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Drifter  作者: へるぷみ~
Aランクと精霊契約
25/100

三人の成果

短いです。




 「帰ったぜー」

 「帰ってきましたー」


 ギルドの扉を開け、中へと入ってきた二人の人物に、ギルドメンバーである者たちが視線を向けてくるが、すぐに自分のことへと戻って行った。まぁ別に、冷めているというわけではないので二人も気にせず受付へと行く。

 そこには、このギルドの受付を務めている女性、アネモアがいた。


 「お帰りなさいませ、」

 「マスターにモミジさん」

 「おう」

 「今戻ってきました」

 「その様子では、」

 「無事成功したようですね」

 「はい。それであの、椋と悼也は帰ってきてますか?」

 「それでしたら今――」

 「も み じ ちゃ~~~ん!」

 「ごはぁ!」

 「来たようですね」


 気配無く椛の横合いから一人の少女がダイナミック抱擁をかまし、まったく油断していた椛は受け身をとることもできずにそのまま飛ぶ。

 椛に抱きついたのは、椋だった。

 一週間ほど一緒にいなかったわけだが、それでも変わったところがほとんど見受けられないというのは喜んでいいことなのだろうか。


 「う~ん、久々の椛ちゃんの身体だ~! ス~ハ~、うんやっぱり椛ちゃんだ~」

 「ちょ、ばか、椋どきなさい! こらっ!」

 「もうちょっと、もうちょっと」


 それから約五分、椛は椋に成されるがままに頬ずりやらなにやらかまされるのだった。


 「は~、堪能した~」

 「私は、つか、れたわよ……。……それで、椋」

 「なに~?」

 「悼也は?」

 「あ、うん、もう戻ってきてるよ。ボクは椛ちゃんが帰ってきたような気がしたからこっちに来ただけで、客間にいるはずだよ~」

 「じゃあ、私が最後だったのね」

 「そうなるね~」

 「それじゃ、悼也にも会いましょう」

 「全員帰ってきたか。じゃ、オレもそっち行くとするか。アネモア、茶ー入れといてくれ」

 「畏まりました」

 「そんじゃ、いくとするか」

 「はい」

 「は~い」



 「さて、無事三人とも精霊との契約が出来たようで何よりだ。まずは、おめでとう」

 「どうも」

 「ありがとうございま~す」

 「………………」

 「で、とりあえず成果を見せてくれ。一応、モミジもな」


 そういうと、全員がそれぞれに荷物から石を取出しテーブルの上に置く。

 椛は薄緑色の透明な石。椋は深い藍色の透明な石。悼也は黒いのに奥が透き通って見える石。

 ビスタートはそれを視て観察しているのだろう。


 「ふむ。モミジのはわかっている。リョウのは水の精霊だろう。だが、悼也のこれは……闇の精霊?いや、これは違う」


 だが、ビスタートの視線が一つのところに釘刺しになる。

 それは、悼也の石だった。

 疑問に思った椛は、口に出して質問する。


 「どういうことですか?」

 「わからん。闇の精霊に似てるが、これは違うということしかわからん」

 「ビスタートさんでもわからないものがあるんですか」

 「そりゃあオレだって何でも知ってるわけじゃない」

 「それで、悼也。これはなんなの?」


 まぁわからないのなら、唯一わかっている悼也に聞いてしまえばよい。


 「影の精霊だ」

 「影?」

 「影……だと?」

 『ひゃはははははは! 俺の名前を呼んだかぃ!』


 突如、甲高い男の声が室内に……正確には、これは全員の頭へと聞こえてくる。


 『うーん? ああ、そうかそうか、名乗ってなかったな、俺っちは影の精霊をやってるもんだ、よろしくなぁ!』

 「な、どうして精霊が?」

 『どうしてぇ? 簡単な話だ! 俺っちまだ生まれたばっかでなぁ、自分の生まれたとこに別段愛着とかもねぇし? まぁ、影さえあれば俺っち存在できっからよ、こうして契約主であるトウヤの影に入らせてもらってるってわけさ。これでいいだろう?』

 「まぁ、理解は出来たわよ……。それにしても、精霊っていうのは基本的にこんなのばっかなのかしら……」


 椛が影の精霊|(悼也の影が忙しなく動いている)を見て、風の精霊の事もあり何とも人間味のあるのだと、ある種感心もしていた。

 ちなみに、椋は知っていたようで、驚いた様子はなかった。


 「しっかし、影の精霊ねぇ、初めて見たもんだ。悪いが悼也に精霊さんよ、時間をくれたりしないか? 聞きたい話が多いしな。モミジとリョウは先に帰ってていいぜ」

 「構わない」

 『ひひひっ! ああ、契約主がいいって言うんだ。俺っちもいいぜ』

 「それじゃあ、私たちはお言葉に甘えて」

 「悼也君、またあとでね~」


 それだけ言うと、椛と椋は部屋から出る。

 このあと、ビスタートが言った通り、いろいろと聞くのだろう。待っているのもアレなので、二人は帰ることにした。

 数日ぶりの家は、案外綺麗だった。



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