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迷える退魔師

山田先輩のイメージが壊れてないか心配。

ペットショップの白い壁が青白い月明かりに照らされて異様な雰囲気を放っていた。


「このぺっとしょっぷさん大きいですね。きっと悪代官みたく悪どい経営者に違いないのです」


大きいと言っても2階建てなんだが、身長が10㎝のプリムにしてみれば城塞の様な威圧感を感じるのかもしれない。


「プリム、悪代官なんて言葉何時の間に覚えたんだ?」


「テレビの時代劇で覚えました。僕の一押しは必殺シリーズです」


最近プリムはテレビにはまっているらしく、俺が帰ってくるとテンション全開で感想を話してくる。

しかしファンタジーな妖精が婿殿のファンになるとは思わなかった。

俺は懐に入れてある札や金剛杵、カバンの中の退魔道具を改める。

月明かりに照らされた犬と猫が笑っている絵が書かれた看板を見上げながら俺とプリムはペットショップの中に入っていく。


「マスター、鍵がかかっていますよ」


「今回は店の経営者が依頼主だから、鍵を預かってるから大丈夫だよ」


真言が効くのは霊が関係している時だけだし所有者の許可がないて不法侵入とかの問題も出てくる。

職員専用のドアを開けて、小綺麗な事務室を抜ける。


「マ、マスター狭い檻で目が光っていますー、怖いです。それに何か可哀想です」


森育ちのプリムは闇に光る目は肉食獣を連想するらしい。


「それでも檻の中に入れてもらえるだけで幸せかもしれないぜ。さて地下に行くぞ」


依頼された猫の怪異が出るのは地下室、どうやらそこで売れ残りの動物を処分していたらしい。


「マスター、この臭い鼻が曲がりそうでふぅ」


地下室のドアを開けた途端に物凄い薬品臭が鼻を突く、プリムも耐えれないらしく鼻を思いっきりつまんでいた。


(かなり濃い怨念が漂ってるな)


コンクリートの階段を降りていく度に怨念と薬品臭の濃さが増していく。


「マフタァー、なんか凄く寒くないでふか」今だに臭いに慣れないらしくプリムは鼻をつまみながら話し掛けてくる。


「たたでさえ地下室で気温が下がるのに、これだけ霊気や怨念が濃いと冷えて当たり前さ」


電気をつけると地下室は以外と広くスチール製の机と事務椅子、そして奥に鉄製のドアがついた部屋が見えた。

あのドアの向こうで、どれだけの動物達が人間のエゴで命を絶たれたんだろう。


「マスター、猫さんの声が聞こえませんか?何匹もいますよー」


プリムの言う通り色々な猫の鳴き声が聞こえ始める。

高い声、低い声、威嚇する声、悲しむ声、怒る声。

そして部屋の隅の暗がりから奇異な姿をした猫が現れた。

その猫の大きさはライオンか虎ぐらいだろう。

大きさよりも奇異なのは、顔の右半分はシャム猫、左半分ペルシャ、体は三毛猫右の前足は黒く短い毛、左の前足は白く長い毛、右の後ろ足は縞模様、左の後ろ足は茶色のブチ。

猫は俺達を威嚇する様に毛を逆立てている。


「マ、マスターあの猫さんはどうされたんですか?なんかごちゃ混ぜですよ」


「色んな猫の怨念が入り混じったんだ。妖怪になる一歩手前…まだ間に合う」


「でもマスター、あの猫さん恨み晴らさでおくべきかって目をしてますよ。お話なんか聞いてくれませんって」


あれだけ人を恨んでいたら説得は無理。


「ああ、だから封じるんだ。プリム俺にしがみついてろ」


猫が体を屈めたと思った途端に一気に飛びかかって来た。

ギリギリの所で横っ飛びで避ける。


「マスター、ほっぺから血が出てますよ」


「ああ爪が掠った。あの爪をまともに喰らったら終わりだな」


何しろ猫の怪異とはいえ大きさは猛獣クラス、爪にもそれなりの破壊力があるらしい。

このまま相手のペースに合わせていたらボロボロになるだけだ。

俺は懐から金剛杵を取り出して真言を唱える。


「金剛夜叉明王の御力にて彼の者の動きを封じたまえ オン・バザラ・ヤキシャ・ウン」


金剛杵から具現化した雷が猫の怪異を包み込む。


「マスター今の内に倒しちゃいましょうよ」


「いや、あれは封じて怒りを鎮めるんだ」


カバンの中から円筒状の筒を取り出した。


「マスター、その銀色の筒はなんですか?」


「アルミ製の封印具だよ。壺だと割れたらお終いだし鉄だと錆びるからな」


筒の蓋を開けて猫に向ける。

瞬間、筒から猛烈な勢いで空気の渦が生まれて拘束されている猫を吸い込んでいく。


「吸い込んじゃいましたね。この後どうするんですか?」


「猫の怪異は組織に属する神社で時間を掛けて怒りを鎮めてもらう。ペットショップには弁護士資格を持った組織の人間から警告を兼ねた結果報告をしてもらうさ。同じ事を繰り返したら次は退魔に応じないし、場合によってはマスコミにリークもしくは告訴をするってな」


「マスター、無事に解決したのに元気ないですね」


「あの猫と筒に吸い込まれる瞬間に目が合ったんだ。あいつ俺を恨んでたよ」


「それって逆恨みじゃないですか?マスターはあの猫さんを救ったんですよ」


「猫にしてみれば同じ人間だよ。退魔師なんて言えば聞こえは良いけどやってる事は他人の尻拭いなんだよな」


こういう時毎回思う。

もっとちゃんとした形で救えたんじゃないかって、でもそんなのは俺の驕りだろって考えとごちゃ混ぜになり出口のない思考の迷路に迷い込む。

そして俺は何年たってもその迷路から抜け出さないでいる。


そんな時、俺の足下にすり寄ってくる物がいた。


「ふにゃー、可愛い子猫ちゃんですよ。マスター飼いましょうよー」


多分、処分待ちの子猫だろう、猫の怪異が暴れた勢いで檻が壊れたのかも知れない。


「うちのアパートはペット禁止だよ」


「うっ、僕の目指せマスターのラブリーペット計画が…。でもどうするんですか?ここに置いていったら、この子も殺されちゃいますよ」


「とりあえず知り合いに写メを添付してメールをしてみるよ。知り合いの知り合いっていけば1人ぐらいは飼ってくれる人がいるだろうから」


「見つかるといいですね。あっ、マスター傷の手当てをしますよ」


「今回は消毒だけにしとくよ。説得できるなんて驕っていた自分への戒めにな」

そんなのはただの自己満足なんだけども、体の痛みがないと心の痛みに対して鈍くなってしまう気がする。

何故か看板の犬と猫が俺を嘲け笑っている気がした。


――――――――――


久しぶりに山っちから来たメールは、捨て猫を拾ったから飼い主を探して欲しいってメールだった。

幸いダチの1人が写メの子猫を気に入っらしく直ぐにでも欲しいって言ってくれた。

次の日、山っちが家に子猫を連れてきたんだけど


「山っち、ホッペの傷どうしたの?この子にしては大きいし、まさか大きな猫(女)だったりして」


山っちのほっぺには、かなり大きい引っかき傷があったんだよね。

心配だけどその原因が女なら、かなりむかつく。


「これは俺の至らなさで着いた傷だよ。でも残念ながらお前が考えてる様な艶っぽい傷じゃねえよ」


何故かわからないけど、私は心の中に生まれたモヤモヤとした不安を消す事が出来ないでいた。

私は山っちの事で大事な何かを忘れている気がしてならない。

金属加工とかに詳しい人がいたら教えて欲しい事があります

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