授与の儀
「これより、授与の儀を行う」
広い間の中で、一人の若い男性の声が響き渡る。
声の主はドラクンクルトのギルドマスターであるグラディンであり、現在彼は、玉座に座っているこの国の王の傍についていた。その周りには、ビスタートはもちろんのこと、他五名の男女がおり、全員がどこかの国のギルドマスターであることは一目見ずともわかった。全員、正装ではあるが最低限の武装は行っている。
「今回の試験において合格した者の名を上げていく」
グラディンは一枚の羊皮紙を懐から取り出すと、順に名を上げていく。
「クゥ、ディードレッグ、トウヤ、モミジ、リョウ」
「「「………………」」」
今呼ばれたこの五人が、今回の試験の合格者だった。
三人は自分たちの事なのでわかっていたが、残りの二人は――椛が一人を除いて――知らない人物であった。
ディードレッグと呼ばれた男性は白い儀礼服に金色の逆立った髪と紅い目を持つ青年。
クゥという見た目少女は薄紫色の椛や椋と似た服を着ており――頭に被っているソレだけは外していない――、感情の視えない表情はまったく変わっていない。
椛もまさかクゥが試験の合格者の一人だとは思いもしなかったが、考えてみれば彼女は椛よりも長く生きているのだ。見た目で判断するということが間違いだということが、クゥを見て実感し直した。
「――であるために、諸君らは――」
グラディンはつらつらと羊皮紙に書かれている説法のような話を続けている。彼の視線はようやく羊皮紙の中間あたりに行ったところか、まだまだ先は長そうだ。
一応、これを五人は五人とも表情も動作もほとんど行わずにしているが、だからといってちゃんと聞いてるわけでもなかった。言葉の九割が聞いたところで無意味のものであるし、もはや現在グラディンが喋っていることはどこか異国の言葉を聞いているかのような素振りで聞いてもいる。
「――故に、今ここにいる五人を、正式なる"Drifter"とする!」
しかし最後の言葉だけは、全員しっかりと聞いていた。
読み終えたグラディンは羊皮紙を懐に仕舞うと、王が立ち上がる。
彼の姿は想像していた以上に若く、ビスタートよりも若いのではないかというぐらいだ。
「貴君らは、この度の嶮しき試練を突破し、この七連国を代表する者たちの一員となった。
貴君らには目的があるだろう。その目的のために試練を受け、資格を得た者もいるだろう。
それでいい。無理に我が国に貢献する必要は無い。
己の目的の道中に、我が国の発展につながるものを発見した時、その時だけ貴君らは私たちに伝えてくれ。
以上だ。合格、おめでとう」
そうして、授与の儀は何事もなく終わりを迎えるのだった。
話がグダってしまい申し訳ございません。
こういったところをもっと面白くというか、惹きこめる物語を書きたいですね。




