お金がない
海沿いの松っぽいのが植えてある街道沿いを走っていると、
「それでねー、ねこさんがー、ぱくっ! ってね、らしょうもんをねー」
ポーン
『前方に 1件 です』
「は?」
なんだねなんだね、カーナビさん。今、ルーリィが今朝見た夢を聞く時間だよ?
俺が意味不明なインフォメーションと周囲を確認していると、
「あ、らしょうもんー、だれかいるー」
先にルーリィが、それを見つけた。
「なにかな? なにかな?」
ききー、ぷしゅ、ぷしゅっ
停車。
海岸に続く松の木の根本で、こっちをガン見上げしてるのは、
いろいろな荷物を周囲に置いた、真面目そうなおじさんだ。
「は……、は、」
おじさんは、ぶるっと震え上がると、
「はわわわー(しゅわー)」
失禁しました。
◆
「いやはら、お恥ずかしいところをお見せしてしまいました。私、旅商を営んでいるものです」
「すいません、こちら小さな子もいるんで、ズボンは履いてもらっていいですか?」
「もうしわけない」
海辺で洗ってびしょびしょなズボンを、こちらにお尻を見せながら丁寧に履く旅商のおじさん。
彼はここで休んでいたらしい。
「お詫びと言ってはなんですが、私のお店を見ていきませんか?」
「らしょうもんー。ルーリィね、こちらにきょうみ、あるみたい」
「じゃあ、見せてもらえますか?」
「やったー!」
おじさんは骨董品を商う人? みたいらしく、壺とかパイプとか小さい絵とか、
そういうものを敷物の上に並べてくれる。
「みてー? らしょうもん、これ、きれー」
「ルーリィ、なにか欲しいものあるか?」
水晶の小さい置物を手に持って俺に見せてくるルーリィに、
俺は聞いてみる。
「あーっ、ルーリィはねー、これかなー」
「お客さん、お目が高いね」
ルーリィがおじさんに手に取らせてもらったのは、少し大きめの、
「絵本?」
「手書きのものでね、前の街で、趣味で書いている人がいて、
面白いから一冊仕入れたんだ。気に入ったなら安くしておくよ」
「らしょーもーん」
「おじさん、ぶつぶつ交換でいいかな」
「じゃあ、おじさんはこのお尻のブツブツを交換しようね」
「じゃあ、俺は顔のブツブツを……って、きもい!! 超キモイ交換があったな!!」
俺はおじさんに、ドリンクバーのコーラ一杯と、使い捨て歯ブラシ&歯磨き粉セット2つで、
絵本を譲ってもらった。
「なんだこの飲み物はーッ!(ぶへあー)」
おじさんは涙を流しながらコーラの続きを飲み、
「こんなに冷たく、甘いモノを……そしてこの、しゅわしゅわな感触……!」
「こーらだよっ!」
なぜか誇らしげなルーリィ。
「ラショウモンさん、ぜひもういっぱい、この水筒に入れてもらえないか? ぜひ!」
◆
なんかさらにコーラ一杯で、いろいろもらっちゃった……。
おかげでルーリィが、有閑マダムみたいなメガネと羽扇子とネックレスを手にいれたぞ……?
あのおじさん、コーラ……水筒の蓋開けるとき、大惨事になるとおもうんだけどな……
「ねぇねぇらしょーもんっ!」
絵本を両手で抱えて、にっこにこのルーリィ。
「どうしました? マダーム」
夕暮れの浜辺。
波の音を聞きながら、今日はここを、キャンプ地とする!!
「ルーリィは、じがよめます!」
【速報】ルーリィは字が読めます【天才】
「すごいねルーリィ!!」
「きょうは、らしょうもんに、ごほんをよんであげる日だからね?」
「ありがとぅぅぅ! い、いつ? いつ読んでくれるの?」
「いまでもいいよ?」
「お願いします!」
俺は座席を赤いベロア調の木製、気品高い系にチェンジ。
ルーリィの頭にベレー帽を乗せ、
サイドテーブルにドリンクバーのダージリンティーを用意。
それから、後ろからだっこするみたいに、
マニュピレイト・アームを伸ばして、一緒に絵本を広げた。
もしかしてこれ、毎晩ルーリィに絵本を読んでもらえるコース!?
絵本は情操教育にもいいし、かわりばんこで読むとか素敵!
しかも、
あらあら、この子ったらいつの間にかねちゃっているのね、だぁ!!
「らしょーもん、しゅーちゅーして!」
「するするっ!」
「よむよ? よむよ?」
「お願いルーリィ!」
可愛らしい猫が描かれた、ほんわか絵本だ!
あの、ちょっと変態っぽい旅商のおじさんにも、
今度合ったりしたら、お礼いわなきゃな!
「じゃーあ、ええっと 『ひゃーくーまーん、かーいー』」
なに? 百万回……で、猫って、あ、これって!
「『 ひゃーくーま ん か い イッ た ね こ 』」
「……え? い、いき……、えっ!? イッ……!?」
「『お ぉ お お お お お ん お ん お ねー さ ぁ ぁ あ あ ん にゃ――』」
「待つんだルーリィ」
次回! ばんそうこう!