絢という少女6
思ったよりも遅くなってしまった。最近このシリーズがあまりにも人気でないから、人気出そうなシリーズを先に投稿しようかなと思う始末。
「何かしたい事はあるか」
「何か、とは。ああ、まずは雑談から入りたいということですね。友達と遊ぶことが少ないのでどうにも勝手がわからなくって、どうか、ご容赦くださいな。さてと、となれば、漫画かアニメの話でよろしいですね。戦記物で恒久的な世界平和を目指して行動することについてどう思っているんですか」
「待て、何それ」
流石にこれは会話が飛躍しすぎている。無理やり連れ出されて不貞腐れていたのか、行動するのが不慣れなだけなのか分からないが、先程までの硬さが良くも悪くもショックのあまり吹き飛んだらしい。
でも、いつもの毒舌まで復活しているのはどうしてだろう。
「私は思うんですよ。永遠とか永久とか、そんな抽象的な単位で問題を解決しようとするから変な事に成るんだと。例えば、どこかの皇帝様。世界の敵になって死にましたけど、正直言って、世界を単純に見すぎですよ。敵がいるから纏まりというのは否定しようがない真理ですが、所詮敵の敵は他人ですよ他人。喉もと過ぎれば熱さわすれるで、敵がいなくなれば、また争いが始まる。そんな解りきった未来が想像できますね」
「嫌、あれはあれで、言い終わり方だったと思うぞ。大体、フィクションの世界にそんな現実性を求めるな」
「そこは、私にも解っています。誤解しないでくださいな、ただ大風呂敷広げる人類の恒久平和なんて大風呂敷を広げると、どうしてもラストが嘘くさくなるなと、そう思っただけですよ。それはアクションものでも同様。大体彼らは力で物事全てを解決しているんですよ。それで弱者の味方気取り。自分自身が誰よりも強大な暴力だなんて自覚はどこにもありはしない。行ってしまえば戦争と変わりがないじゃないですか、よくみんなと一致団結して行動を移すといいますが、そんなことあり得ないんですよ。現実は屑だとよく言いますが、これは、現代において、おそらく歴史上最高水準の生活を送っている我々日本人の間ですら出る言葉。生物として、現状に満足していないというのはある意味では正しいのかもしれないですが、高望みしすぎるというのも問題ですね。だいたい世界が平和になったのなら、強大な力を持った主人公は居場所をなくしてしまうんですか悲しいですね」
「良く、そんな長い台詞言えるよな」
「どうか、ご容赦くださいな」
「突っ込むなってこと。まあ、俺が思うにそれは万人受けしそうだな。みんなが作るから、みんなが求めるから,だからこそ、明確に上手い下手の基準ができる。最近流行りのチート、ハーレム物なんてその典型だろう。みんなが求めているから、多くの作品が書かれて、でも選ばれるのは本当に一部。一所懸命書かれた線の作品のうち一つか二つ選ばれればいい方だと思うぞ。恒久的な世界平和だってそうだな。みんなが納得できる理由だから支持されるんだろう。全人類を本気で抹殺してやろうって言う理由にしても、気分とか気まぐれでやろうなんて悪役は希少だろ。それと同じだ、共感できる、無難なものをみんな選んでいく」
「だからそこ、作り物というのは美しいと思うんですよ。人間関係においては特にね。そこは完結した一つの輪。初めからゴールが決められていて、そこに向かって一直線に向かっていく、そこには迷いも不安もなくて、全てが終われば一定の成果を必ず得ます。酷く美しい光景と思いますが、同時に気に入らない」続けるように「求めたって手に入れない物の方が多いでしょ」そう言った時の彼女はどこか暗く沈んでいるようにも見えたが、テンポよく会話が進んでいたので、問いただそうとは思わなかった。
「気に入る気に入らないお問題じゃないだろう。万人が求める理想を否定する権利は誰にもありはしないからな」
「つまらない男、私は、物語に跋扈するご都合主義的な展開にへきへきとしているだけですよ。そうだ、ハーレムオリ主を結婚詐欺や浮気で訴える作品書いてみませんか、きっと斬新な展開が見れます」
「書かない、絶対に書かない、そんな夢と希望を百万光年先においてきたような駄作、絶対書くもんか」
話が、気がついたら俺の確信に迫っていたためか、ついつい大声で反論を上げてしまう。ここで、なんとなくにであるものの自覚が芽生えた、すなわち、俺と彼女は思っていたよりも相性が悪いと。
「どうしましたか、そんなにムキになって、どうか、落ち着いてくださいな」
「ああ、悪いな」
「それで、続くん出すが、私にすれば、ネットで話題の神様転生。あれも疑問ですね」
冷や汗が、背中を伝う。分かっているのだ、彼女がこの事実を知っているわけがないことぐらい。それでも、心の底から、湧き上がってくる恐怖を抑えることが出来ない。もしかしたら、知られているのではないかと、恐れてしまう。彼女は俺のハーレムメンバーである以前に、この世界で唯一の友達なのだ。きっと、これだけは、どれだけ年を重ね用とも、きっと俺には克服することができない恐怖心なんだろう。他人に失望されるのが怖いというのは。
俺は、誰かに失望されるのが嫌だし、されたくもない。失敗を重ねるのも嫌だし、誰かに裏切られるなんてことも以ての外だ。
ーーだから、それ以上、口を開かないでくれ。お願いします・・・・・・どうか、どうか
「それでは次の遊びなんですが、一首の思考ゲームなんですが、どうでございましょう。そうですね、その5人の兄弟はまったく同じ日に生まれたのですが、誕生日は違います、さあ、答えてくださいな」
「なにそれ、クイズかよ」
子供特有の感受性か、いやそんな問題すらなく俺は動揺していたのだ、誰の目から見ても俺の醜態は明らかで、これ以上踏み込むのはマズいと思えたのだろう。
「失礼ですね、れっきとした思考ゲームですよ。いつも一人で適当に問題を考えて一人で解いています。答えはちゃんとあるので、一つずつ質問してくださいな」
なんとなくだが聞いたことがあるのかもしれない。それは記憶の片隅に、あるだけのものだが、しかし、分かっている。記憶のどこかにこびりついていて、歯茎に挟まった食べかすのようなもの、後一歩で解決できるというのに、出てこないそんなもどかしい感覚。
「出産の時間が夜だった。最初の子供と、最後の子供が生まれるまで、それだけの時間差があった。だから誤認は同時に生まれたとカウントされるが、誕生日に一日のタイムラグがあるんだろう」
「残念不正解ですよ。確かに、夜に生まれた子も確立としてはあり得ますね」
「違うのかよ。だったら……」
ここにきて俺はある可能性に気が付いた、相手は幼稚園児だということに、思考ゲームというが、もしかしたら論理自体が破綻しているのかもしれないと。
「わかったぞ正解が、その後人の兄弟は、神様によって天才の儀を施されたんだろう。もともとは五つ子だが、今は別々の家庭で過ごしている。違うか」
そこまで言って途端に恥ずかしさが内心から込み上げてくる。
「フッ」
この野郎、鼻で笑いやがった。ここで野郎というのは男を指す言葉とも思うがそんな物はノリだノリ。それに少し考えれば絢が神様転生自体を嫌っていると語ったではないか。
「じゃあ、答えはなんだよ」
「仕方がないですね。本来なら、答えを自分自身で見つけ出すものなのですが、今回は初回ということもありますし、お願いされたのなら、口を滑らしてしまうことまあるかもしれませんよ」
「いや、いい。自分で考えるから」
さすがにここまで言われたら引き下がろう何て殊勝な心地には成れなかった。初戦はゲームだ、しかも小学生との、解けないはずがないし、暇潰しに付き合ってやるのもやぶさかではない。そう決めると早速絢に新たな質問を投げかける。
「なら、どんどん質問してくださいね。そういうゲームですから」
絢自身もこう言っている事だしな。
「そいつらの生まれた年は同一か」
これで正解だろう、ここで出された問題は生まれた日が同じだが誕生日が違うというもの、ならば、全く同じ日に生まれたが、生まれた年が違うと考えあたのだがどうだ。
「同一ですよ」
ハッ? 嘘だろう、正解だと思ったのに
それからおおよそ、5分。そう、たったの5分だ。それだけの時間で俺は根を上げた。これは持ったほうなのかどうか、俺には分からない。きっと持ったほうなのだろう。なぜなら彼女のほうから、俺が頼んでいないにもかかわらずに、答えを述べてきたのだから。きっと、これは、彼女がいい加減に進まない、状況に飽き飽きしたからとも取れるのだが、そんなことはないと信じたい.きっと、正解に俺が近づいた為の降伏宣言だ。
「もういいですよ。正解はその子供が鳥類だったというものですね。恐らく、人間でないのかという突込みが来ると思うので最初に言っておきますが、人間であることは前提状況に指定されておりませんよ。いうなれば、卵の状態で同時に生まれ、でも誕生日は兄弟によって違う、どうか、ご理解なっさてくださいな」
最初に、仕様と思っていた突込みが、事前に阻止されてしまった影響もあって、彼女の言葉をすんなりと受け入れられた。むしろ、納得できてしまう。
「成程な、確かに人間だとは指定されていなかったな」
それでも後に残ったのは自分の力で解く事が出来なかった虚しさと、苛立ちといったマイナス印象だったが。
「卵が先か鶏が先か、この問題定義は殆ど意味がないものですが、今回のようにその食い違いが大きな変化を齎す事があるんですよ」
「聞いたことあるその言い回し? 問題定義? 言葉遊び・・・・・・どれでもいいか」
「そうですね、意味がないという点で言葉遊びでございます」
何やらツボに入ったらしい、最初はクスクスと次第に盛大に笑い始めた。
何が面白いか全く分からないが、場の空気に合わせるために俺も吊られる様にして笑う。
すると、いつの間にか彼女の笑い声はぴたりと止まっていた。
「私そういうの嫌い。場の空気に流されるとか、ただ相手に期待させて持ち上げるだけ持ち上げて実感が伴ってないから最後の最後に裏切ってくる。そんなものに何の意味もないじゃない」
刺が刺さってくる言葉の刺が、薔薇道を進もうにも茨の刺が肌を裂き鋭い痛みを与えてくるかの様に、その刺を取り除こうにも互いに秘密という刺が多すぎて取り除く事すら出来やしない。
俺と彼女はまだ友達にすら成っていないのだから。
きっと友情を感じているのはこちらだけ。
彼女が心が今どんな形をしているのかを見たいと思う。
やろうと思えば出来る、だが、条件が足りていない。
嫌、心を読む必要なんて無いだろう。
疲れたのか、明々後日の方角に目線を向けている絢に目線を合わせると、覗き込む。
暗示魔法。物語の中で幾度も登場する初歩の魔法。一般人に対して魔法の存在を隠すために活用されて来た物だが、俺はそれを彼女に向かって行使する。
「なぁ、絢、俺の事友達だと思っているか」
初めての経験ということもあってか行ったのは無難な質問。きっと違うだろうと身構えていると帰ってきたのは蔑んだ目線だった。
「何その質問、キモ」
そういえば、魔力が高い人間に対しては聞かないんだったな。焦り故かそんな些細な事案すら見逃しているとは。その結果が幼女の蔑んだ視線。
すみません、ご褒美・・・・・・ではないな。思っていたよりも何も感じない。
だが、このまま流されていくと本格的に痛い人物になってしまう。こうなれば毒を食らわば皿までだ。
「実際どうなんだ。思え俺の事好きだろう」
「ゴキブリの次ぐらいにはね」
どうしよう明らかに地が出てるよ、この子。
「ゴキブリの次って、そんなにしたかよ」
「勘違いしないでくださいな。ゴキブリが上であなたはそのしたですよ」
「まさかの最底辺!!」幾ら何でもこれはひでぇ。こいつ友達いねぇな。
だが、それも、この言葉自体ブーメランと成って自分に返ってくるのだが。
この時の俺は世の理不尽を嘆くしかなかった。
主人公と絢の距離を感じてもらえれば幸いです。