信じられない
茨木は次の話に移ると告げ、立場についての説明を始める。
「そのお立場故、若は幼少の頃より命を狙われていました。結果、若のお母様は……。若は半妖ならぬ半鬼。ですが、お母様の死後、遺言として人として生きる道をと。総領も認め、
若をお母様の実家に預けられました」
聞いた事もない話をしゃべられまくってもと反論したが簡単にねじふせられた。
「そんな話」
「若にだけは知られまいという決断でした」
今まではノーツの母親の願い通りに一般人と同じ様な日常を送って来られた。だけどその夢は予兆なので理解というか覚悟をして頂けないとという話を茨木が言う。
「普通の人として生きられていた、しかし……その道には限界があります」
体に宿っている気は勝手に成長し、強くなっていくといった内容の話を伝え中。
「夢の原因は妖気が漏れ出した結果、それを察知した敵が再度若の命を狙って襲いかかって来ているからですよ。私はこうなってしまった時のために転校してきたのです」
説明をしながら帽子を取る。茨木の頭上に鬼の角っぽいものが生えていて。さっきのような妖かしに対抗する力を持った用心棒みたいなものとしておそばに付くと宣言して来た。
「若……あなたをお守りするため。若の盾となり剣となるために。茨木の名のもとに……」
ひざまついてあなたが主人だという動作をしている茨木にノーツは何とか気になる点を確認する。
「……当に俺は人間じゃない……父さんは生存してる?」
「はい」
あの夢が過去の出来事をリピートしているとしたら母親の死の真実はこうだったというのかと声を絞り出していた。
「それで……母さんは俺のせいで?」
「…………若……」
ノーツはそんな作り話めいた話を信じられなかった。ふざけたストーリーを聞かせてきてどういうつもりだと怒りを我慢出来ずに殴る。
「さっきから訳のわかんねえ事ばっか……鬼だ何だ……んなの知らねえよ。この化け物の仲間!?」
茨木を怒りに任せて殴ったノーツはいたたまれなくなって走り去った。
どうしたもんだといった心境でノーツは商店街の方へ続く路地をふらふら歩く。騙されたと歯噛みしていたり。
(みんな騙していたのかよ)
彼は茨木の表情を思い出していた。信じ難い話を聞かせてしまい申し訳ないという顔を。
「騙してたくせに、あんな顔をしてた。俺が悪いみたいじゃねえか」
「信じられねえよ!」
追いかけてきた茨木に叫んだ。
「若!」




