そんな理由だったなんて。。
「そ……、そうだ」
「え?」
<グルゥ>
「ううっ」
猛獣の唸り声に驚き、体をすくませかけながらもかるなーが何かを伝えたがっているみたい。かすれた声を出そうとしていた。
「う、あ、う……」
(ボクに何かを伝えたいんじゃ?)
僕はこんな状況とはいえ、嫌な思い出の方がはるかに多いので『もう能力を使わないと決めた』と迷いが生じていて――。
「どうしたら!?」
こっちを見るなとか地獄耳過ぎて気味悪いなどと言われたから、それにお前は人に近づくなよいいな!? と口にされた過去にしばられていた。
「……けど!!」
僕は自分で決めていた犬の人の気持ちを理解している様な力を使う事を内心謝罪しつつも実行に移す。
(ごめんね! かるなー)
僕はかるなーの意識が流れてくるかのような感覚を覚える――――。彼女の(確証はないけど)といった自信のなさもわかったが、それ以上に信じて欲しいという気持ちが伝わってきて覚悟を決め、それを試すと宣言した。
「やるよ、かるなー。せーの……で目を閉じよう」
目をつぶり、すべてを猛獣の行動にゆだねる事にした。命の危機にさらされる危険性が高まるのだから怖くないはずがない。だけどかるなーと一蓮托生だと手を握り合っているのでどうにか気配を察する位の心の余裕は持てている。
<グルオォォッ>
猛獣の唸り声が相当近くで聞こえて来たが、襲われずにすんだっぽい。気配が通りすぎてしばらく、そっと目を開けてみると。
「あ」
安心したと僕はかるなーに抱きつく。
「助かった!! ご、ごめんなさっ」
僕はお姉さんぶっているとはいえ、女の子に軽々しく抱きついちゃったかなとあせる。
「ネコ科の猛獣は目を合わさない方が良い。敵だと判断する習性がある。だから目を閉じて目を合わさなければ……。かるなーの知識通りだった」
僕はどうにか取り乱さずに済んだ事を幸運だったと思った。
「悪い事しちゃったね、私の方がこういう経験積んでいるのにこんな。パニックになっちゃうなんて。でもでも、ライオンは保護されたからもう安心だよ」
緊張感が一気に解放された。2人でアップルジュースを飲んで落ち着いた。そこで僕は頭を下げる。
「あのね、かるなー。ごめんなさい。ボクあの時に犬の力で心を通わせたんだ」
こんな事されたらイヤだろうなと不安に思っていた。
「翔くんがそうしてくれなかったら襲われていたかもだし。だからいいの、素敵なチカラだよ」
僕は動物の力を利用出来るこの力を悪いものじゃないと言われたのは始めてだった。だからこそ涙が出る程嬉しい。
「帰ろ?」
「そうしよっか」
今日という日は今までで一番良い日だと思った。かるなーには感謝してもしきれない位。
研究室の所長に能力の理由がわかったと連絡を受けて僕はかるなーと戻る。
「君のその能力はこういう理由だったみたいだ。2から3分どの動物にも触れないと」
僕はそう聞いて心当たりがあった。人懐こい犬や猫だけでなくどこへ行くにしても肩に蝶がついていたり、てんとう虫がのったり。必ず何らかの動物または昆虫がついて《触れて》いたと。
「なるほどー、それで……」
かるなーが友達から借りて来たという子犬の気持ちを所長から感じてみてと言われた。
「さぁ、感じてみて」
「ん、んん」
所長がこういう理由だったと説明する。
「どうやら動物とかに触ってもらっていたから動物同士のネットワークを感じ取れていた、そういう事なんだろう。そのネットワークを使える人間なんていないから、研究のためにこれからも協力して欲しい」
おかしな子扱いどころか不気味なやつ扱いされていた訳がそういう事だったのかとわかってショックだった。
次作品までに1年かからないと良いなぁ~~




