第三話
空が明るくなり始めた頃に、二頭の竜が村から飛び立ちました。二頭の竜ーー赤い竜と黄の竜は、野草の生える丘へと向かいます。
「今日は誘ってくれてありがとう。まったく会わないから心配していたのよ?」
「すまない」
「謝るなら、今度からは心配させないでね?」
彼女に会わないのは、赤い竜が会わないようにしているからです。それを判っているらしい黄の竜は、強めな口調で彼に念を押します。
「わかっている……だから、たまにはと思って誘ってみた。……いけなかったか?」
見透かされていることに気づいた赤い竜は、気まずそうに返事をしました。
そんな彼を見て、黄の竜は面白いものを見たとばかりに笑います。
「よろしい。少しは悪いと思っているみたいだから許してあげる」
楽しそうな彼女を横目で見つつ、赤い竜は誘ったのは正解だったと思いました。
「ふふふ。 じゃあ、たくさんお喋りしましょう?」
まだ笑いが止まらないらしい黄の竜と、長くはないけれど短くもない飛行の旅の間、最近のようすを話し合います。
楽しかったこと、悲しかったこと、怒ったこと。黄の竜は面白可笑しく話してくれます。
しかし、村の竜と交流することのない赤い竜には話せることがありません。ただ、彼女の話を聞き、あれば質問するというぐらいです。
このままでいいのかーー。
この時、今のありさまは竜として正しい姿なのだろうかと、赤い竜は疑問を持ったのでした。