イタズラしていた存在のマヌケさ
「トイレにだけ描いているって事だしね。落書きで知名度アップを狙って、私だけ倒せばトイレのお化けに君臨出来るって考えたのかと思って……」
中世のイタズラおばけなゴブリン。間違いなくそれのようだ。ゴブリンが聞いてもいない取り憑いた理由をぺらぺらと話し出す。
「交換条件ってやつです。フッフフ。利き腕で描くように絵を描かせる事が可能ですよ、条件がありますが。私の力はトイレで高まるので『トイレで描け』……とねえ」
絵が好きで美術部に入った女の子、利き腕を怪我してどれだけ苦しい気持ちを味わっただろうか。いたずらおばけ《ゴブリン》に誘惑されてしまったのも仕方がない部分がある。花子さんが許せなかったのは女の子を利用した事。
「弱った心につけ込んで」
ゴブリンがいるという噂が広まっていると踏んでいた。そいつが花子さんに襲いかかる。
「おかげで私の存在の噂が流れて名をあげられたという事……今や名が落ちたあなたより……力は上でしょう」
ゴブリンの鉤爪が花子さんをつらぬきに襲いかかってくる。突っ立ったまま何もしない花子さんに佐古が心配の叫び声をあげた。
だが、ゴブリンの両手を花子さんが神通力で強化したトイレットペーパーで止める。
「…………」
花子さんの神通力が弱まっていない事に気づいたゴブリンが間の抜けた声を出した。
「お……や?」
そいつのミスを花子さんが指摘した。後ろにいる佐古を指差して教える。
「おまえの勘違いだよ。この事件、人間達は怪奇現象じゃなく不良のせいだって思ってるの、わかる?」
ゴブリンが自分の失敗に、取り返しの付かない状況だという絶望を覚える表情になった。
「お前の名前なんか知られていないのよ!!」
神通力を帯びさせたトイレットペーパーでゴブリンのいる空間ごと爆破封印した。
ゴブリンに取り憑かれていた女美術部員、体力の減少で貧血のような状態になっていた。その彼女を保健室に連れて行った所、保健の先生は不在だった。佐古はベッドまで運ぶ事にする。
「その子、突き出せば?」
「何でそうなんだよ?」
誰もいないのは佐古にとって好都合で話しやすい。話しかけられて無視なんてせずにすむので。
「この女、利用されていただけなんだろ?」
「まあね……でもそうでもしなきゃ、あんたが困っている状況は好転しないでしょ? ……意味なさそう。真犯人がおばけだなんて信じたりしないか、頭の心配をされるわね?」
花子さんが佐古に迫った。
「出来るのは退学処分を甘んじて受け入れるか、あの子をつれていって事情を話させる……それか、他の方法――お前、思いつく?」
的を得ている花子さんの質問。一種の諦めによる手詰まりで納得いかないまま退学――佐古は何もしないでは嫌だと思った。今更ながらどうしたらという思考を巡らせる様に。
「……とは言えなっ……俺にも可能な事は……」
いくら可能性が低くともやらないよりマシかと考えを変えた佐古が職員室に足を運ぶ。
何人もの先生がトラブルを持ち込んできたのか、問題を起こすなよといった視線を送ってきているのがわかったが耐えた。




