表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者エドワードがベタに魔王を倒すまで  作者: 山川 景
第1章 ローゴン討伐
5/57

その四 森ゴブリン

 コウタはエドワードと並んで歩き、瀕死になっていた経緯を話していた。


「おいら、近くの村に住んでるんだが、食料調達の為に時々この森さ来るんだ。今日だっていつも通り来てた訳なんだけども、ほら、最近この辺の魔物おかしいだろ? この森の魔物も変わっちまってなぁ。見たことないゴブリンがいて、そいつがまたクソ強くってなぁ。やられちまったんだ」


 どんなゴブリンだったんだと、エドワードが尋ねる。


「んー、肌の色が赤色だって以外は、普通のミニゴブリンと見た目は同じなんだけども。なんせ素早くてなぁ。枝から枝へシュシュっと動いて、いつの間にか頭殴られてたべ」


 そのゴブリンは、世界では森ゴブリンと定義されている種だ。少し前まではハイラント森にはいなかったが、最近住み着いたらしい。


「おいらも、今日はもう村さ帰るべ。エドワードの目指す塔と方角は同じだし、一緒に森を抜けよう。もうあいつと出くわさないといいなぁ」



 コウタと歩くこと数分。一体のミニゴブリンが、前から襲いかかってきた。


「エドワード、ここはおいらに任せろぉ!」


 コウタがくわを振り回して、ミニゴブリンを撃退してくれた。少しハラハラする腕前だが、コウタも戦えるようだ。


「どうだっぺ! これでも村一番のくわ使いなんだべ!」


 コウタが自慢げにくわを掲げてエドワードを見るが、エドワードは視線を他の場所に向けていた。


「エドワード?」


 森に一陣の風が吹き抜ける。簡単に森を抜けさせてくれないみたいだ、と、エドワードが呟いた。今までとは違う、魔物の気配を感じたのだ。

 その直後、コウタの後頭部を、何者かが殴った。


「いでえ!」


 殴った何者かはすぐに木の中へと消えていき、姿をくらませた。

 エドワードがコウタに駆け寄る。コウタは涙目で後頭部を押さえ、エドワードへ伝える。


「出た! あのゴブリンだ! また出くわしちまった!」


 エドワードは周りを見渡す。ガサガサと、周囲の木々の間を飛び回る、赤い影が見えた。森ゴブリンだ。影を目で追おうとするが、速い。追いきれない。

 そうしていると、今度はエドワードが後頭部を殴られた。


「ひゃあ、エドワード! なんだべ、後頭部ばかり!」


 一発のダメージは思ったよりなかったが、何度も喰らうとさすがにマズそうだ。森ゴブリンが木々の中へ逃げ戻るところまでは目視できるが、木から木へと移動する間の動きは素早く、とても目で追跡はできない。

 また、エドワードは頭に一撃を喰らった。血が、頭から一筋垂れてきた。


「ぐぞー、セコイ魔物だべ!」


 横でコウタが、悔しそうにくわを握り込んでいる。

 森ゴブリンは相手にせず、森を走り抜ける方がいいかとも考えた。が、それではこの先、コウタがこの森で食料を調達することができないままになる。

 またエドワードは殴られた。――三発目。

 それに、ここまで殴られて、逃げるのはシャクだ。エドワードは意識を集中させ、剣と盾を握る手に力を込めた。


 あいつ、気配を殺すのが下手だな。


 エドワードはそれに気づいた。思えば最初から気配はダダ漏れだったし、木々の中を這い回るときに音もする。エドワードは目を閉じた。視覚は意味がないのだ。


 ザザザ――。


 森ゴブリンが移動する音が、鮮明に聞こえる。その気配も分かる。

 やがて、動きが止まった。狙いをつけ、木から跳躍し迫ってくる。今度は、コウタの後頭部へ――。


「えっ」


 コウタの後頭部に、何かの液体がかかった。それは、森ゴブリンの体液だった。振り返ると、森ゴブリンは空中で、横から伸びてきていた剣に貫かれていた。エドワードが突き刺した剣だ。

 剣をなぎ払って森ゴブリンの残骸と体液を飛ばし、エドワードはふぅ、と息をついた。


「た、倒したのか!?」


 エドワードは剣を鞘に収めて、こくりと頷く。


「ひゃああ、すっげ〜なおめェ!」



 エドワードとコウタは、ハイラント森を抜けることができた。久々に感じる直射日光が眩しい。

 エドワードは薬草を頬張る。頭から、先ほどのダメージが消えていく。薬草は残り四回分。


「いやぁ、どーなることかと思ったっけど、エドワードのお陰で助かったっぺよ。あんがとなぁ」


 エドワードは遠慮がちに笑う。

 進行方向には、高くそびえ立つ古い石造りの塔が見えた。あれが、付近の魔物の根城かつ、魔物のボスであるローゴンがいる塔だ。


「あの塔へ行くっぺか?」


 エドワードは塔を見たまま頷く。


「じゃあ、おいらもお供するべ!」


 コウタはそう言って、力こぶを作っていた。


「助けてくれた恩返しをしねぇとなぁ。ローゴン、だっけか? そいつを倒すまで、一緒に行ってやるっぺよ」


 エドワードは危ない、申し訳ないと断ったが、コウタは引き下がらない。最終的にはエドワードが折れて、コウタについてきてもらうことになった。エドワードは、素直にコウタの厚意に感謝することにした。


 ハイラント王国周辺の平和のため、ローゴンの待ち受ける塔へ、二人は進んでいった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ