トイレにいるといえば?
ダルそうに掃除用モップを持ってトイレに向かっている彼は理不尽な怒りを抑えきれないのでぶつくさ独り言のように文句をたれている。遠巻きで見ていた生徒が恐怖で端によけているのなんて目にも入っていなかった。
(犯人にもこのイラつきをぶつけてぇ!!)
それもそのはず。彼の思考はそれのみに集中していたからである。
問題の女子トイレにイライラしながら入ると、鏡台前で話し込んでいた女子生徒達が文句も言えず、怖さで悲鳴をあげながら去っていく。大方落書きを野次馬にしに来た女生徒達だろう。だが、やりたくもない掃除をやらされる羽目になった彼には誰がいたなんてささいな問題だ。どうでも良いと考えているのかも。
「ジャマだ!」
最初の内は退学なんてゴメンだという事でものすごい怒りの形相で力任せに天井近くまで書かれた落書きを洗剤をつけたモップでこすり続けていた。
「こんな上の方にまで書きやがるとかよ!!」
彼はまだ落書きが消えきっていないと知りつつも、やってられるかといった様子で終わらせて適当に掃除用具を洗う。
「だるいしうぜぇ、面倒だ。終了終了!!」
掃除用具を洗っていると、洗面台に近い女子トイレの扉が勝手に開いた。
<オマエ?>
「ああっ!?」
小学生くらいの女の子が不気味な声を発したような? そんな幻聴らしきものが聞こえた気がしたのだが。巻き舌で機嫌が悪いアピールをしつつ声の方に目を向ける。
<オマエがした事か?>
「誰かいんのかよ?」
トイレットペーパーが誰かに操作されているかのように動き出す。佐古の両手足に紙とは思えない固さに変化したトイレットペッパーが巻き付いてくる。それに顔以外全身ぐるぐる巻きにされて、逆さ吊りにされるという怪奇現象にあった。
「うええ!?」
「よくも」
恨みの言葉を発しながら有名なトイレの霊らしき存在が姿を現した。
「よくも私の領域にこんなマネをしたね。そんな奴には罰を食らわすよ!」
「てめえは!?」
逆さ吊りのまま聞く佐古に、名前で呼べとばかりに少女の霊が応える。
「花子よ」
「トイレの花子さん……っ、学校の怪談の……」
霊体を見えるように具現化した上で浮かび上がってきた。
「化けて出たぁぁぁ」
彼の叫び声が響く前に花子さんが顔面全体にトイレットペーパーを幾重にも巻いた。ついでに霊力でトイレットペーパーの芯をやかましいとばかりに頭にぶつける。
「うるさいな」
目が口ほどにものを言うかのごとく、花子さんは彼を睨みつけた。




