表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者エドワードがベタに魔王を倒すまで  作者: 山川 景
第1章 ローゴン討伐
14/57

その十三  変わり果てた故郷

 ずんっ、と、大きな地震がした。走るエドワードが、思わずよろめいてしまう程の規模のものだ。

 嫌な予感が、加速する。エドワードは眼前に見えてきたハイラント森へと、突っ走っていく。


 ――何だ!?


 そのとき――森の中から、大量のミニゴブリンが、こちらへ向けて飛び出してきた。舌打ちをしたエドワードは立ち止まり、手の折れた長剣を構える。

 が、どうにもミニゴブリン達の様子がおかしい。走行してきているその魔物の群れは、エドワードを迎え撃つためというより、何かから逃げているかのように、怯えて見えた。

 実際に、エドワードには目もくれず、ミニゴブリン達はエドワードの後方へと走り去っていってしまった。


 どういう事だ……?


 この先で、ミニゴブリンが逃げ出すほどの「何か」が起こっている――もしくは、それほどの「誰か」がいる、というのか。

 エドワードは、ハイラント森へと入った。

 何の気配もない。魔物はおろか、生き物の気配すらしない。もぬけの殻だ。

 最短で森を抜け、一目散にハイラント王国を目指す。広々とした平野の先には、もうじき城が見えてくるはずだ。


 おかしい――。


 そう、見えてくるはずなのだ。城の外観が視認できる距離に、もうエドワードはいるはずだ。それなのに。


 おかしい――!!


 あるはずのものが、見えない。

 頭が真っ白になったエドワードは、ただひたすらに、故郷へ向けて平野を駆けていった。



 嘘だ。


 エドワードは、ハイラント王国へと辿り着いた。

 確かに、ここだ。


 だが、彼の目の前には、見覚えのない焦土が広がっているだけだった。


 嘘だ。


 焼け焦げ、崩れ去り、全てが無残に破壊されている。

 微かに、一際大きな瓦礫のてっぺんに、ハイラント城の名残が見て取れた。それが、思い違いであってほしいというエドワードの願いを打ち砕く。

 ハイラント王国は、壊滅してしまっていた。


 どうして――。


 焦土の前で、脱力したエドワードが両膝をつく。


 何で。


 誰も、生き残ってはいないのか。その問いには、すぐに答えが用意できた。目の前に広がる惨状は、運良く誰かが生き残っているかもしれないという可能性を残さぬほど、絶望的で凄惨なものだった。


 誰が――。


 ふと、顔を上げたエドワード。

 その視線の先に、誰かがいた。空中に、誰かが立っていた。

 角の生えた髑髏しゃれこうべの面のようなもので目元を覆ってはいるが、エドワードと同じ歳ほどの青年に見える。真っ黒な和服と血のように赤い腰布が、空中で怪しくなびいていた。


「素晴らしいお力です」


 その横で、ローゴンの塔にいた、あの魔物の少女が話しかけていた。翼を羽ばたかせながら。


「もうお帰りになられますか? 魔王様――」


 エドワードの意識には少女の魔物は入っておらず、ただ、魔王と呼ばれたその者を見つめていた。


 そうか――。


 血が滲むのではないかというほど、折れた長剣の柄を強く握る。


 お前の仕業か!!


 憤怒の形相を浮かべたエドワードは、焦土の上に漂う魔王へ向けて、一歩を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ