退魔師の杞憂
実習の準備をしていると、麗奈から電話が掛かってきた。
「山っち、あの池谷って何様のつもりなの?やっただけでも4人、アドやラインを聞かれたのは20人近くいたんだよ」
麗奈は見た目や性格で誤解されやすいが男女の付き合いに対して潔癖な所がある。
だから軽い男を軽蔑するぐらいに嫌っており電話を通してでも怒りが十分過ぎる程に伝わってきた。
「池谷保守人、池谷警備保障の1人息子で俺同じく教育学部の2年生。見た目で分かる様に俺とは違ってイケメンで社交的な性格でモテる男だよ…しかし不味いな」
「不味いってなによ!!やっぱり山っちも男の味方をすんの?」
どうやら麗奈は俺が池谷の立場を心配したと思った様だ。
「熊川先生から他の七不思議の原因になった話を聞いたんだよ。このままじゃ成仏してもらうのが難しくなる」
いや、下手をしたら無関係の生徒や先生を巻き込みかねない。
俺は熊川先生から聞いた話を麗奈に伝える。
学校の裏掲示板が原因で亡くなった生徒の事、実習生に片想いをしながら亡くなった生徒の事、そして座間先生が2つの事件で悲しい思いをした事。
「マジで!?ザマスの弟って学校で死んでの?…だからザマスは男に厳しいんだ」
座間先生が共学に反対したのも男子生徒に厳しいのも、自分と同じ悲しみを誰にも味わせたくないからだろう。
「今の池谷は15年前に亡くなった生徒からしたら許せない存在だろうな」
「私でも許せないっての。ザマスの弟さんは、その子が殺したの?」
「いや、あの時点でそこまでの力はつけていないと思う。実際に座間先生の弟さん以外は亡くなっていないだろ?1度、人を殺めた霊は穢れに染まり無差別に人を襲うんだよ…ただ、哀しみを持っている霊は同じ哀しみを持つ人間と同調しやすいんだ」
そして穢れに染まった霊を成仏させるのは不可能に近い。
「麗奈頼みがある。女の子の霊が出たらお前が話をしてもらえるか?俺よりお前の方が説得できると思う」
俺に少女の恋心なんて分かる訳がない。
「分かった、やれるだけやってみる。山っち、オカ研の陽本はどうすんの?」
陽本明、オカルト研究会に所属する生徒で池谷に特別な感情を持っている少女。
「陽本さんにはプリムを取り憑かせておくよ。陽本さんは池谷の事を良く見てるようだし」
「たまには虫にも仕事させないとね。山っち、明日のオムライス大丈夫?みんな調子にのってお願いしてたけどキツいなら私の分は作らなくても良いよ」
頼まれた数は麗奈達を含めて10人分。
「大丈夫だよ。弁当に持っていくオムライスは飯を炒めて薄焼き玉子を乗せるだけだからな。それに池谷も俺の近くにいる生徒には手をださないだろうし」
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薄暗い部屋で1人の少女が写真を見ながら涙を浮かべていた。
()悔しい、悔しい、悔しい。なんで池谷先生は可愛い娘にだけ優しいの?池谷先生は私が独占したいのに)
嬉しいだろうな。
そして少女は男の心をを独占する方法を調べててあるサイトにたどり着く。
呪いと黒魔術 で人の心を手に入れる方法が書いていた。
陽本明は闇の中怪しく微笑む。
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