満点の下、ふたりの時間
寝落ちした酔っ払い二人が寝冷えしないように火を入れていない火燵の中へ肩を押し込み下半身を無理矢理収め、俺はジンジャーエールを、浸地はトマトジュースを片手にベランダに腰掛け、天の川が織り成す満天の星空を見上げていた。最近のトマトジュースは適度に食塩が入っていて飲みやすい。
さっきから蚊がチクチクしてくる。O型の俺は、酔っ払って蚊に狙われやすい筈のA型の浸地よりモテモテだ。O型つええ、最強だぜ…。
さっき投げたムカデ、こっちに戻って来ないだろうな? 戻って来たら未砂記さんに食われちまうぞ?
「ムカデ食わせろぉ!」
俺と浸地は突如発せられた未砂記さんの声にビックリして振り向いたが、どうやら寝言だったらしく、再びすぅすぅと寝息を発てはじめた。
「未砂記さんの脳内ってどうなってんだろ」
「さぁ。小学生の時から親友やってる私でも分かんないトコはあるよ。昼間に五色沼の探勝路歩いてた時なんか全身にセミが纏わり付いて大合唱してたのにノーリアクションだった。そもそも全身にセミが纏わり付くってトコから疑問だし」
「未砂記さんってセミ好きだよな」
あっ!
言っている途中、俺の脳裏にある仮説が閃いた。
「どうした?」
浸地は俺が閃いた時の微妙な表情の変化を察したようだ。
「ムカデって、セミの幼虫食うのか? どっちも地中の生物だよな」
「あぁ、言われてみれば。食べるのかな? セミの幼虫。でも未砂記、ムカデ見た時、美味しそうって言ってたよ。セミの天敵とか関係ないんじゃない?」
「だな〜。じゃあ単純に下手物好きなのか?」
「さ〜ぁ。そんな話聞いたことない。理由は未砂記が起きたら聞けばいいよ。それより空を見上げてごらん? こんな満天の星空、都会じゃ見れないよ」
言われて、俺は再び空を見上げた。空を埋め尽くすキラキラ光るビーズのような星粒たち。ずっと見ていると、天に吸い込まれそうな感覚に陥って、日頃抱えている悩み事やストレスについて考えようとする気が吸い上げられてゆくようだ。虫の声や木の葉の掠れる音がBGMとなり、何故かロマンチックだ。今はただこうして、浸地のとなりで宇宙の神秘に包まれていたい。
ゾクッ!
黄昏れていると、鼻孔をくすぐる甘い香りの髪の毛と、華奢な肩がもたれ掛かってきた。
瞬間、俺は心臓がギュッと縮こまる心地良さに全身を支配された。
「たまには、私が甘えてもいい?」
普段、ガキの俺なんかに甘えてこない浸地に動揺した俺は、上手い言葉を見付けられなくて、彼女の少しでも強く握ったら壊れそうなくらい柔らかな手の甲に、自分の手をそっと被せた。
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更新遅くなりまして申し訳ございません。
ゆるりと流れるお話ですが、ゆるりとお付き合い頂ければ幸いです。




