだ頭を撫でてやっていた朝姫が不満の声を上げているが、少し力を込めてこちらも撫でてやれば喜びと共に黙り込む。
この2人は、俺が求めればきっと応えてくれるだろう。そういう確信はある。だけれど俺は……。
(くそ、頭のおかしい奴らばっかりだ。栞に会いてぇよ)
俺は華には恋をしない。
俺は朝姫には恋をしない。
2人が俺を求めるように、俺には俺の求めるものがある。
(そのために俺は)
――俺を愛してくれる少女たちを使い潰すのだ。
俺の傲慢が嗤っていた。俺を嘲笑っていた。華を嘲笑っていた。朝姫を嘲笑っていた。
だけれど俺は、その傲慢を嬉しく思う。
この傲慢がある限り。
――俺はこの2人を愛さない。
栞に対して誠実でいられる。その事実に、少しの安堵を俺は得る。
(ただまぁ、栞は別に、俺のことを愛してはくれねーけどな……)
栞の一番はジューゴだ。
最初から最後まで、栞の一番はジューゴなのだ。
そこに俺が入り込む余地はない。
その事実に腹の内の嫉妬が蠢き、羨ましいと泣いて喚く。
だがそれもまた、栞らしさで。
それこそが栞で。
俺の愛する栞の良い部分だった。




