2人の境遇はどこか似ていたようだ
~きずなサイド~
陽光を直視しないよう、彼女は遠くを見つめようとしていた。それは「だってだってこの人、どんな格好してんの……!?」と困惑したからだ。甚平にオヤジシャツに股引きが長ズボンの下からのぞいているという古臭い着こなしをしていたから。あまりの私服センスのなさに恋するフィルターのイメージが崩れていった。
「おおい……? おいったら! 大丈夫か?」
それでも恋した気持ちを大事にしたい彼女、色々と納得の行く考えを導き出そうとしている。買い物にこんな格好で来るくらいだから普段着!? コスプレをしているっていうのは
違うだろうし……無理矢理そういう普段着を強要されているんだろうかなど。でも、きっと彼の性格を好きになったはずと妥協出来るか見た。大丈夫!! しっかりしないと……! こんな事でくじけたくないと長い葛藤を。何でひいちゃったのかこんな障害乗り越えないと決心し直しかけたのだが――
「ってごめんね、やっぱりダメ―! ムリみたいだよー!! 許して、ねぇ。こんな私を許してよー!!」
彼女は恋心がしぼんで魅力的に映らなくなった陽光に謝る。しかし、急に謝罪されても陽光側としては何が何だかわからない。
「なんだよ! いきなり。マジで訳がわからねーから」
いろんな勢いで、つい彼の甚平の上腕付近を引っ張っている事に気づいたきずな。手を離してわらってごまかした。
(私ったら突っ走るのがクセみたい)
何となーく気まずい空気のまま無言でいたくないきずなは、この際だからと気になっていた事を話題にしてしまおうとする。
「ねっ、ねぇ。植木君っていつもゴーグルつけてるね」
陽光サイド
黙ったままの雰囲気に耐え難かった陽光は話題を振ってくれて助かったと思った。
「まあな。コイツは父さんからもらった宝物だからさ。結果的に最後の誕生日プレゼントになっちまったからよ、まっ、形見の様なモンとも言えるか」
努めて明るく話す陽光、形見って事はつまり……とどうにか声を絞り出した笹川が顔を見つめてくる。
「えっ……」
彼は昔の思い出をこの雰囲気なら話せるかと淡々と語り始めた。
「オレがちびっちゃい頃に海難事故で、あっちゅうまに亡くなっちまって。オレも一緒だったんだ……奇跡的に助かったのはウチではオレのみ。つっても父さんと2人で船に乗ってたん
だけどよ」
何だか聞いてもらえそうという訳か、笹川からも似た境遇だと教えられる。
「……ウチもね。お母さんが事故で」
「ふんふん……」
話を聞いた陽光。笹川の背中を優しく叩いた。
「ならさっ、お互い難儀だったと言えるな」
きずなサイド
(彼、私と同じ……)
共通点を見つけたので近しい関係になり、もう少し踏み込んだ話が出来そうかもと、きずなは思う。
「あのっ! あの時は助かった~。お礼言えてなかったから」
しかし、彼はピンと来ていないようだった。
「え? いつ? あの時って!?」
自分の失敗を口にするのは嫌だったが、忘れているならしょうがないとその時の出来事を教えて思い出させる。
「あのーっ。わたしが転校初日にやらかした……」
「あっ! ははは!! はははははっ!!」




