ふたりの到着
広視にイタズラ電話をしてから近くのホームセンターで大量にお酒を買ってから母の実家に行き、枝豆を茹でて待つこと約5時間。夕暮れももう終わる頃、絵乃ちゃんと介抱兼マスコット役の広視が到着。
「「こんばんはー」」
「はいこんばんはー待ってましたー!!」
いやいや~、今日はお家の人が仕事で誰も居ないから留守を兼ねて泊まっていいよって言われてるんだけど、酔っ払って暴れた時に物損事故起こしたら大変だから、私たち女衆を制御出来る男手が欲しかったんだぁ~♪
しかも広視は18歳の未成年! 一緒に酔っ払わせないぜぇ~。
今回のお詫びに、受験生の広視には勉強のお手伝いをしようと思う。
「私まで来て良かったの?」
「もう、絵乃ちゃんは遠慮しないの! みらまーる精神は東北にもあるのだっ!」
「ありがとう。おつまみにタコせんべい買ってきたから、みんなで食べましょう」
「わぁ~ありがとう! そんな気ぃ遣ってくれなくていいのに」
タコせんべいというのは、名の通りタコが入った薄手の煎餅で、ソフトでパリパリした食感が絶妙な一品。神奈川県の湘南名物だ。
「いえ、お邪魔するのだから。では先ずお仏壇にお手合わせしようかしら」
「ホントにありがとね~」
私が重ねてお礼を言うと、絵乃ちゃんは微笑んで奥の仏間へ向かった。
「広視もばぁちゃんに挨拶してあげて?」
「…心配したんだからな」
あっ、そうだった。早く来てもらうために緊迫感漂う小芝居をして電話したんだった。
「うん。ごめんね。突然呼び出したのに、遠い所わざわざありがとう」
お詫びとお礼をすると、広視は顔を赤くして目を逸らした。かわいい。
「ま、何もなくて良かったわ。俺も仏壇行ってくる」
「うん」
仏間へ向かう広視の背中は、まだ少し頼りないけど、それでも7歳の時よりはずっと逞しくなった。
昨夏、私と再会するまでの10年間、彼は一人でどれだけの重荷を背負ってきたのだろう。
困った時はいつでも相談してね。会えない時は電話でもメールでもいいんだからね。何処に居ても心は変わらず、ずっと傍に居るから。
ご覧いただき本当にありがとうございます!
お話が予定より長引いておりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。