鬼? と呼ばれる者が眼前に
「……僕はただ怖いと感じてる。はじめは普通に……子どもの頃の夢とかなつかしいなで済んでたんだ」
一呼吸置いてから続きを話す。
「だけどここ数日は鬼みたいな異形が出てきて母さんを……」
ノーツが辛そうに語っている内、彼の近くから黒い靄の様な空気が漂い始めた。茨木はそれに注意を払っている様子。
「でも手を伸ばせず。僕は母さんを……」
(やはり……)
茨木は自分の知る情報を教えようと彼の名前を呼ぶ。
「ノーツ」
「っはは。たかが夢だってのに。でもずっと頭のどっかにちらついてる……。だから思うんだよ、あの夢が本当に……」
黒い靄の様なものが自分達に近づく異様な気配を感じた茨木がノーツをかばった。
「危ない!!」
靄が黒い影になるばかりか巨人級な大きさになり(!?)ノーツ達のいた道を破壊した。だが破壊した時に出る豪風の様な衝撃を受けて2人は吹き飛ばされる。
「うわっ」
まだ吹き飛んだ理由がわからないノーツが擦った左半身をおさえながら起き上がった。
「……いってえ。何だよ急に」
文句をたれながら衝撃波が起きた方を見たノーツはそこに鬼らしき存在を認めた。
「逃げようぜ!」
茨木に手を引っ張られて連れて行かれるノーツ。彼はその時こう思っていた。夢の続きを見てる? だって夢に出てきた映像みたいだと――……
どれ位走ったか、息が切れるまで走り続けた2人は追ってこないとわかって息を整える余裕を取り戻せた。
「……くそっ、なんだってんだあのバケモノ。これも夢……?」
茨木はノーツがどう思っているのか、だけどこれを機にすべて話そうと言う気になった。
「……全部現実です」
「え?」
信じてもらおうと声音を変え、1つ1つをはっきりと伝える。
「さっきの鬼も、夢の内容も、すべてあなたが忘れていたかった現実なんです」
「……は?」
意味がわからない。ノーツはもう一度聞き直した。
「何を言ってんだ? 鬼……鬼って? バカ丁寧な言い方でさ」
ノーツが混乱しているのは一時的だろうと茨木は話を続ける。
「……鬼についてですが伝承とかに残っている乱暴な鬼を想像してもらって構いません。それ程古くから鬼は現実に存在していまして」
それから自分の役割についても語り口調で伝える。関連してノーツが何なのかについても教えた。
「また鬼とほぼ同一なのですが、酒呑童子という鬼の仲間が鬼の総領を務め、今でも童子の子孫が代々鬼の頂点に立っています」
一息置いて
「……若、あなたは現総領の子なんですよ。すなわち唯一の……直系の総領後継者なのです」
言っている意味がわからないと感じつつもどうにか言葉を絞り出した。
「こう……けい?」




