思春期の至りのような狂言
仏壇越しで浸地のご先祖さまたちに挨拶をした俺と絵乃さんは、火を入れていない火燵に脚を入れて向かい合っている。
絵乃さんは調理中の浸地と未砂記さんに手伝いをしようと申し出たが、二人からお客さんなんだからのんびりしててと断られたようで、そわそわして落ち着きがない。
「私、他の人が働いているのに自分だけ何もせずにいるのって、苦手なの」
さすが社長! きっと絵乃さんが経営している会社は社員がイキイキしてて働きやすいんだろうな。
「いや〜、その感覚わかります。俺も落ち着かなくて」
でも特に出来る事なさそうだし、手伝ったら逆に邪魔になりそうな気がして動けない小心者です。
「ふふっ、そうなの」
微笑む絵乃さんは、どうやら俺の胸中を察している様子。俺自身、自分が割と単純回路で構成されているなどとうに自覚している。
「枝豆茹で上がったよー」
「広視く〜ん、ビールの栓抜いてくれるぅ?」
キッチンから浸地が笊に盛った枝豆を持って、未砂記さんがトレイに瓶ビールを三本載せて出て来た。
「了解でーす!」
俺は主にハンドパワーと、補助的に栓抜きを使ってミスターマリックになった気分でビールを解放!
「広視、何ビール瓶の上で手をワシャワシャしてんの?」
クククこの女、俺のエリア・オブ・アンノウンをナメてもらっちゃ困るぜ。
「浸地よ、この世には常識では計り知れない力があるのだよ、ククク…」
23歳にもなると、しがらみの中で子供の頃には成し得た何かを失ってしまうものさ…。
「うわっ、なんかウザッ…」
「うるせー」
ドン引きする浸地に上手い言葉が返せなかった。よく見ると未砂記さんは苦笑い、絵乃さんは小さな子供を見るような優しい微笑みで俺を見ている。
やめて絵乃さん! 貴女の優しさが俺には痛いよっ!
俺だって心の隅では解っているさ! そうさ、まだまだ俺は坊やなのさ! 下の毛が生え揃い、二日に一度髭を剃っている坊やなのさ!
「さっ! ビール以外にもワインにウイスキー、会津ほまれに末廣の大吟醸などなど数多のラインナップを用意しておりまーす! 広視は未成年だからジンジャーエールと烏龍茶、トマトジュースから選んでね!」
「わーい! パチパチパチー」
「う〜い」
未砂記さんと俺は同時に声を発した。酒は高級らしいが呑めないので喜べない。
「そして今日は、絵乃ちゃんから差し入れのタコせんべいとカマンベールチーズ、葉山牛のソーセージとベーコンサラミを頂戴してまーす!」
「うおおっ、美味そう!」
「よっ! 絵乃ちゃん! さすが社長!」
未砂記さんは勿論、今度は俺も感嘆した。こりゃガチで美味そうだわ!
酔い潰れるであろう美女三人の介抱についてはその時考えるとして、今は目の前の食事を愉しむとしよう!
ご覧いただき本当にありがとうございます!
ハンドパワーなるものってありますよね。目の前に指を突き付けられるとなんだかゾクッとしませんか。




