プロローグ
僕は 神崎 唯人 18歳の高校3年生。
今は受験も終わり、無事進学先も決まって残りの高校生活をなんとなく過ごすだけの、
ただの暇な時期に突入している。
そんな中でも当然授業はあるわけで、かといって勉強する気などさらさらない。
そうとなれば僕がすることは、ラノベをひたすら読み続けるか、絵をだらだらと描くことだ。
「この程度の問題がわからんで何が受験生か!! 大体お前らは…」
なぜかやる気に満ち溢れた教師の解説を聞き流し、今日も僕は絵を描いている。
といっても、ラノベに出てくる挿絵をただただ写しているだけなのだが。
暇さえあれば常に絵を写して、満足してまた次の絵を写す。
そんなことばかりしているやる気のないクラスメイトなど当然誰も気にかけようとしない。
そう、世間一般でいうボッチである。
この趣味のせいで友達がいなくなったことは知っているが、僕はこのことに誇りを持っている。
絵を写すことに関して言えば誰にも負けないと思っているし、相当の努力もした。
ゆえに周りの目を気にすることなく黙々と絵を描き続けている。
そんなことをしながら今日も一日が過ぎ、そそくさと帰っていく。
だが、両親は共働きで僕がいる時間は常に家にはいないし、一人っ子なので出迎えてくれる人などいない。
自分の部屋に戻り、ベッドに倒れこむ。
「そういや、今日は新刊の発売日だっけか…」
最近ハマっているラノベ(特に挿絵が素晴らしい)の新刊の発売日だったことを思い出した僕は、
だるい体をもう一度ベッドから起こし、近所の書店に行くことにした。
歩いて15分程度なので、めんどくさくはあるが歩いて向かうことにした。
ほどなくして書店に着き、目的の新刊を購入し少し店内をながめたのち、帰ることにした。
書店から出るとあたりはもう薄暗くなっていた。
複雑な住宅地の路地をひたすら歩き、家までもう少しだと思ったその時、
突然、路地の両側の壁に淡い光が見えたかと思うと、一瞬でその光に飲み込まれてしまった。
(あれは、魔法陣…?)
僕は意識が途切れる寸前にとても緻密で複雑な模様を見た。心奪われるほどに綺麗な模様だった。
(これってもしかして…! いや、でも壁って…普通地面とかじゃないのかよ…)
そして僕の意識は光の中に落ちていった。