ばんそうこう
車内にて
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「らしょうもん、これなーに?」
「これは、水中花って言ってね、トラックにはこれがなくちゃいけないんだよ?」
「じゃあ、これはなーに?」
「これは爪楊枝。ドリンクバーのところにあったのかな?」
速度はとろ火。
エルフ幼女の故郷へと続く道をゆっくりと進んでいると、
ルーリィの「これなーに作戦」が始まった。
「ええと、これは……切った果物を食べるときに、刺してつかったりするんだよ?
今度、ルーリィが好きな桃を、これで食べてみよう」
「うん!」
ルーリィは、個包装の爪楊枝を肩掛けポシェット、通称『ルーリィぶくろ』にしまった。
「あーっ」
ルーリィはそのまま、ポシェットの中からぺらっとなにか、取り出す。
「じゃあ、これは?」
「ああ、それは『ばんそうこう』って言って、いたいいたいになったところに、ぺたってはるんだよ?」
【救急箱】の中にあったやつを持ってきたのか、ルーリィの手にあったのは、大きめの絆創膏だ。
「いたいいたい? ぺたって?」
「ええと、こんな感じ」
俺は、マニュピレイト・アームで絆創膏をペロリと台紙から剥がし、
ルーリィの手の甲に、ぺたりと貼ってあげた。
「はぁー……っ」
するとルーリィは、首筋のうぶ毛をふわっと立てて、
「ありがとう、らしょうもん!」
「う、うん!」
「あ、ルーリィ、ちょっとおもいだしたことが、ある!」
幼女エルフはぱっと顔を上げ、ポシェットをつかんで【お姫様仮眠室】に
転がっていった。
しばらくして、
「らしょうもん、こんなことになった……」
布一枚、身につけていない、
体中に絆創膏を貼った、ルーリィが出てきた。
「なんで!?」
「うううう……ルーリィ、はんせいしてます」
どうやら、調子にのって、ここまでやってしまったらしい。
「らしょうもん、これ、どうすればいいの?」
これはちょっと、きちんとルーリィに言って、教育したほうがいいな。
よし、今日の俺は、きびしいぞ!
俺は心を鬼にして、言った。
「これ、剥がすのこれ、一苦労だぞ……? ルーリィ。ありがとうございます!」
【ばんそうこう おわり】




