御札と新しい依頼
確実に分かる事がある、今日私はクラスの連中から質問攻めに合う…のろけたいから期待してるんだけど。
「麗奈、山田さんの実家はどうだった?」
「兄貴のお母さんに嫌われなかった?」
「お寺に麗奈みたいなギャルが行ったらドン引きされたんじゃね?」
「山田先生、お母さんに泣かれてたりしてね。あの娘はだけは止めてって」
どいつもこいつも好き勝手言いやがって…でも、私は怒らない。
「大明の事をよろしくって言われたよ。それにギャルぐらいじゃ、山田家はひかないよ…山田家パネエもん。これが山っちの家族」
私はスマホで撮った記念写真をクラスの連中に見せる。
「外人?なんで外人がお寺にいるの?」
「その人はお義姉さんのシャルロッテさんフランス人なんだって、お義姉さんの隣にいる細い人が山っちのお兄さん。その下の極妻みたいのがお義母さん、隣の山っちに髭を生やした感じなのがお父義さん」
写メをみた連中が案の定、固まっている。
「「「麗奈、お義母さんお義父さんは早すぎじゃね?」」」
「そこ?良いじゃん、麗奈ちゃんなら大歓迎って言われたつーの!!山っちは麗奈を離さないって言ったし」
「それで少しは関係進んだの?」
くっ、美保のやつ、痛いところをついてきたな。
「手は繋いだけど…」
「うわっ、中学生みてぇ」
「うちの小学生の妹と同じレベルじゃん」
「熊鉄が彼氏との外泊願いにオッケーだしたのはヒイキじゃなく、山田先生の性格を見極めてたんだね」
「良いじゃん!!ゴールデンウィークには桜を見に来てって言われたし…山っちは坊主だから真面目なんだつーの」
それに今回は退魔がメインだったんだし。
学校が終ると、そのまま山っちのアパートに向かった。
心配した通り、山っちの表情は曇っている。
「山っち、浮かない顔をしてどうしたの?まだ、文夫さんの事が心残りなの?」
「それはもう大丈夫だよ…文夫さんの部屋からも例の印刷された御札が出てきんだよ」
それも陽本明が持っていたのと同じ物らしい。
つまり文夫さんは御札の力で泥田坊になった可能性がある。
「それやばくね!?早く茜に言わなきゃ」
「万知様は、今それどころじゃないらしい。あの御札が絡らんでた依頼が何件もあって、その対応に追われているんだよ」
茜の先見の能力は万能ではないらしく、ベストな方法は思い付けるが明確な答えはだせない。
「組織で調べたら分かるんじゃね?」
「それが御札に書かれている言葉が、どの神様や仏様を指すものなのか全然分からないんだよ。印刷された御札で素人が力を使えるんだ、何とかしねえと陽本さんな文夫さんみたいなケースが増える」
陽本明と文夫さんに共通しているのは、怒りと哀しみ。
それを抱えている人間は五万といる。
「山っち、そう言えば虫はどうしたの?何時もなら直ぐに突っ掛かってくるのに」
「ああ、ちょっとな。そこにいるんだけど」
山っちの目線の先にあるのは、前に私が持ってきた虫の家。
「アライグマ怖い…アライグマ怖い…ラ○カルが襲ってくるー!!」
虫はバケツの隅でブチブチと呟いている。
「アライグマに羽をかじれたらしくて、ずっとその調子なんだよ」
「マジ?食われたの?大丈夫なの?」
「いや、吐き出されて無事だったらしい」
「アライグマってゴキも食べる雑食だよね…流石は虫、ゴキも超えたか」
「うるさーい、あんな狂暴な獣には僕の豊潤さが分からないんだよ。青く甘い果実、それがグラマスラス美少女フェアリープリムちゃんなんだからな」
どうやら虫は不摂生がたたり、飛ぶスピードが落ちたらしい。
「メタボ虫じゃん。飛べない妖精はただのブダムじゃん」
「ブタムだぁ!?見てろよ!!ロングブレスを極めてスレンダーボディを手に入れてやる。大空を軽やかに飛ぶ僕に見とれるがいい。地べたを這っているお前を見下してやる!!」
単純と言うか挑発に乗りやすいと言うか。
「精々カラスの巣の材料にならない様に気をつけな。山っち、なんか新しい依頼が来てるんじゃね?」
御札がばらまかれてるなら退魔の依頼が増えてるかもしれない。
そして、こんなメールが来ていた。
霊のストーカー被害が続出しているから、調査を依頼するって。
6月4日から6日東京に行きます。泊まるのは渋谷、作者を見つけたらイギリストーストとリンゴジュースをプレゼント…欲しい人はいないか




