麗奈と爺たん
久しぶりにくらったサエ姉さんの雷は強烈だった。
「山っち、大丈夫?」
「大丈夫だよ。サエ姉さんの雷は当たれば痛いけど怪我はしない様にしてあるから」
ただし、かなり痛いんだよな。
「そか、それで私はどんな修行をするの?」
「霊の姿は見たから次は霊とコミュニケーションをとってもらう。それじゃ外に行くぞ、修行場のもう1つの顔を見せてやる」
ちなみにプリムはサエ姉さんに拘束されて修行を強制再開させられていた。
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修行場のもう1つの顔ってなんだろう。
私が山っちに続いて外にでると
「うそ?先まで誰もいなかったじゃん」
つい先までは道路には人っ子1人いなかったのに、今は沢山の人で溢れかえっていた。
小さい子もいれば私と同い年ぐらいの人もいるし、お爺さんお婆さんもいる。
「ここで修行するのは組織の人間だけじゃないんだ。組織で保護した霊も成仏する為にここで修行をしてるし、冥府に行った霊もここで修行をしてるんだよ」
「幽霊の修行って何をするの?」
幽霊も滝に打たれたり座禅を組んだりするのかな?
「まだ成仏していない霊は自分の人生を見つめ直してもらって心残りは何なのかを見つけてもらい、冥府に行った霊は生きている人やここにいる霊を導いていく。坊主に出来るの三途の川まで道を示すだけでそこに行く道は自分で見つけてもらわなきゃいけない。そもそも人は現世に修行の為に来ていて…」
長くなる、このパターンは長くなるパターンだ。
「山っち、ストッープ。それで誰とコミュニケーションをとればいいの?まさか逆ナンしろって言うんじゃないよね」
「お前にそんな事を言う訳ないだろうが。麗奈これを持て」
山っちが私に渡してきたのは1本のお線香だった。
「山っち、これってお線香だよね?これで何するの?」
「線香の煙は冥府までの道を繋げる煙なんだよ。でもこの線香に火を着けるとお前と縁がある人に煙が届くのさ」
山っちがお線香に火を着けると煙が横に伸びていく。
「この煙の先に私の知り合いがいるの?」
「さあな、お前のご先祖様かも知れないし前世で縁があった人の時もある。全ては御仏のお導きだよ」
煙を辿っていくと白髪頭の大きな大きなな背中に届いていた。
あれは……間違いない。
「爺たん、爺たん、爺たん。私だよ、麗奈だよ」
声を掛けて振り向いてくれたの間違いない、私が小学校の時に死んだ大好きなお爺ちゃん。
「麗奈か、久しぶりだね。でも爺たんはいつも麗奈を見守っていたんだよ」
爺たんはそう言うと私をギュッと抱きしめてくれた。
お父さんやお母さんに叱られた時も男の子にいじめられた時も学校の先生に悪戯の犯人扱いされたも片思いの男の子に振られた時も爺たんは私を優しく抱きしめてくれた。
「爺たん、爺たん、あのね麗奈ね、爺たんに言われた通りダンスを一生懸命頑張ったんだよ。ピーマンも食べれる様になったし家のお手伝いもちゃんとしてるんだよ。お婆ちゃんに叱れてばっかりだけど頑張ってるよ」
涙が次から次へと溢れ出てくる。
「うんうん、爺たんは麗奈を見ていたがら分かるよ。菊…お婆ちゃんは麗奈が可愛いから叱るんだよ、麗奈に後悔して欲しくないから叱るんだよ」
爺たんの大きな手が私の頭を撫でてくれる。
「そうだ、爺たんに紹介したい人がいるんだ。同じバイト先の先輩の山っちって人…。って山っち、何硬くなってんの?」
見ると山っちはガチガチに緊張していた。
「お坊様、何時も麗奈がお世話になっています。それとこの間はお経をありがとうございました。麗奈、この方は若いのに徳を沢山積んでおられる偉いお坊様なんだぞ」
正直、山っちが偉いってのはピンとこない。
だって
「や、山田大明と言う愚僧です。れ、麗奈さんには何時もお世話になっておりまする」
爺たんと目を合わせただけでガチガチに緊張しているんだもん。
――――――――――
予想外だった、てっきり麗奈の何代か前のご先祖様に辿り着くと思っていたんだが。
もしかして、万知様は麗奈のお爺さんが修行場にいる事を知っていたのかも知れない。
でも良く考えたら緊張する必要はない訳で
「あらあら藤川さん、お孫さんさんに会えたんですねー。良かったです」
「サエ姉さん、プリムの修行に行ったんじゃないんですか?」
「使い魔がマスターの大事な挨拶の応援しない訳にはいかないでしょ。あっ第2使い魔は私のサンダープリズンに閉じ込めているから」
サンダープリズン文字通り雷の牢獄、サエ姉さんが使う拘束精霊術の1つで対象者を雷の牢獄に閉じこめてしまうえげつない技。
「しかし麗奈の先輩がサエッタ様のマスターと聞いた時は驚きましたよ。もっとも麗奈がここに来るって聞いた時の方が驚きましたけどね」
間違いない万知様だ。
万知様は麗奈のお爺さんの事を知っていたんだ。
「それじゃあ積もる話もあるでしょうから修行も兼ねてゆっくりとお話をして下さい。俺は知り合いの所に挨拶に行ってきますので。藤川さんお孫さんの麗奈さんに霊の事を教えてもらえるでしょうか?」
ここに3年近く住んでいたので挨拶にいかなきゃ行けない場所は結構ある。
「うわっ山っち、麗奈さんってなに?キモイんだけど。あっ、爺たんに緊張してるんだ」
麗奈のお爺さんを意識していないと言えば嘘になるが
「元々藤川さんには霊とコミュニケーションをとってもらう予定だったのでこれも御仏のお導きでしょう。」
そういやザコが言ってたな、彼女の身内への挨拶は尋常じゃなく緊張するって。
予定では山田さんはもう少し早く終わる予定だったんですけど 山田さんはもう少し続きます




