転校初日から恋話に!?
◇ ◇ ◇
これって運命かもと、きずなは恋焦がれるかのような瞳になる。うっとりして立ちっぱなしだったからクラス担任に注意されてしまった。
「あっ、どうした? 早く席につこうな~、笹川さん」
転校してきてから数日の内に、きずなは一緒にお弁当を食べる間柄くらいの同性メンバーが出来ていた。きずなは、この町に親切が根付いている地域性のおかげでクラスの一員として早く溶け込めている。このクラスも親切な人達が多くてありがたい。
「今日もきずなのお弁当カワイクねー」
「そう?」
「いつも工夫されてんじゃね? お母さんが料理上手とか」
この友達たちなら話しても良いと判断する。きずなは家庭事情を隠したりせず教えた。
「先に言うよ? 重い話ごめん……。あのね、それらは自分で作ってるの。私のお母さん、事故で不幸な結果に……」
余計な事を聞いちゃったかなとうなだれていそうな子達に『気にしないで』と口に出しかけていた。それはやめて、声というよりそういったジェスチャーで。空気を読んだ彼女の友達らが家庭環境について聞く事で少しでも気持ちの共有が出来ないかと試みる。
「それじゃ今はお父さんと2人暮らしなの?」
ちょっとしたギャル風な容姿のヘアピンさんや、目がくりくりしているお団子頭ちゃん(友達だけどまだ名前があやふやなので)の質問にきずなは無難な受け答えをした。
「うん……だよっ」
「そういやどこに引っ越してきたの?」
「丘の近く。学校からは遠いよね」
これで会話が途切れると気まずくなりそうだと思ったきずなは他の話題を持ちかける。
「……えっと、私聞きたい事があるんだ~」
それにヘアピンさんが食いついた。
「ナニナニ~?」
「名前を教えて欲しい子がいて」
そう聞いたところ、2人の目が興味深いといった感じに変化していった。恋話となると根掘り葉掘り聞こうとする女の子は多いが、この2人もそういう性格なのだろう。
「誰なの誰なの? お早いわね奥さん。なんつって」
「もう気になるやつがいるんだ~?」
興奮しているヘアピンさんとお団子頭ちゃんに聞くのをためらいかけたが意を決して聞く。
「えっとね……男の子の三人組なんだけど色黒な人と落ち着いている雰囲気のまとめ役っぽい……」
せっかく聞いたのだが、あんたもその落ち着いていてまとめ役な彼に好意を持っているんだという風に彼女達が自己完結してしまった。
「あー、張尾君のこと。カッコ良いよね。美形なハーフなんだよ」
「頭にいつも子犬のヌイグルミをのせてるミステリアスさもあってー」
いや、違くてと話を続けるまでに一苦労。仕切り直しで話してみたが彼女達が一気に冷めていく雰囲気を感じ取る。
「彼じゃなくてあのゴーグルつけている人! アレ?」
「え゛? アイツなの? 植木陽光!」
しばらく本を読んでいて会話に参加していなかった文学系な見た目の女生徒にも質問された。
「でも何でアイツ!?」
きずなもきずなで陽光の事が想像の中で美化されていた。
「ヒーローみたいでカッコイイから」
自分の世界に入っているきずなが話を聞いてくれている3人が「あんな奴の……どこが……」という失礼な反応に気づく事はなかった。
一度かっこいいと思った少年(男の子)は誰よりもかっこよくなっているんでしょうね~。その子の中では――
猛男とか大和ちゃんといった最近のアニメが浮かんだんだけど。




