実習の終わりは恋人と退魔の始まり
久しぶりの更新&あの人達の名前が出ます
山っちの教育実習も今日で終わる。
陽本明は意識不明になって入院したし、山っちは無事に渡り廊下の生徒を成仏させる事が出来た。
「ほら、麗奈あんたも山田先生にメッセージ書いて」
そして教育実習お約束の寄せ書きが私の所にも回ってきた。
「そんなの書く必要ないじゃん」
「あんた、あれだけ山田先生に懐いていた癖にどうしたの?」
私は今、山っちに若干かなりむかついている。
「あー、気にしないで良いよ。麗奈は拗ねてるだけだから」
そんな事を、言いながら美保が苦笑いをしながら近づいて来た。
「美保ー、誰が拗ねてるって?」
私はむかついているだけで、絶対に拗ねてなんかいない。
「あんた、山田さんが里帰りするから拗ねているんでしょ?」
「うっさい!!普通、付き合って直ぐなら彼女を優先するじゃん」
そう 山っちは、実習が終わると可愛い彼女である私を置いて里帰りするのだ。
「兄貴の故郷って青森だよね。それで兄貴は何週間帰るの?」
美保に自分の気持ちを訴えていると、いつの間にか夏希の奴も話に加わって来た。
「何週間じゃないよ、たったの2泊3日。元カレの時は1ヶ月連絡がなくても騒がなかった癖に。そんなに離れたくないなら青森に着いて行けば良いでしょ」
「3日、たった3日でごねてるの?麗奈、バイトしてるからお金はあるじゃん」
きっと、前の私なら平気で着いて行ったと思う。
「いきなりお邪魔して山っちのお父さんやお母さんに嫌われたらどうすんのよ?」
思わず声が大きくなってしまう、だけどそれが失敗だった。
「麗奈、あんた悪い物でも食ったんじゃね。つうか付き合って、1ヶ月も経ってないのに相手のお母さんの事を考えるのはありえなくね」
「うわっ、もう結婚を意識してんの?明治とかじゃないんだからさ」
「人も変わるもんだね。前の男と別れた理由がメールがしつこいだった麗奈がね」
「仕方ない、寄せ書きに山田先生麗奈が寂しくて泣いてますよって書いたげる」
「それじゃ、僕は兄貴結婚式には呼んでね、にしよっ」
騒ぎを聞きつけたクラスの女子が好き勝手に寄せ書きに私と山っちの事を書き出した。
「ちょ、あんた達止めろっ。それ山っちが先生として初めてもらう寄せ書きなんだからねっ」
「「「麗奈、お嫁さんしてるー」」」
それから私が散々冷やかされたのは言うまでもない。
ムカついたから、寄せ書きの色紙にでっかく”私も青森に連れて行け”って書いてやった。
‥お土産は東京バナナで良いのかな?
色紙をもらった山っちは一瞬涙ぐんだけど、直ぐに苦笑いを浮かべた。
女子からの言葉だけを見ると結婚式の寄せ書きみたいになっているから当たり前かも知れない。
「お陰で私の実習も無事に終える事が出来ました。ありがとうございます」
山っちはそう言ってクラスのみんなに頭を下げる。
でも学校のみんなは知らない、傷つきながらも七不思議を解決した優しい退魔師の事を。
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俺は寄せ書きに書かれたメッセージを読んで思わず溜め息を漏らした。
麗奈を実家に連れて行くのは別に構わない。
「山田、随分と面白い寄せ書きをもらったな。それで藤川を青森に連れて行くのか?」
「熊川先生、実習中は色々とお世話になりました。普通の里帰りなら連れて行くんですけどね」
青森の冬は辛いし、今回の里帰りは決して楽しいもんじゃない。
「普通じゃない里帰りなんてあるのか?」
「俺の実家は寺なんです、だからたまに霊の相談をしに来る檀家さんがいるんですよ。大抵は思い込みだったり、軽い物なので父や兄が経を上げれば解決出来ます。でもたまに厄介な相談があるんですよ」
何しろ死者が成仏出来ない原因の殆んどは生者にあるんだから。
「それを山田が解決しに帰るのか。檀家って事は顔見知りだよな…確かに生臭い話になりそうだな」
生臭いだけならまだ良い、親父の話だと今回の退魔はどうやっても虚しさしか残らない。
何より今回の退魔は田舎と都会の格差も原因の1つ。
やっと出来た大切な恋人にはあまり見せたくはない。
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実習を終えて学校を出ると麗奈が待っていくれた。
「山田先生、実習お疲れ様でした…実習が終わったから、やっと堂々とイチャイチャ出来るね」
「俺は彼女なんていた事がないから、どうしたら良いか分からないぞ」
高校の後輩には既に二児の父親になっている奴もいるが。
「今まで通りの私達で良いじゃん。でも浮気したら許せないからねっ!!」
「分かってるよ、ちなみに麗奈の場合はどっからが浮気になるんだ?」
「他の女と遊びに行ったらアウトだかんね!!山っち、なんでそんな事を聞くの?」
「高校の後輩にもう結婚してる奴がいるんだけど、嫁さんに色々と決められているらしいんだよ。許可なく他の女と2人で話さないとか定時連絡は欠かさないとか。破ったら弓で射られるらしい」
ザコの奴はノロケ気味に言っていたが、ちょっと笑えなかった。
「うわっ!!まさかのヤンデレ?」
「結婚式の時の写メがあるから見てみるか?‥こいつの名前は財津功才、似てないけど芸能人の財津姉妹の兄弟なんだぜ」
写メにはザコ、メリーさん、ロキ神様、栄華さん、美才ちゃん、俺が写っている。
流石にエルフやトロル…竜まで写っている写メは見せられない。
「まさかの美少女外国人!!でも、この男の人ってどっかで見た事があるよ」
「俺のアルバムだろ?ザコも俺達と同じコンビニでバイトしてたんだよ」
このまま里帰りの事は誤魔化したいんだけれども。
「それで山っち青森には飛行機で行くの?お土産は東京バナナで良いかな?」
そうは問屋が卸してくれない様だ。
「この時期は飛行機が欠航になりやすいから夜行バスで行く。往復で1万あれば大丈夫だからな…お土産って本当に来るのか?里帰りって言っても退魔になるんだぞ」
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山っちは真面目な顔で退魔になるって言った、それなら私の答えは決まっている。
「当たり前でしょ!!でなきゃ山っち1人でウジウジするじゃん。絶対に着いて行くからねっ」
山っちは苦笑いすると優しく頷いてくれた。
スーパーで買い物をして山っちのアパートへ、きちんと虫の餌を買っておく。
「な~にしに来たんだ、この礼儀知らず女!!実習は終わっただろうが」
虫がクッションに寝転びながら叫ぶ。
「山っちの彼女として来たんだよ、この居候虫。それと私と山っちは青森に里帰りするからね。着いてくんなよ」
「当たり前だっ。マスターの田舎は深夜アニメが少ないんだっ、生を見ながら版に書き込むのが醍醐味っ!!セクシーフェアリープリちゃんの書き込みはネットで人気があるんだぞっ。マスターの留守は僕が守るっ」
この自宅警備警備妖精がっ。
東京土産を教えて下さい&青森で興味がある事も募集




