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退魔士と穢れ

久しぶりですけど短いです

 「ここに来るのも久しぶりだよな」

俺が来たのは修行から少し離れた所にある小高い丘の上。

そこからは町や山々が一望出来る。


「墓参りをしても意味がないんだけどな」

丘には綺麗に磨かれた石が置いてある。

俺は花とお菓子やジュースを供えて、ゆっくりと経を唱え始めた。


―――――――――


 爺たんは生きてる時と何も変わっていなくて、とても幽霊には思えないんだよね。


「ねえ爺たん、何で今まで会いに来てくれなかったの?婆ちゃんも孝子姉さんも凄い泣いたんだよ」

ちなみに一番泣いたのは私なんだけど。


「何度も行ってたよ。みんなに見えなかっただけなんださ。それにここには結界があるから取り込まれる心配がないし」


「取り込まれるって何に?」

多分、それが山っちが爺たんに伝えて欲しいって事だと思う。


「穢れだよ、人の魂は絵の具みたいなものなんだ。生きてるうちは肉体に入ってるから平気だけど魂は簡単に穢れに侵されるのさ。霊として力を強めれば強める程、穢れも近づいてくるんだよ」


「穢れに侵されたどうなっちゃうの?」


「悪霊になるんだよ。だから山田さん達退魔士は日頃から命懸けで対応して下さってるんだよ」

命懸け?山っちはそんな事は一回も言っていない。


「山っちも命懸けでお仕事をしてるの?」


「山田さんは金剛夜叉明王様と結縁なされてるそうだから怪我とかしてるんじゃないかな。だから山田さんをあまり困らせるんじゃないよ」


「うん、分かったよ爺たん」

山っちを色々と問い詰める事がここに決定。


――――――――――


 約束しておいた時間に麗奈と合流したんだけど、何故か不適な笑みを浮かべている。


「それじゃ私は一度浄土に戻りますので。麗奈、次に会える時はちゃんと合図をおくるから」


「うん、爺たんバイバイ」

普段からは想像も出来ない無邪気な表情でお爺さんが見えなくなるまで手を振る麗奈。

しかし

「山っちー、退魔士が命懸けなお仕事って本当?」

振り向いた麗奈の笑顔は無邪気さの欠片もなく、引きつった笑い顔だった。


「命懸けって言うか、呪いや殺意を向けてくる霊も少なくないからな。でも安心しろ麗奈はそんな危ない依頼には同行させないから」


「安心出来る訳ないじゃない、この超にぶっち!!命懸けでお仕事なんて馬鹿じゃないの?」


「馬鹿って、それが退魔士なんだよ」「うわっ、出ました。これが俺達の常識だ理論。それで女医さんにお世話になってるって言ってたんだ?どんなお世話になってんだか」

確か、こんな時は決して逆らうべからずってザコが言ってたよな。


「柘植さんには傷の手当てをしてもらってるんだよ。霊障は普通の治療じゃ治りにくいからさ」

もちろん、普通の外科治療に解呪を加えているだけで心霊治療なんて怪しいものではない。


「やっぱり怪我してんじゃん。これからは逐一私に報告する事、良いわね!!」


「分かったよ、分かりました」

麗奈のただならぬ迫力に俺はただ頷くしかなかった。


「それで穢れに侵された霊はどうなるの?」


「俺達が祓うのさ。穢れに侵された霊には人や霊に災いをもたらすからな」


「祓われた霊はどうなっちゃうの?元に戻れるんだよね?」


「穢れの侵食具合と重ねた罪によるよ。ほら、前に女の子霊を祓ったのを見たろ?あれぐらいなら成仏が可能なんだよ」

そう、あれぐらいなら手遅れにはならないんだよな。

あの時と違って。

連載を5作に増やしてしまいました

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