第六話
「俺があいつらを引き付ける。その間に村へ<防御空間>を張れ!」
「わかったわ!」
黄の竜に村を任せ、赤い竜は魔力を込めた咆哮を上げました。
明らかに異質な魔力に驚いた魔人たちが、いっせいに彼へと視線を向けます。そんな魔人たちの集団に、赤い竜は躯の内にある魔力を解き放ち、勢いよく飛び込んでいきます。
「なんだお前は!」
「見ての通り、竜だ!」
赤い竜の姿に、魔人たちは震え上がりました。
他の竜とは比べものにならないほどの強大な魔力が、彼を包み込むように光っていたのですから。
魔人たちが竦んだその一瞬を、赤い竜は見逃しません。
「<魔光矢>!」
手加減のない一撃を、敵へと叩き込みます。
魔人たちは反撃する暇もなく、繰り出された無数の光の矢の前に次々と倒れていきます。
「村を襲ったこと、後悔するがいい!」
「くそっ……!」
力の差は明らかで、たった一頭で戦う赤い竜が、魔人たちには恐ろしくてたまりません。
「退け! 退くんだ!」
どう足掻いても勝てないと判った魔人たちは、急いで退散していきます。
「二度と村へ近づくな!」
赤い竜が再び咆哮を上げました。
それが恐怖をさらに煽ったのでしょう。魔人たちは全力で逃げていきます。
ですが、散っていく彼らを眼下に捉えながらも、赤い竜の顔は険しいままです。
「魔人は群れることを嫌うはずだ。集団で行動するなんて聞いたことがない……」
何かが起こっているーー。
赤い竜は世界の異変を感じつつ、魔人たちの気配が完全に消えるまで村の上空を飛び回りました。