精霊の試練 後編
※文章がいつも以上に荒いです。ご了承ください。
精霊の姿は己の思い描く精霊の姿。ゆえに精霊に個としての形は無い。
『ふはっははは! どうした、そんなものでは我に触れるどころか一撃を与えるのも叶わぬぞ!』
「だぁ、もう! めんどくさいわねー!」
吹き荒れる暴風。
霊峰頂上にある広い空間を中心に、渦を巻き全てを遠ざける風。
その中心には、この霊峰の主ともいえる風の精霊がおり、正面離れたところには風に飛ばされないよう身を屈めている椛がいた。
あの後、椛の抵抗空しく試練は始まってしまい、今に至っている。
精霊の出した試練の内容はこうだった。
【我に一撃を入れる】。
無論、一撃を与えるという一見簡単そうな内容だが、それはそれ。人間と精霊というのは大きな差があるということである。
開幕直後に精霊が自身の身体を中心に突風を起こし、虚を突かれた椛はバランスを崩し転がされ、霊峰の頂上から落ちずにはすんだものの、下手に動けない状態となった。
「まったく、なによこれ。近づこうにも、立って移動はし辛いし、気を抜けば吹き飛ばされる」
精霊はその余裕さからか試練が始まってから一度も微動だにして動かず、ただ視線は椛へと向いている。
とりあえず、椛は現状どうしようもないので風に逆らわないようにして気を付けながら屈んで歩く。
行動せずには情報は得られず、情報得ずに勝利は与えられない。椛は、これを信念の一つとしている。
視線は常に精霊を観察しながらも、耳で、鼻で、肌で、手に入るだけの情報を拾っていく。意味が無いものだとしても、意味の無いもの同士を組み合わせれば意味を持つかもしれない。
『なんじゃ、わしの周囲をぐるぐると……』
「………………視えた」
そこで、椛の中に一つの過程を作り上げ、即座に手荷物を頭の中で確認し、そこに至るまでのプロセスを考える。
そして答えを導き出した椛は急いでそばにあった岩の影へと隠れる。風よけもそうだが、なにをしているのかを目の間で見せながらやっていては意味がない。
『む、隠れおったか。はよう出てくるがよい! 決着がつかぬぞ』
「大丈夫だから、安心してまってなさい。ちゃんとやるわよ」
『そうか、それなら待とう』
「あ、やっぱり単純ね(ボソ)」
椛は腰に装着しているポーチから必要な道具を取出し、風よけとしての役目も果たしているが念には念を払って自分の体でも壁となり、準備を進めていく。
足にはスパイクを装着することで風の中でも走れるようにし、ナイフを取り出す。
次に出したのは、石。明るい場所であってもそれは光る性質を持ち、椛はそれをひと欠片削って小さな空瓶に入れる。続いて袋から白い粉を気を付けて石を入れた瓶に入れる。最後に、瓶を封するための蓋の裏に小指の爪ほどの小さな袋を取り付け、蓋をした。完成である。
「とりあえず、まずはこれで試してみますか、と!」
道具をポーチにしまい、先ほどの小瓶を手に持って岩陰から姿を出す。
と同時に、風の強さと瓶の重さ、自分がこの小瓶を投げたときの距離などをある程度計算し、ある程度を感覚に任せて、投げる。
宙へと放り投げられた小瓶は風の影響を受けて流れていくも、椛の場合はそれを前提として目標へと向かっていく。すなわち精霊へと。
『ふん、小細工程度どうにでもなるわ!』
一瞬、風が強く吹く。
その影響によって小瓶の着弾地点は精霊の右前に逸れ、落ちる。
「掛かった!」
『ぬ!?』
小瓶が地面へと落ち、割れた瞬間、強烈な光が周囲を白く染め上げた。
もうちょっとだけ続くんじゃよ?




