退魔士の初恋
久しぶりの更新ですが、重く暗い話になります
山っちが静かに口を開く。
「その頃の俺は修行以外に目を向けていなくてクラスで孤立していたんだよ。寝ても覚めても霊力をあげる事ばかり考えていた。強くなれば全てを救えるって信じてたんだな」
山っちは遠くを見ながらポツリポツリと語り出した。
「いくら霊力が強くても霊を成仏させる事は出来ない。何でか分かるか?」
「そりゃ話を聞いてもらえないからでしょ?俺は強い坊主だから話を聞け!!そしたら成仏させてやるよなんてムカつくだけだもん。第一救えるって言い方が上から目線じゃん」
偉そうに説教をしてくる先生と同じでムカつくだけだと思う。
「耳が痛いな、師匠にも同じ事を言われたよ"山、話を聞かせるんじゃなく聞いてもう努力をしろ。まずお前はクラスの連中と遊ぶ事から始めろ"ってな」
それでREIJIは私を見てどこか嬉しそうだったんだ。
堅物の弟子がこんなに可愛い美少女を連れて来たから安心したんだね。
「それでクラスの人達とは仲良くなれたの?」
「男とは何とか遊べる様にはなったな。だけど女子とは全然話せなかったよ、まともに話せたのは3人ぐらいかな」
思わず問い詰めたくなったが、ここは我慢。
完璧に食いついてから全部吐かせてやる!!
「まさか山っちの初恋とか。…告ったりしたの?」
さあ、山っちどう答える?
「初恋なんだろうな。告白なんかしていないよ。いや、出来なかったんだ」
まあ、山っちも年だから初恋の1つや2つはあると思う…若干、かなりムカついたけど。
「何で告らなかったのさ?まさか彼氏がいたとか?」
「相手は学校の人気者。かたや俺は田舎から出て来たむさ苦しいだけの男だぜ。俺なんかが告白しても迷惑なだけだよ」
見事なまでの消極的なモテナイ君。
「そんなの言ってみなきゃ分からないじゃん。…もし、あれなら今から告りに行く?」
山っちがうんと言わないと思ったから言ったけど、内心はドキドキもんだった。
「無理だよ、もう伝えれないんだよ」
「何でさ!!言わなきゃ分からないじゃん」
「その人は死んだんだよ。そして魂は俺が消した」
山っちは遠くをじっと見つめていた。
――――――――――
あれは中2のバレンタインの少し前の事。
クラスの男女はみんなどこかソワソワしてたな。
俺も、もしかしたらあの人から義理でもチョコをもらえるんじゃないかって期待してたっけ。
でもそれすら叶わなかった。
彼女の家が放火されたんだ。
彼女のお姉さんに振られた男が火を着けたらしい。
彼女も彼女の家族も彼女の家も全部焼けちまったんだ。
しばらくすると、クラスにある噂が流れ始めた。
彼女の幽霊を見たって噂がな。
俺は居ても立ってもいられなくなって彼女の家の焼け跡に出向いた。
居たよ、彼女は。
真っ黒に焼け焦げて恨めしそうに俺を見ていた。
その顔には俺の好きだった明るい笑顔は欠片もなく、ただ理不尽な死に対する怒りと怨みしかなかったよ。
俺は必死に話し掛けたよ、俺を思い出して欲しくて、俺の気持ちを伝えたくて。
でも彼女は悪霊化してくばかり、このままじゃ成仏はおろか無限地獄行きだ。
だから俺は彼女の魂を消滅させた。
組織の人間なら彼女を成仏させれたかも知れない。
でも俺は自分のエゴから彼女の魂を消しちまったんだよ。
苦しんでる彼女を見ていられなくて、彼女の問題を自分が解決したくて。
師匠もサエ姉さんも何も言わなかった。
だから俺はこの世に魂がなくても墓を建てたんだ。
自己満足かもしれないが戒めの為にな。
――――――――――
山っちは言い終えると無言で微笑んだ。
それは悲しく寂しい笑顔。
だから私は彼に言わなきゃいけない。
「だったら笑顔を増やさなきゃね。それと大事な笑顔を守る事。そうしたら彼女も笑ってくれるよ」
そうしたら私も山っちに気持ちを伝えるから。
次は久しぶりに魔王派遣を更新しようと思います




