精霊契約
『ま、負けた……』
ガクリ、と椛にチョップを喰らい、それを認識した精霊は膝をつき、手も同様に地面へとつける。
「おーおーおー、勝ったかモミジー」
「勝ったかモミジー、じゃないですよ。どんだけ無茶させんですか」
「でもよかったろ? ほれ、実際これはお前自身の実力で精霊の試練に打ち勝ったんだから」
「まぁ、確かにそうですけどね」
事実、楽して物事が進むことに椛としては不満は無い。が、それでも本来自分でやるべきと決めているときに人に協力されるというのは、自分の力だけで成し遂げたということが証明されない故に不満を覚えることは多々あった。だからこそ、今回の精霊の試練に一人で挑み打ち勝ったというのは、自分が精霊と契約をするだけの力があるのだと、はっきりと知ることのできたことでもある。
そういった意味では――今回は巻き込まれた形だが――、このことは良かったのかもしれないと、椛は思った。
「で、どうするんだ? 椛はオマエの契約を突破したんだそれなら――」
『わ、わかっておるわ! コホン。……これより、契約の儀を始める。
汝は我が試練に打ち勝ち、これより汝は我が契約書と認定する。
我の身、我の力を汝に授け、我汝の力となることを誓おう。
契約の証を差し出し、汝の証となる物を差し出せ』
「はい」
椛は精霊に言われた通り、契約の証となる物、薄緑色に透き通った石を取出し、ナイフで指先を軽く切ると、血の滲んできた指を上にして、掌には石を乗せて精霊の前に差し出す。
すると指先から滲んでいた血は重力を無視して宙に浮かび上がると、精霊の身体へと吸い込まれ、そこで精霊は一つ頷いた。
『うむ。契約の証、汝の証、確かに受け取った。
では次に、汝に我が力を授けよう』
言うや否や、精霊は左の手を椛の手に重ね、逆の手は椛の手を下から包み込む。
次の瞬間、包まれた手の隙間から風が漏れ出し、椛の髪が撫でられる。
『無事、汝に我が力を授けることは完了した。
これにて、契約の儀は果たされた』
精霊のその言葉とともに、契約は終了したのだと椛は実感し、更にそれを裏付けるようにして椛の掌に乗っている石の内側には、風が渦巻いていた。




