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ソシャゲダンジョン  作者: 止流うず
第二章 ―折れた魔剣―
58/99

026 正月ジョブ


 名称:【新春忠次】 レアリティ【R】

 ジョブ【着物男子】 レベル【1/40】

 HP【520/520】 ATK【320】

 リーダースキル:『男の友情』

 効果     :性別【男】のHPを小上昇する。

 スキル1   :『言祝ぎ』《クール:5ターン》

 効果     :味方単体のHPを小回復する。

 スキル2   :『お年玉袋』《常時》

 効果     :エリア『饕餮牧場』のモンスタードロップを+1する。

 スキル3   :『なし』

 効果     :『なし』

 必殺技    :『新春大斬撃』《消費マナ4》《クール:3ターン》

 効果     :通常攻撃の2.5倍の威力で敵1体に攻撃する。



 名称:【祝福の紅白・華】 レアリティ【LR】

 ジョブ【新春巫女】 レベル【1/100】

 HP【1160/1160】 ATK【580】

 リーダースキル:『満願成就・病魔退散』

 効果     :パーティー全体への状態異常を無効化する。

 スキル1   :『晴れ渡る健康第一』《常時》

 効果     :回復魔法の効果を単体からパーティー全体に変更する。

 スキル2   :『降り注ぐ大吉』《常時》

 効果     :味方回復時、ステータス上昇効果をランダムに与える。

 スキル3   :『特別増量お年玉♪』《常時》

 効果     :あらゆるエリアでのモンスタードロップを+3する。

 必殺技    :『私が祝福する全て』《消費マナ:8》《クール:8ターン》

 効果     :味方全体のHPを全回復し、3ターンのATK上昇(特大)を与える。



 名称【賀正の奇跡・朝姫】 レアリティ【SSR】

 ジョブ【振り袖女子】 レベル【1/80】

 HP【920/920】 ATK【520】

 リーダースキル:『正月の聖戦』

 効果     :パーティーの前衛のHPとATKを1.5倍する。

 スキル1   :『剣の(ひじり)たる者』《常時》

 効果     :刃のある武器を持った味方全体のATK上昇(大)する。

 スキル2   :『絶死・剣戟舞踏(メメント・モリ)』《クール4ターン》

 効果     :マナを1消費して味方全体のATKを1ターン上昇(特大)する。

 スキル3   :『特別なお年玉袋』《常時》

 効果     :あらゆるエリアのモンスタードロップを+2する。

 必殺技    :『刀剣活劇ブレイドダンス復活の剣聖少女(リバースエッジ)』《消費マナ5》《クール:5ターン》

 効果     :敵1体にATK3倍で3回の攻撃


                ◇◆◇◆◇


(華に回復ジョブが発生したってことは、つまりフレンドの栞は……)

「センパイ? どうしたんです?」

「あ、ああ、いや、なんでもない」

 ジョブチェンジを果たした朝姫はそんな俺の様子をふーんといった感じで見ていたが突如なにか思いついたのか、振り袖の袖を口元にあてて、生意気そうににやりと笑ってみせる。

「どーですかセンパイ! かわいいでしょボク!」

 身体に未だ肉は付ききっていないが、ある程度肉の戻ってきた朝姫の顔は普通に、というか素直に美少女に思える。

 ……華に少しだけ顔つきが似ていると思ったのは無視(スルー)しておこう。

「おー、かわいいかわいい」

「もっと心を込めて!!」

 両手をこちらに向けて突っ込んできたので、よしよしと頭を撫でてやるとえへへと頬を緩めて喜んでいる。これが犬ならしっぽでもパタパタ振るようなイメージだ。

 ふと、撫でている髪に少し赤みが混じっていることに気づく。染めた、か? 気のせいにするには少し赤の量が多い。

「忠次様」

 朝姫を撫でつつ不思議な色合いの髪をぼうっと眺めていれば、耳元で声がする。

「華か」

 傍らを見れば、華がすねたように俺を見上げていた。

 俺の方が高いが、華との間に身長差はそれほどない。だからこうして見下ろせるということは、恐らく下から見上げるというポーズをするためにわざわざ膝を少し曲げているのだ。

(あざといなコイツ)

 新しい衣装は小袖に緋袴、神社で見るような巫女装束を着ている。

 ほう、あざとさに覚えた呆れも、華の衣装の新鮮さに上書きされる。

「どう、ですか?」

 華が顔を近づけて問うてくる。

「ああ、似合ってるよ」

 綺麗だ、とついでに言ってやった。悔しいが本心だ。そして褒めるのに躊躇はない。言わない方が怖い。朝姫にこれだけ構っている以上、機会を見て華を褒めるのは重要だ。喜ばせすぎて悪いということはない。

 主従の問題もあるが、朝姫に対する嫉妬が怖かった。

 人が加わって俺たちの関係も変化している。だから、大罪が生まれるほどではないが嫉妬されている。それもかなり強く。

(しかし、華に大罪は生まれないのか?)

 俺が思うほどに強い嫉妬ではない? それとも――そこまで考えて華が俺の手に手を添えてくる。

「わたしも撫でてください。忠次様」

 朝姫が加わってから華の積極性が増している。

 養鶏場に閉じ込められていた頃は、華がすり寄ってくることがあっても、ここまで求められることはなかった。


 ――面倒なことに、俺たちは以前のままではいられないのだ。


(いつまで……)

 この華の欲望は、押し留められるのか。華の頭に手を添える。絹のような手触りの黒髪。いつまでも撫でていたくなるような温かさ。

 目を細めて華は喜んでいる。まだ頭を撫でてやっていた朝姫が不満の声を上げているが、少し力を込めてこちらも撫でてやれば喜びと共に黙り込む。

 この2人は、俺が求めればきっと応えてくれるだろう。そういう確信はある。だけれど俺は……。

(くそ、頭のおかしい奴らばっかりだ。栞に会いてぇよ)

 俺は華には恋をしない。

 俺は朝姫には恋をしない。

 2人が俺を求めるように、俺には俺の求めるものがある。

(そのために俺は)


 ――俺を愛してくれる少女たちを使い潰すのだ。


 俺の傲慢が嗤っていた。俺を嘲笑っていた。華を嘲笑っていた。朝姫を嘲笑っていた。

 だけれど俺は、その傲慢を嬉しく思う。

 この傲慢がある限り。


 ――俺はこの2人を愛さない。


 栞に対して誠実でいられる。その事実に、少しの安堵を俺は得る。

(ただまぁ、栞は別に、俺のことを愛してはくれねーけどな……)

 栞の一番はジューゴだ。

 最初から最後まで、栞の一番はジューゴなのだ。

 そこに俺が入り込む余地はない。

 その事実に腹の内の嫉妬が蠢き、羨ましいと泣いて喚く。

 だがそれもまた、栞らしさで。

 それこそが栞で。

 俺の愛する栞の良い部分だった。



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