第五話
二人が十分な薬草を積み終わったのは、昼を少し過ぎた頃でした。
「よーし! これだけあれば大じじ様も満足してくれるわね」
黄の竜は硬くなった身体を伸ばしながら立ち上がりました。赤い竜も凝った肩をほぐしながら彼女にならいます。
しかし、視線はこんもりと採られた野草の山へと向けられています。
「取り過ぎじゃないか……?」
「いいのよ。次に採る時期を遅らせればいいだけだから」
呆れたように赤い竜が問えば、黄の竜はしれっと答えます。
「さて! 目的のものも手に入ったことだし、帰りましょうか」
「……切り替えの早い奴」
「ん? なーに?」
「なんでもない」
そんな、他愛のない会話をしているときでした。
「ここにもいたぞ!」
二頭の前に、いきなり数人の魔人が現れたのは。
「仕留めろ!」
魔人たちは赤い竜と緑の竜へ攻撃を仕掛けてきました。
わけのわからない二頭でしたが、反撃しなければ負けてしまいます。赤い竜は黄の竜を背に庇いながら、素早く<爆風>の攻撃魔法を放ちました。
赤い竜の放った炎を伴う無慈悲な爆発の風は、魔族たちの魔法を吹き飛ばし、そのまま彼らへと襲いかかります。
声を上げる間もなく、魔人たちは炎に飲み込まれ、そのまま跡形もなく消えていきました。
「敵は……」
「……いないようね」
辺りに残党がいないかを確認した後、二人は安堵のため息を吐きました。
しかし、安心している場合ではありません。二頭は無事でしたが、魔人はたしかに「ここにもいたぞ!」と言っていたのですから。
「急いで帰りましょう!」
「ああ!」
二人は休むことなく本来の姿に戻り、急ぎ村へと飛びました。
早く早くと、翼に力が入ります。
そして。
「村が……!」
心配した通り、村は魔人の集団に襲われていたのでした。